1月19〜21日の3日間に渡って開催された「Music Lane Festival Okinawa2024」。ジャンルを越境して国内外の50組近くのアーティストが集結し、沖縄市内の複数のライブハウスで熱気溢れるパフォーマンスを展開した。
各会場のフロアには出演者のファンのほか、各国の音楽フェスの関係者や出演アーティストたちの姿もあり、音楽を浴びながら交流や出会いも生まれ、醸成されていくような空気感が漂っていた。20・21両日に行われたライブの様子を写真とともに紹介する。
取材・文:真栄城潤一 / Junichi Maeshiro
■Day1(1/20)
溢れんばかりの情動をブチまけて打面に叩き込むスタイルのドラマーが特徴的な「Texas3000」は、弦楽器隊によるゴリゴリの轟音の中で穿たれた一閃のような歌唱がフロアを貫いた。
「ermhoi」は、ポリフォニックなアプローチでどこか冷涼な土地を思わせるような旋律を紡ぎ出し、会場の空気を優しく支配していた。ハープを用いた弾き語りとバイオリンの組み合わせが非常に鮮烈に映った。
エモーショナルかつノイジーな音の洪水の中で、メロディアスなボーカルを聴かせた「Strip Joint」。絶妙に音の隙間を埋めていくようなトランペットと、華のあるリードギターがバンド全体の佇まいに彩りをもたらしていた。
J-ギターロックの文脈を濃厚に感じさせつつ、フレッシュなエネルギーを撒き散らすようなパフォーマンスを見せたのは「anorak!」。冒頭からキメっキメのギターアンサンブルを繰り出し、キャッチーかつパワフルなメロディを降らせていた。
妖精のような儚さを湛えた安次嶺希和子は、いたいけでありながら憂いもまとう歌声を、会場に波紋のように響き渡らせた。ミュージカルや舞台のワンシーンを目にしているような、フィクショナルな世界観が立ち現れた。
香港のインストバンド「Uchu Yurei」は、変拍子やユニゾン、そしてギターの速弾きなどを随所に取り入れたテクニカルでプログレッシブな楽曲を次々と繰り出した。煌びやかな笑顔を見せながら終始楽しそうに演奏していたピアニストも印象的だった。
サイケな音色のギターと、ねちっこいスローなビートでグルーヴィな空間を作り出した韓国の「Goonam」。楽曲とバンドがそこはかとなくまとう“いなたさ”が、プラスの方向に作用して独特のカッコ良さを醸し出していた。
ビートに身を任せてステージを駆け回るベーシストが印象的だったタイの「FORD TRIO」は、アーバンな雰囲気もありつつ、ファンクやソウルも感じさせ、それでいてエキゾチック。かなり独特の中毒性があり、それにやられた観客も少なくなかっただろう。
ミニマルなトラックに縦横無尽なビートを文字通り叩き込み刻み込むように、リニアに展開させた「akira.drums」。スクリーンに映し出された映像とオケのループはある意味では無機的で、そこにリズムのぬくもりを与える現場を目撃したような心地を覚えるようなパフォーマンスを披露した。
「Darthreider & The Bassons」は、ラッパー+リズム隊というとてつもなくストイックな座組でのパフォーマンス。だがそれゆえに、剥き出しで極限までに研ぎ澄まされた言葉とリズムの応酬にくらくらとするほどのエネルギーをびりびりと肌で感じる。ライブ会場など優にブチ抜いて、「社会」そのものまで射程を伸ばすようなDarthreiderのリリックは圧巻の一言だった。
■Day2(1/21)
沖縄民謡とダブを融合して独自性のあるダンサブルな空間を出現させた「稲嶺幸乃+ハリクヤマク」。三線の音や民謡のメロディラインが、特徴的なベースの刻みや強めのエフェクトが効いた音色と溶け合う。稲嶺が泡盛を手に取って、観客とともに「カリー!(嘉例、乾杯の意味)」と繰り返し、会場がハッピーな雰囲気に包まれた。
「snowy」は存在感のあるビートと低音ベースの上に、ふわりとした抒情的な旋律の歌唱を優しくのせる。機材トラブルに苛まれながらも、オルタナティブなサウンドで構築した自身の世界観を作り上げていた。
どこまでも心地よいグルーヴとアンサンブルで会場を浮遊させるように包み込んだ「TAM TAM」のパフォーマンスは、この日の白眉と言ってもよかった。様々なジャンルを飲み込んで、幻想的かつエキゾチックなテイストでまとめ上げられた強度の高い楽曲たちのインパクトはもちろん、引き摺り込まれるような陶酔感のあるライブパフォーマンスが途方もなく素晴らしかった。
「Kinami」は、ユニバーサルなトレンドをおさえたポップスで圧倒的かつ確かな歌唱力を見せつけた。観客に向けて自身の思いを語りかけながら、メロウな曲から軽やかな曲まで、ステージを所狭しと動きまわって歌い上げた。
沖縄初上陸となる「Ovall」のパフォーマンスは、強靭でしなやかに歌うmabanuaのドラムの極太な土台の上で、色とりどりの音が自由に優雅にダンスするような光景だった。メンバーそれぞれの高い独創性が、バンドアンサンブルという着地点でしっかりと良い具合にまとめられていて、ひたすらに心地よいサウンドスケープが広がっていた。
「Famous Japanese」は、エキゾチックでキャッチーなメロディを力強く繰り出し、ダンサブルな音楽空間を現出させてフロアを踊らせた。ギター、ベース、ピアノなどの一般的なバンド編成にバイオリンやサックス、さらに中東やインドの楽器を取り入れており、濃いめのオリジナリティが炸裂。音に身を任せてただただ楽しめる、ライブならではの至福のひと時だった。
2日間に渡るライブセットの大トリを務めたのは、地元・沖縄の若手注目バンド「HOME」。フロアにはファンのほか、それまでステージに立っていたアーティストたちの姿も多数あり、熱気が漂う。
ステージが始まると、ドリーミーな音色で少し懐かしさも感じさせるような楽曲がスピーカーを振るわせた。激情に駆られるように掻き鳴らされるメロディアスなギター、そして抑えきれない衝動を撒き散らすように歌うボーカルが真っ赤な照明に映える。
HOMEのライブには、瑞々しいパワフルさが乗っけられた激しさも多分にあるが、それでいて紛れもなく踊れるポップでもある。説得力のある堂々たるパフォーマンスは、これからのHOMEの更なる飛躍に期待せざるを得ないものだったし、そのエネルギーを浴び、受け止めたオーディエンスの立つ場所はダンスフロアと化していた。