【東京-沖縄 / Tokyo-Okinawa】 平安隆&ボブ・ブロッズマン「毛遊びマジック〜ライヴ・イン・トウキョウ 1999〜」

22年前の奇跡のライブ。
多くの人が沖縄音楽の魅力に気づくきっかけになる一枚。

平安隆&ボブ・ブロッズマンのアルバム「毛遊びマジック〜ライヴ・イン・トウキョウ 1999〜」(リスペクトレコード)がリリースされた。
(リリースの背景などは、レーベルの公式サイトで紹介されている)
平安 隆 / Takashi Hirayasu は、コザ育ちで、普久原恒勇氏のもと、フォーシスターズ、でいご娘、などマルフクレコードのアーティストの録音や、喜納昌吉&チャンプルーズのギタリスト、三線奏者として、70年代から沖縄の音楽シーンで活躍を続けてきた。
一方のボブ・ブロッズマン / Bob Brozmanは、ニューヨーク生まれのブルースマン。ブルース、ジプシー・スウィング、カリプソ、ラグ・タイム、ハワイアンなど、ジャンルを越えて、世界各地のミュージシャンと活動を共にして多くのアルバムを発表してきた。
二人は、1998年に、八重山諸島竹富島の古民家で、アルバム「童唄」のレコーディングを行った。このライブは、アルバムのリリースツアーの一環として、開催された東京でのライブ・レコーディングだ。


Taketomi island, 1998

平安隆がソロで活動を本格的に始める前、何のきっかけだったか忘れてしまったが、国際通りの空きスペースで、一緒に何度かイベントをやった記憶がある。誰かの店舗のガレージみたいな場所が会場で、私は平安が喜納昌吉&チャンプルーズのギタリストだということさえ知らなかった。小さな集まりで、音響機材も十分ではなかったはずなのだが、平安はとても丁寧に音を作っていて、音楽と真摯に向き合う姿が今も焼きついている。

ボブ・ブロッズマンは、多様な世界の音楽を旅した人だと聞く。その耳に沖縄音楽が魅力的に響いたことは、アルバム「童唄」や、今回の作品を聴けば明らかだ。八重山の唄者、大島保克と共演してアルバムも発表したジャズピアニスト、ジェフリー・キーザーも、沖縄の音楽に魅了された一人だ。あるとき、Bjork / ビョークのコンサートに行くと、開演前のBGMが普久原恒勇の沖縄音楽だった。「ヘイ、二才達!」がBjorkの登場を待つ日本武道館の曲入れに流れるというのが不思議に思えた。音楽のことをよく知る海外のアーティストほど、沖縄音楽の魅力に深く魅了されるのは偶然ではないと思う。

2014年からヨーロッパの都市を巡回して開催されるワールドミュージックの見本市”WOMEX”に5年ほど通った。「沖縄から来た」と話すと、多くの音楽関係者から、”Takashi Hirayasuを知っている”と自慢気に言われた。2001年に、オランダ・ロッテルダムの、”WOMEX”ショーケースに出演した二人の演奏を耳にした人が多かったと思う。彼らは私たちが届けにきた沖縄音楽に、かつて二人が紡いだ音楽と同じような何かを求めているようにもみえた。平安隆&ボブ・ブロッズマンの音楽は、未だにヨーロッパのワールドミュージック・シーンにおける沖縄音楽の代名詞であり、それだけ大きな存在なのだと実感した。

アルバム「童唄」のリリースツアーの那覇公演は、久茂地にあったクラブD-setで開催して、私も主催者として関わった。おそらく、打ち上げまで一緒に行ったはずなのだが、二人といったい何を話したのだろう。
今回の、平安隆&ボブ・ブロッズマンによる「毛遊びマジック〜ライヴ・イン・トウキョウ 1999〜」のリリースをきっかけに、一人でも多くの人が二人の音楽と、沖縄音楽の素晴らしさに気づくきっかけになればと思う。

ボブ・ブロッズマンは2013年に逝去。平安隆は、ソロ活動を継続して、最新アルバムは台湾のレーベルからリリースされている。

(Ryuji Noda)

平安隆&ボブ・ブロッズマン
「毛遊びマジック〜ライヴ・イン・トウキョウ 1999〜」
2枚組/全60ページブックレット封入/3,520円
1999年9月15日:東京・青山のRestaurant Bar CAYにて収録
(リスペクトレコード)

<収録曲>
CD1

01. 群星ぬ夜 (平安隆ソロ)
02.べーべーぬ草かいが(平安隆&ボブ・ブロッズマン)
03.小禄豊見城 (三村節)(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
04.ちんぬくじゅうしい(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
05. 月ぬ美しゃ(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
06.Meleana Ē : メレアナ・エ(ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
07.ウーマクカマデー(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
08. Down the Road:ダウン・ザ・ロード(ボブ・ブロッズマン)
09.ちょんちょんキジムナー(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
10.てぃんさぐぬ花(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
11.赤田首里殿内(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)

CD2

01.大村御殿(耳切坊主)(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
02. 花ぬ風車(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
03.ジンジン(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
04.満月の夕(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜/お囃子:古謝美佐子)
05.踊いシーサー(平安隆&ボブ・ブロッズマン、山内雄喜)
06.竹富サンセット(平安隆&ボブ・ブロッズマン)

アルバムの情報はこちらから
http://www.respect-record.co.jp/discs/res333.html

2001年、WOMEXでの平安隆&ボブ・ブロッズマンの演奏。ナビゲーターは、若きピーター・バラカン。最近のWOMEXは、リズムの強いダンスチューンの人気が高いが、このご時世、こうしたアンビエントな雰囲気のある作品も支持を集めそう。

 

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