めくるめくタイインディーズの世界
第12回「ショーケースフェスティバル参加の心得」

海外進出を目指すミュージシャンや音楽関係者の間ではよく名前を聞くようになった「ショーケースフェスティバル」。ただ、どういったものかよくわからなかったり、参加したいけどどうすればいいのかわからない、って人もまだまだ多いかと思います。

今回はショーケースフェスの概要や、どうすれば参加できるのかを解説しつつ、参加することになったけど(参加したことあるけど)どうすればショーケースフェスでチャンスを掴めるのかわからない人へ向け、「ショーケースフェスティバル参加の心得」を綴っていきたいと思います。

 

ショーケースフェスの概要

ショーケースフェスは、海外進出への足掛かりを掴むための仕組みとして、大きな役割を担っているイベントです。

だいたいは二部構成となっています。午前から夕方にかけては世界各国から集まった音楽関係者(「Delegates(デリゲーツ)」と呼ばれます)によるカンファレンスがおこなわれ、夕方以降は自国と世界各国から集まったバンド・アーティストによるライブイベントがおこなわれます。場合によっては、バンド・アーティストがDelegatesに直接相談ができるミーティングなども開催されたりします。

 

2020年、タイ・バンコクのショーケースフェス「Bangkok Music City」でのカンファレンスの様子

 

「ショーケース」という名の通り、夕方から始まるライブイベントには世界各国から集まったDelegatesが新たな才能に出会うためライブを見に来ます。彼ら彼女らの目に留まれば、自国のフェスに招かれたり、当地でのツアーやプロモーションの話が舞い込んできたりします。

このショーケースフェス、アジアの各都市・地域でもおこなわれています。日本・沖縄「Music Lane Festival Okinawa」、日本・東京「Tokyo Beyond Festival」、台湾・台南「LUCfest」、韓国・ソウル「Zandari Festa」、タイ・バンコク「Bangkok Music City」、東南アジア「ASEAN Music Showcase Festival」など、それぞれの都市・地域で個性的な企画がされています。
2017年の台湾・台南「LUCfest」には、今や世界が注目するタイのシンガーソングライター「Phum Viphurit」が出演し、それがきっかけとなり、日本での音源リリースや世界ツアーへの切符を手にしています。

 

ショーケースフェスへの出演方法

では、どうすればこういったショーケースフェスに出演できるのか。だいたいのショーケースフェスでは参加バンド・アーティストを公募しています。なので、出演したいショーケースフェスがある場合、そのフェスのWebサイトやオフィシャルSNSをフォローしておき、公募が開始されたら応募しましょう。
Music LaneのWebサイトでも、ショーケースフェスの公募情報は随時アップされています。

 

【Estonia / エストニア】2023年5月開催「Tallinn Music Week」出演アーティスト募集中

【Seoul / ソウル】”Seoul Music Week 2023″、出演アーティスト募集中

 

ショーケースフェスの開催時期については各フェスで異なります。ただ、だいたいどのフェスも毎年同じ月に開催しているので(沖縄Music Laneなら毎年2月、台南LUCfestなら毎年11月、など)、前もって調査しておけば、いつ開催されるのか、ひいては、いつ公募が始まるのか、予想できるかと思います。

もちろん、応募したからといって審査に通るかどうかは別の話。審査員は多角的な軸で審査していますが、良質な音楽活動を継続的におこない、リリース・ライブを積み重ねているようなバンド・アーティストは、比較的審査に通りやすいのではないでしょうか。

 

ショーケースフェスへ出演するにあたりやっておきたいこと

ショーケースフェスに参加する目的は、ずばり、「海外進出のチャンスを掴むこと」かと思います。海外のバンドと仲良くなれたり、日本の音楽業界関係者と知り合いになれたり、と、副次的に嬉しいこともありますが、主目的は「海外進出」というバンド・アーティストがほとんどではないでしょうか。
その海外進出への道を開いてくれるかもしれないDelegatesに自分たちを知ってもらう、覚えてもらう、ライブを観てもらう、機会をもらうためにはどうアピールすればいいのか。

 

2019年、タイ・バンコク「Bangkok Music City」でのポストハードコアバンド「Faustus」のライブ。初年度である2019年は、タイの中央郵便局をメイン会場とし、その周辺のミュージックバーと合わせて10会場ほどで開催。

 

Delegatesは自国において各自のフィールドで活動し、実績を積んできており、なのでDelegatesとして招聘されています。つまり、普段から多忙な人たちです。
そういう人たちの意識に入り込むためにはどうすればいいのか、今まで出演者としてもDelegatesとしてもショーケースフェスに参加してきた筆者の経験則より、「事前準備」「イベント当日」「事後フォロー」に分け、まとめてみました。

 

事前準備

Delegatesへメール送付

通常は主催者から事前にDelegatesの情報が送られてきます。氏名や国、当地での肩書などとともにメールアドレスも書いてあります。片っ端からメールを送りましょう。
メールの内容としては、以下で言及するプロフィール資料を添付しつつ、短文バージョンの自己紹介と共にショーケースフェスでの自分たちの出番の日時・会場を記載し、ライブを観に来てもらうように促しましょう。

イベント当日も、Delegatesにはライブの日時・会場を直接伝えたほうがいいですが、この機会にライブを直接観てもらうことが大事なので、事前と当日と何度でもアプローチするのがいいかと思います。

 

Delegates調査

イベント当日は自身のライブの準備もありますし、Delegatesがどこにいるかもわかりませんし、誰とどれくらいの時間会って話せるかわからない状態です。Delegates全員と会話するのは難しいので、せめて、自分が進出したいと思っている国から来ているDelegatesはちゃんと抑えておきましょう。

