沖縄・コザの街で開催された Music Lane Festival Okinawa。
そこには、音楽だけでは届かない場所へ、手を伸ばそうとする人たちの姿がありました。今回は後編をお届けします。(前編は、音楽だけでは届かない場所へ、手を伸ばす姿を見届ける-Music Lane Festival Okinawa2026フェスティバルレポート(前編)からご覧ください)
今年のMusic Lane Festival Okinawa(以下MLFO)は、これまでにない傾向として、コラボステージのバラエティに富んでいたことが注目すべきポイントでした。
今回のためだけの特別ステージは、Toshiki Soejima & Nahokimamaや、タイのSSW SINと日本のSSW AOI YAMAZAKI、安次嶺希和子 × KOTARO SAITOといった事前に出演告知のあった組み合わせだけにとどまりません。
MLFO出演発表後、アーティスト同士が直接交渉し、この日に向けて制作した楽曲を携えて臨んだSKYTOPIA × ロマンチック中毒や、kingo × 安次嶺希和子など、ここでしか見られない希少性の高いステージも数多く見られました。
この日のために準備されたコラボステージ
私はToshiki Soejima & Nahokimamaのステージ終盤に駆けつけました。今回のショーケースの中でも、音楽のプロである海外デリゲーツと、日本のファンの両方の顔が見えるフロアが印象的でした。座る隙間もないほどぎゅうぎゅうの空間の中で、フェス特有の慌ただしさからは想像できないほど、凛とした空気が流れていたからです。
床に座り、目を閉じて、私はギター2本の透き通るように流麗なメロディの海に浸っていきました。
1曲2分が定石になりつつあるストリーミング時代のトレンドとは真逆の世界。組曲のように10分近く続く演奏の中で鳴る印象的なフレーズに、思わず感嘆のため息があちこちでこぼれます。とても贅沢な時間でした。
ミュージックタウン音楽広場の音止めの時刻が迫るSKYTOPIAのステージに登場したのは、地元沖縄市出身で、現在は東京を拠点に活動するSSW、ロマンチック中毒。
彼女の低めでハスキーな声質は、裏拍の心地よいリズムに乗り、マイナーコードの響きを含みながらメロディを進めていきます。
SKYTOPIAの奏でる宇宙的な電子音の上で、余白を感じさせながらもリズミカルさを失わず、美しい映像とともに楽曲が紡がれていきます。ロマンチック中毒のNENEは、ステージのあいだ、目が合う観客に笑顔を向けながら、会場の隅々まで楽しませようとしていました。緊迫したスケジュールの中で見えたその姿に、私はぐっと胸を打たれていました。
ステージの外でも続くアーティストの挑戦
いよいよ最終日。
話の尽きないデリゲーツとアーティストたちのスピードミーティングを横目に、同時開催されているビジネスパスおよび出演者向けカンファレンス「Trans Asia Music Meeting」が行われているラグーンコザへ向かいます。
ドアを開けると、そこには出演アーティストのマネージャーや事務所スタッフ、さらには今回ビジネスパスを購入して参加しているであろう、TikTokで話題のアーティストの姿もありました。
皆、熱心にメモを取り、質疑応答ではかなり具体的な悩みを交えながら相談している様子です。
Music Lane Festival OkinawaおよびTrans Asia Music Meetingのすごいところは、有名事務所に所属していなくても、名のあるレコード会社からCDを出していなくても、マネージャーをつけずに活動するミュージシャンにも門戸が開かれていることだと思います。
今年は、昨年度から始まった日本の大規模音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」の理事を務める稲葉豊氏のカンファレンスなど、アジアだけでなく日本の第一線で音楽業界を見据えるプロフェッショナルの話を聞く機会も設けられていました。普段活動していては出会う機会の少ない知見に触れられる場です。地方を拠点に悩むミュージシャンにこそ、またとない機会ではないでしょうか。
中でも印象に残ったのは、「Crossing Streaming Borders 〜ストリーミング時代の“国境”を越える〜」というセッションです。
「言語が英語でなくても、あるいはその国の母語でなくても、楽曲のトラックが魅力的であればフェスのブッキングマネージャーやエージェントの耳に届き、海外フェス出演のチャンスはある」という言葉には、私自身も心を動かされました。
日本語の歌詞に海外展開の壁を感じて、二の足を踏んでいるミュージシャンにこそ、その場にいてほしい。そう思えるカンファレンスでした。
質問したい気持ちをぐっと抑え、私は再びショーケースライブ会場へ戻り、最終日も引き続き次々とライブを観ていきます。
