7月初旬、バンコクの友人、Py(Bangkok Music City)から「ASEAN Music Showcase Festival 2022」への招待状が届いた。
「ASEAN Music Showcase Festival」は、コロナ禍の、2020年9月、オンラインイベントとして始まった。ASEANの国々の音楽関係者が繋がって、一緒にショーケース・イベントを行うというアイデアはとても素晴らしいものに思えた。
当初からオフラインで開催されればと思っていたのだが、予想を上回るスピードで実現することになる。
初のオフライン開催となる今回は、9月10日-11日、会場はシンガポールだ。
2010年代後半、ショーケース・フェスティバルは、韓国・ソウルの”Zandari Festa”、台湾・台南の”LUCfest”、中国・北京の”Sound of the Xity”、タイ・バンコクの”Bangkok Music City”、沖縄での”Trans Asia Music Meeting”など、アジアの各都市に続々と登場した。
サブスクの時代、デジタル・マーケティングが主流になる中で、リアルな現場でミュージシャンと音楽関係者を結ぶ新たなプラットフォームとして定着してきた。
2020年2月下旬、沖縄での”Trans Asia Music Meeting 2020″は、まさにコロナウィルスに追い立てられるような形での開催となった。直前に何人かのdelegatesの参加はキャンセルされた。検疫を理由に、経由ができなくなり、航空便のルート変更を余儀なくされた人もいた。帰国便が続々とキャンセルになり、次々と国境が閉じられていく様子を目の当たりにした。
目の前に迫るコロナはまさにただごとではなくなっていた。この時、Pyと、”Sukiyaki Meets The World”のディレクター、ニコラと相談して、急遽、イベントとしての共同声明を発表することにしたのだった。
ステイトメントの中では、音楽をはじめとするソフトパワーの重要性と、直接性の大切さを訴えて、アジア発の音楽ネットワークを軸に、音楽文化の発展に寄与するということを示した。
コロナが猛威を振るい始めると、日本では真っ先に音楽をはじめとするエンタメが不要不急だと言われ、直接性も否定された。(よその国のことはわからないが…)声明は、結果的に先んじてそれに抗うような内容になっていた。
アジアでリアル開催されるインターナショナル・ショーケース・フェスティバルは、ほぼそれ以来のことだ。
コロナ禍でリモートによるコミュニケーションの機会は大きく増えた。そうした新たな選択肢を得られたことはとても意義のあることだ。同時にそのことによって、改めて直接性の大切さにも気づかされることになった。
まだコロナが終息したわけではなく、世界中で悲劇は繰り返されているが、今回の「ASEAN Music Showcase Festival 2022」は、この約2年半のお互いの不在を埋めるとともに、アジアのインディペンデントな音楽シーンが再び動き出すための大きなきっかけとなるに違いない。
コロナ禍において、さまざまな面でこの国の遅れや凋落ぶりもあぶり出された。この場に参加することで、自分たちの現在の立ち位置がどこにあるのかということを、改めて確かめる機会にできればと思う。それより、何よりも友人たちとの久しぶりの再会と新たな音楽との出会いを祝いたい。
野田隆司 / Ryuji Noda
ASEAN Music Showcase Festival 2022
https://aseanmusicshowcasefestival.com/