例えば、タイへの進出を考えているとして、今回のMusic LaneではタイからのDelegatesは3名います。既に名前が発表されているので 、Webでサーチして顔を確認したり、当地での活動をチェックしておいたり、インタビュー記事があったら読み込んでおいたり、タイ語で「こんにちは。私の名前は○○です。」くらい言えるようにしておいたり、当日に会えた際に話が弾むように準備するのがいいかと思います。営業や面接に行く際に、相手方の企業情報を調べて置くのと同じ感覚ですね。

 

・プロフィール資料作成+ちょっとしたお土産の用意

プロフィール資料を用意しておきましょう。プロフィール資料は、ショーケースフェスのためでなく、普段から用意しておいたほうがいいのですが、このタイミングで改めて見直すのがいいかと思います。

※プロフィール資料作成についての参考記事はこちら。

めくるめくタイインディーズの世界 第4回「コロナ禍の今のうちに海外進出に向けてやっておきたいこと」

 

プロフィール資料を更新したうえで、イベント当日にDelegatesにスッと渡せるよう、一枚ほどにまとめておけると尚良しです。プロフィール資料以外にも、バンド・アーティストの名刺など作っておくと後々も役立ちます。

 

 

筆者のバンド「Faustus」で作った名刺。シンプルに、表面はバンドロゴ、バンド名、活動拠点、連絡先(黒く塗りつぶしてあるところ)を、裏はFacebookページに飛ぶQRコードとYouTubeにアップしてある楽曲に飛ぶQRコード(YouTubeチャンネルへ飛ばすと、曲を選んで再生する手間がかかるので、直接楽曲に飛ぶようにしてる)を記載。

 

また、以前、バンコク「Bangkok Music City」に出演した際に主催者から推奨されたのが「ちょっとしたお土産」をプロフィール資料・名刺と共に渡すこと。タイっぽさを感じられるお菓子など、ホントちょっとしたものでいいので、用意しておくことを推奨されました。
なかには面白いお土産を用意していたバンドがいて、タイのパーティーデジタルロックバンド「S.O.L.E.」が用意したのはテキーラが入ってる注射器型容器。自分たちのパーティーピープルな音楽性にも合う、かつ、インパクトがあり印象に残るお土産でした。

 

 

あと、ちょっと違う話になりますが、バンド・アーティスト名、大事です。いや、大事なのは当たり前で、何かというと、たまに日本語名しかないバンド・アーティストがいます。当然、海外の人は読めないし、なので、覚えてもらえません。
バンド・アーティスト名を変える必要はないので、台湾のバンドみたいに、母国語のバンド・アーティスト名にプラスして、英語名も併記するようにし、海外の人にも認識してもらえる名前を持つといいかと思います。

 

イベント当日

Delegatesを見かけたら果敢に話しかけ、事前に用意したプロフィール資料・名刺・お土産を渡しましょう。そして、自分たちのライブの日時・会場を伝え、ライブを直接観てもらえるよう働きかけましょう。

カンファレンスパートがある場合、積極的に参加し、スピーカーを務めるDelegatesが当地でどういったことをおこなっているのか、当地でどういう役割を担っているのか、見識を深めましょう。Delegatesにカンファレンスの感想を伝えれば、きっと喜んでもらえると思います。

Delegatesに直接相談ができるミーティングが開催される場合は張り切って参加しましょう。バンド・アーティストが多くのDelegatesと会話できるよう、一セッション15~20分の時間制となっていることがほとんどです。少ない時間を最大限に活かすため、どういったことを質問するか、事前に準備するのがいいかと思います。

 

2020年、沖縄「Trans Asia Music Meeting (TAMM)」でのDelegatesに直接相談ができるミーティング「1 on 1 Meeting」の様子

 

なお、Delegates以外にも音楽関係者がそこら中にいます。今回のMusic Laneでも、海外から参加するバンドが所属しているレーベルのオーナーだったり、自身でも当地でイベント企画をしているバンドマネージャーだったり、Music Laneに海外からバンド・アーティストやDelegatesが大挙してやって来ると知り沖縄に集う日本の音楽関係者だったり、チャンスがそこら中に転がっています。
プロフィール資料・名刺・お土産は、発表されているDelegatesの数以上用意しておきたいところです。

 

事後フォロー

せっかく繫がりができた海外への道、継続してDelegatesへアプローチを続けていきましょう。自分たちのライブを観に来てもらえていたら御礼メールを送り、観に来てもらえてなくても当日のライブの様子を撮ったビデオなどを送り、コンタクトを取り続けましょう。

例えば、新しい音源をリリースした、MVをアップした、などあれば逐一連絡するのがいいかと思います。海外のDelegatesに頻繁に会うことはなかなか叶いませんが、間接的にでも何度も接触することで覚えてもらえることでしょう。

 

まとめ

正直、ショーケースフェスに数回出演したからといって、海外のフェス出演が決まったり、海外レーベルから音源リリースのオファーが来たり、そんなに簡単ではありません。Delegatesにもそれぞれ好みがあるので、たいして何もしてないのに上手いことハマることもあれば、どんなにアピールしてもハマらないこともあります。
また、どんなに海外とのコネクションが出来たとしても、本質である音楽活動が疎かになれば、海外から声が掛かることはないでしょう。たとえ声が掛かって、海外でライブができたとしても、良い反応を得るのは難しいでしょう。

音楽活動をより突き詰め、素晴らしい楽曲を、凄まじいライブを作り上げていき、かつ、Delegatesへも継続してアプローチを続けていくことで、海外への扉をこじ開けることができるかもしれません。

海外で活躍する日本のバンド・アーティストが増えていきますように。

 

※Music Lane連載との連動プレイリスト「めくるめくタイインディーズの世界」も合わせてどうぞ。

 

■執筆者紹介

Ginn
タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。

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