めくるめくタイインディーズの世界
第4回「コロナ禍の今のうちに海外進出に向けてやっておきたいこと」

当コラムは「めくるめくタイインディーズの世界」という題目ですが、今回はいつもとは趣向を変え、タイインディーズについてではなく、「海外進出」に焦点を当て、海外進出に向けた第一歩を踏み出すためになにをすればいいかをしたためたコラムにしたいと思います。

当ウェブサイト「Music Lane」を運営している「Music from Okinawa」は、「Music Lane Festival Okinawa」「Sakurazaka ASYLUM」といったショーケースフェスティバルや「Trans Asia Music Meeting」といった国際音楽カンファレンスを沖縄発信でおこなっています。日本国内ではトップクラスのアジア・世界各地との音楽ネットワークを構築していて、沖縄や日本のバンド・アーティストを世界に羽ばたかせることも一つの目標になっているんじゃないかと思っています。そんな「Music Lane」でコラム連載しているので、タイのインディーズを紹介するのみでなく、海外進出のためのちょっとした参考情報みたいなものもお伝えできればと思っています。

 

海外進出への第一歩目としてのプロフィール資料の作成

海外進出への第一歩を踏み出すためにまず用意したいもの。それは自己紹介のためのプロフィール資料の作成です。

※良い曲を作るとか、良いライブをするとか、当たり前にやるべきことは大の大の大前提なのでここでは触れません。

 

海外のフェスに出演したい、海外でライブしたい、海外にも自分たちの音楽を広めたい。そうですよね、わかります。ただ、何をするにもまずは挨拶から。挨拶代わりに、まずは自分たちが何者なのか、どういう楽曲を演奏し、どんなライブをし、どんな成果を収めてきたのか、っていうのを知ってもらうためのプロフィールを作りましょう。ここで作ったプロフィールは「海外での露出の可能性を高めるためのツール」となります。

 

よく、日本のバンドやレーベルから「新譜がリリースされたんで、タイの音楽関係者や音楽メディアに送ってもらますか?」と音源ファイル、もしくは、YouTubeやストリーミングサービスのリンクが送られてきます。性格に難ありのボクとも仲良くしてくれる方々からの頼みなので、基本的にはお手伝いするのですが、曲だけ右から左に流しても良い結果は得られません。送られる側としては、よっぽど海外でも名が通っているバンド・アーティストでない限り、名前も知らないバンド・アーティストの曲だけがポンっと送られてきてるだけの状態です。また、国内のバンド・アーティストからも膨大な数の曲が送られてきているでしょうから、曲を聴いてくれるかどうかさえ怪しい。うまいこといって曲を聴いてくれて気に入ってくれたとしても、メディアで取り上げる際、ラジオで紹介する際、アーティスト情報を探すのが面倒だからという理由で、そのチャンスがふいになるかもしれません。

なので、タイ音楽関係者・音楽メディアに曲を送る際には、ボクのほうでタイ語で簡易プロフィールを作り、それも含めて送っています。そうすると、百発百中ではないものの、今のところは百発八十中くらいはメディアで取り上げてもらえたり、ラジオでオンエアしてもらたりしています。

 

また、今まで、多くのショーケースフェスや音楽関係者の集まるカンファレンスなどに出席者として、また、登壇者として参加してきました。様々な国から集まった音楽関係者の講演を聞いたり、彼ら彼女らと談笑している中で、「バンド・アーティストを採用する側はどういう情報を求めているのか」というのを直接聞いてきています。

 

海外の音楽業界関係者には、ライブを見てもらうのが一番のプレゼンになるのですが、そんなチャンスはなかなか訪れませんし、今はコロナ禍なので海外にいくこと自体が難しい状況です。なので、今できることを今のうちに。その第一歩として、まずは「海外での露出の可能性を高めるためのツール」として、プロフィールを作っておくことをお勧めします。

 

何のためのプロフィールなのか

プロフィールにはどんな情報が必要か。それを考えるために、まず、どんな目的で誰に見せるのか、というのを定めることが重要です。新曲のプロモなのか、アルバムリリースにともなうプレスリリース込みなのか、フェスへの応募なのか、イベント企画の依頼なのか。何を実現したいかによって、何を重点的にアピールするのかが変わってきます。

と、数多くのパターンがありますが、全部を解説していくとボクが大変なので、ここでは「これだけは記載しておいたほうがいい情報」というポイントに絞り、スタンダードでシンプルに「自己紹介」用のプロフィール作成について説明していきます。

 

プロフィールにはどんな情報が必要か

プロフィールにはどういった情報を記載すればいいか。その際に大いに参考になるのが、実際に出演バンドを募集しているフェスの募集要項です。

ここでは、台湾・台南で開催されているショーケースフェス「LUCfest」の募集要項を参考にしてみます。

 

【台南 / Tainan】アジアを代表するショーケースフェスティバル”LUCfest”、出演アーティスト募集中!