母が沖縄出身という沖縄2世のaimiのライブは、彼女ならではのR&Bのグルーヴと、歌詞に合わせた手先のアクションの繊細さが印象的でした。親しみやすさも相まって、こちらまで肩でリズムを取ってしまうような心地よい時間です。終盤には沖縄のお祝いごとに欠かせない手踊りのカチャーシーを取り入れた、彼女流の新しいR&Bも披露され、会場はとても温かく和やかな空気に包まれていました。
そこから対角の位置にあるTuneCore Japan Stageへ移動し、インストゥルメンタル バンド六花Liccaのステージへ。
結成1年足らずで沖縄のフェスに挑んだ彼ら。オープニングパーティーでは思うようにデリゲーツと話せていない様子を見て、私は勝手に心配していました。
けれど蓋を開けてみると、ステージ下には想像以上の海外デリゲーツが集まっていました。彼らの掲げるマスロックとJ-popの融合は、海外の観客にも明確に伝わっていたように感じます。
メロディアスでありながら複雑な音階をなぞるギター。ギターのように自由に動き回るベースとドラム。勢いのある演奏に、これからの活躍を期待せずにはいられないステージでした。
さて、どうしよう。フェス最終日まで商店街のフェスエリアを歩き回った足は、そろそろ限界に近づいています。一番遠い会場であるSLUM BARへ向かう足が少しすくんでしまいます。カフェに入って少し休もうかと迷いながらも、その気持ちを振り切って向かった先は、ロシア連邦・トゥバ共和国出身の2人組ODUCHUのステージでした。
しかし会場へ到着し、地下へ続く扉を開けると、出勤ラッシュ時の満員電車のような人、人、人。ドアが閉まりきらないほどの人の山です。お客さんが入りきらず、フロアの廊下一直線に繋がった控室までぎゅうぎゅうに人が詰め込まれています。真正面からステージを見るどころか、2人の表情さえ見えない真後ろから観るのがやっとでした。
ロシア連邦アルタイ山脈エリアの伝統的歌唱法であるホーミー(喉歌)。1人の喉から2つの音を同時に鳴らし倍音を発生させる独特の歌声です。旋律はギターロックでリズミカルに展開し、つま先で楽しくリズムを取ったかと思えば、フォーク調で草原の風のような爽やかさを感じさせます。さらにエレクトロニカのアプローチで映画的な美しさも加わる。
ホーミー=ワールドミュージック、ヒーリングミュージックという固定観念を、見事に覆される、衝撃と感動の時間でした。
いよいよ終盤。ミュージックタウン音楽広場ではHOMEのボーカルseigetsuが、いたずら心たっぷりに1階から2階へ駆け上がり、観客を見下ろしながら歌う大盛り上がりのステージ。その横を抜け、私はRemy’sへ向かいます。
フィンガードラマーKO-neyのステージは、アニソンや往年のヒットポップス、ヒップホップのトラックの上でドラムパッドを縦横無尽に叩き、色とりどりのリズムでフロアを揺らします。観客を煽りながら、まるでクラブフロアにいるかのような熱気。最終日にふさわしいステージでした。
フェスの終わり、それぞれの次のステージへ
すべてのステージが終わった後には、クロージングパーティーが開催されました。ここでは、日本と海外のミュージシャンによる、出来立てほやほやのコーライティング作品のお披露目です。今年制作された楽曲は、昨年の5曲を上回る7曲。制作に関わったミュージシャンたちが入れ替わり立ち替わりステージに立ち、制作過程を慈しむように語りながら、ラジオのディスクジョッキーのように楽曲を紹介していきます。
「ありがとう!」と「おつかれさま!」が会場中にあふれ、デリゲーツもミュージシャンも別れを惜しみながら、また会う日を願ってそれぞれの夢に向かって歩き出していきました。
毎年、初日はどこか不安そうな表情をしていたミュージシャンが、MLFOを通して夢を語れる仲間を見つけ、さらなる活躍を支えるデリゲーツと出会っていく。ミュージシャンにとっては、ここからが再びのチャレンジの始まりです。
MLFOは出演して終わりではありません。その夢を実現するためには、ミュージシャンはデリゲーツへ追加でアプローチを続けたり、実際に海外へ会いに行くことも必要になります。
思いついたアイデアを、できるだけ行動に移すこと。その積み重ねが次のステップにつながっていくことでしょう。
参加者のみなさま、本当におつかれさまでした。そして、これから続くチャレンジを、心から応援しています。
<著者>
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛し、国内外の音楽フェスティバルを飛び回る、コラム・エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 応援団。
Instagramにて、国内外の音楽フェスティバルやアジアの注目すべき楽曲を紹介するAsia Music + Festival=FestivalBeat.Asiaを運営中。