台南で開催されているショーケースフェスティバル

 

ここで必須項目となっている項目を参考にして、プロフィール資料に反映するようにすれば間違いありません。

 

 

上記の募集要項について、以下、ざざっと項目だけ書き出します。

 

・アーティスト概要情報

・連絡先

・アーティスト詳細情報

・Webサイト・SNS

・アーティスト写真

・ステージプロット・テクニカル面での要望

 

上記の項目について、情報の洗い出しをおこない、プロフィール資料としてまとめます。

今回は「自己紹介」用のプロフィールになるので、だいたい1~3枚くらいでまとめられればいいかと思います。言語は、どの国にも送れるよう、英語が無難かと思います。

 

では、どのように各大項目をプロフィール資料に落とし込めばいいか、あくまで一例ではありますが、ポイント交えて、解説していきます。

まずはざっくりと、以下のような形で骨格を組んでみましょう。あくまで一例なので、この通りでなくてもOKです。

 

 

骨格が組めたら、項目ごとのポイントを説明します。

 

・アーティスト概要情報

バンド・アーティスト名などはもちろんのこと、活動歴やジャンル、活動拠点(国名、都市名)、メンバー構成(メンバー数、担当パート)など、基本情報を網羅しつつ簡潔に記載しましょう。

 

・連絡先

海外からの連絡となるので、メールアドレスやSkypeのアカウントなどが適切かと思います。電話番号を記載するのであれば、国番号も付加した電話番号にしましょう。

 

・アーティスト詳細情報

今までのリリース情報、過去の目ぼしいライブ出演情報(フェスとか大規模イベント、ワンマンライブとか)、目ぼしい賞の受賞歴、SNSでの数字(YouTubeの再生回数、ストリーミングサービスのフォロワー数、など)を記載しましょう。海外でも名の通っているフェス・イベントに出演したことがあれば記載しておきたいし、そうではない場合でも、フェスなら規模や著名な共演バンドを書き、ワンマンならどれくらいのキャパでやったのかなどもアピールポイントとなります。

リリース情報とライブ出演情報、目ぼしい賞の受賞歴、SNSでの数字については、前段では軽く触れておいて、別ページで写真付きでより詳しく記載するのがいいかと思います。

 

・Webサイト・SNS

バンド・アーティストが所有するWebサイト・SNS(とストリーミングサービス)を全部記載しましょう。

ここでのポイントは動画です。海外のプロモーターやフェス主催者はライブの出来を気にしています。YouTubeチャンネルのURLのみを送るのでなく、代表曲のミュージックビデオ(のURL)と合わせて、ライブの模様を抑えたビデオ(のURL)も必ず送りましょう

音源を耳障り良く整えることは、今や難しいことではありません。レコーディングした音をいじって音圧を上げる、ピッチを調整する、リズムを補正するなんてことはいくらでもできます。本当に実力があるのか。実際にフェスにブッキングしたとき、観客を震わせるライブができるのか。そういうのを、海外のプロモーターやフェス主催者は気にします。

なぜなら、音源は綺麗に録れてるけどライブがしょぼいバンドをフェスにブッキングしてしまった場合、それを観たお客さんからの「このフェス、良いバンドをブッキングできてないな」というフェスに対しての失望感が、そのままフェスへの信頼の失墜に繋がることを、フェス主催者は危惧しています。これは海外から呼んだバンド・アーティストに限ることではないですが、フェスのラインナップは、動員にも関わることなので、ここら辺は慎重にみられます。

 

・アーティスト写真

プロフィール資料には必ずアーティスト写真を入れましょう。音楽性やキャラクターが反映されているような写真であれば尚良しです。

ちなみに、ボクのバンドは、かしこまったアー写を撮るのが好きではないので、知り合いの腕利き写真家さんがライブのときに撮ってくれた写真をそのままアー写として使っています。ライブすることを音楽活動の最上位に置いていることもあり、こういうアー写を使うのがボクのバンドにとっては最適だと思っています。

 

・ステージプロット・テクニカル面での要望

プロフィール作成の段階ではまだ必要がないかもしれませんが、実際に海外でライブをする際にはステージプロット(あと、バックラインリスト)が必要になります。特殊な楽器は使用するか、サウンドエンジニアは同行するか、持ち込み機材はあるか、イベント側に用意しておいてもらいたいものはあるか、などをしっかり押さえたステージプロットにし、現場で最高のパフォーマンスができるよう、事前に用意しておきましょう。

なお、しっかり準備して事前に送付していても、当日現場に行ってみると、ちゃんと用意されてなかったり、そもそもステージプロットを見ていなかったりすることもあります。気合で乗り切りましょう。

 

プロフィール資料の活用

ここまでで、プロフィール資料の作成はできたかと思います。あとは目的や機会に応じて、プロフィール資料を各所に送付していきましょう。

コロナ禍にあるこのご時世でも、エントリーを受け付けている海外のフェスはあります。今は現地に赴いてライブをするのが難しいため、オンラインフェスになったり、ライブ映像を録画して送ることになったりするかとは思いますが、いずれにせよ、プロフィール資料の送付は必要となることでしょう。

新しい音源が完成し、海外のメディアで取り上げて欲しい時などは、音源とプロフィール資料と合わせて送ることで、取り上げてもらえる可能性が高くなるかと思います。

海外への渡航が容易になり、海外ツアーを組めるような状況になったら、現地のイベンターやライブハウスに片っ端からプロフィール資料を送るのもいいかもしれません。

以前のバンドで台湾ツアーを考えていたとき、台湾のバンドやイベンター、ライブハウスを50ほど調べ、片っ端からプロフィール資料と音源を送りました。そのうち返信をくれたのは20くらい、さらにそのうちの3つは台湾でイベントを組んでくれるとのことでした。例えば1週間滞在して3日はライブ、他の日はメディアや現地の音楽コミュニティーに会いにいって親交を深めることができれば、意味のあるツアーが成立します。

 

まとめ

まだまだコロナ禍なので、なにをするにも厳しい状況ではありますが、それでもできることはあります。
自分たちの音楽をアジアや世界で広めるため、チャンスが訪れた際にすぐに動き出せるようにしておくため、「海外での露出の可能性を高めるためのツール」としてプロフィール資料を作成しておくのはいかがでしょうか。

 

※Music Lane連載との連動プレイリストも合わせてどうぞ。

Music Lane連載 連動プレイリスト「めくるめくタイインディーズの世界」

 

■執筆者紹介

Ginn

タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。

 

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