【Taiwan / 台湾】”OC experiment” exclusive interview 台湾の新世代ジャズバンドが生み出す新しいジャズの背景。

台湾南部の街・台南で開催されているアジアを代表するショーケース・フェスティバル”LUCfest”。コロナ禍を経て3年ぶりに参加した昨年11月のこのイベントで、偶然聴いた台湾のバンド、OC experimentの音楽が長く印象に残っていた。ジャズをベースに、R&B、ファンク、フュージョンなどを自由に行き来する彼らの音楽は、それまでに聴いてきた台湾のバンドとは随分違った印象を受けた。フェス自体、インディーロックやエレクトロなダンスミュージックが軸になっていることもあり、OC experimentの音楽は、ちょっと違った雰囲気に響いていたと思う。
今年から、「Koza City Jazz 2023」を開催するにあたって、新しい世代のアジアのジャズに焦点を当てるということは決めていて、彼らにも出演を打診して、沖縄まで来てもらえることになった。

今回の沖縄が初めての海外でのライブというOC experiment。キーボードとヴォーカルと務める、リーダーのOCに、彼らの音楽についてメールでの質問に答えてもらった。

(構成・文:野田隆司 / Ryuji Noda)

 

photo by OC & possibilities Ltd.

ジャズの魅力は、より多くの可能性を提供し、
(良い意味で)予測不可能な『衝突』を生み出すことができること。


◎ OCさんが音楽と出会ったきっかけを教えてください。

「母がピアノを教えているので、幼い頃からクラシック音楽に触れていて、とても好きでした。これが、私が一番早く音楽に触れた原点です」

◎ バンド結成に至るいきさつはどうだったのでしょう。

「実は、バンドを組もうと思ったことはなくて、ずっと家で一人で音楽を作っていました。数年前に今のマネージャーのシルヴィーと出会ってから、自分の音楽をみんなと共有できるチャンスがあるかもしれないと感じました。それから、あちこちでミュージシャンを探し始めたんです。偶然、トランペット奏者のLEE5と出会い、その後、ドラマーのYenchanとベーシストのYuChiaを紹介されました。それ以来、私たちは一緒に音楽を演奏しています」

◎ バンドを組もうと思った時、どういう音楽をやろうと考えたのですか?

「正直なところ、バンドを結成した当初は、特定のジャンルを設定していたわけではありません。ただ、個人的に好きな音楽を作っていました。共通点があるとすれば、グルーヴ感のある楽曲を目指すということでしょうか」

◎OC experimentの音楽はジャズがベースになっていると思います。ジャズの魅力はなんだと思いますか?

「ジャズの魅力は、より多くの可能性を提供し、(良い意味で)予測不可能な『衝突』を生み出すことができることです。例えば、演奏中に特別な音を加えてコードを拡張したり、意図的に『一歩踏み出す』ことで即興演奏を表現することもあります。実行するのは難しいかもしれませんが、うまくいけば、演奏全体を別次元に引き上げることができるんです」

photo by OC & possibilities Ltd.

バンドの音作りは、未知なるものに向かっていくプロセス。

◎皆さんのサウンドは、ジャズやフュージョンがベースですが、さまざまな音楽がミクスチャーされています。それはかなり意識的にやってらっしゃるのでしょうか? またそこには、バンド名にある、experiment(実験)という要素が反映されていると捉えてもいいのでしょうか?

「バンドの場合、OC experimentのメイン・ソングライターは私ですが、メンバーはデモを聴いて自分のアイデアを加えます。さまざまなサウンドを歓迎しますし、一定の方向に進む必要もありません。音楽に対するどんなアプローチもオープンマインドで柔軟に行い、さまざまなクリエイティブな方向性が自然に出てくるようにします。自分に合うものを見つけるには、いろいろな組み合わせを試してみる必要があると思います。だから、私にとっての『実験』は、標準的な答えがないのです。数学の公式のように、括弧の違いによって結果が変わるように、未知なるものに向かっていくプロセスなのです。メンバーそれぞれが参加し、共に創造と変化のプロセスを歩んでいくんです。
 私たちのライブを聴いたことがある観客の皆さんだと、同じ曲でも毎回微妙に、あるいは大きく違うことに気がつくと思います。即興的なバリエーションであれ、セットリスト全体であれ、私たちがその瞬間に作り出す音楽を感じることができるのです。このような変化と予測不可能性が、私たちと観客を新鮮な気持ちにさせるのです」

◎お気に入りのアーティストはいらっしゃいますか?

「今、私が好きなミュージシャンはロバート・グラスパーです。彼の初期の音楽はソロが多かったのですが、その後、さまざまなミュージシャンとコラボレーションする中で、音楽の整合性を重視するようになり、ヒップホップとジャズの素晴らしい融合を実現しました。マイルス・デイビスやハービー・ハンコックなど、どの時代にもパイオニアがいますが、ロバート・グラスパーはこの時代のパイオニアだと思います」

photo by OC & possibilities Ltd.

 

届けたいのは、歌詞ではなく、音楽全体、曲の主旋律やリズム。
本能を超えて自分らしいものを生み出す。

◎インストだけでなく、OCさんがヴォーカルをとる曲もあります。歌詞をつける曲とつけない曲は、意識的に書き分けていますか? また中国語と台湾語で歌詞をつけているそうですが、これはどういう理由からですか?

「中国語、台湾語、英語にかかわらず、歌詞が曲の唯一の焦点になるということは通常ありません。実際、曲によっては、ごくわずかな歌詞しか入れないこともあります。私は、難しい概念を伝えるために歌詞を使うわけではありません。私が一番大切にしているのは、曲の音楽性です。曲の主旋律やリズムをお客さんに届けたいんです。
 これまでライブでは、曲名や歌詞の内容を紹介することはほとんどありませんでした。それは私が一番大切にしているものが音楽全体だからかもしれません。曲作りの言語については、中国語と台湾語が母国語なので、どちらも流暢に表現でき、特に台湾語は得意です。英語の歌詞もありますが、ほとんどがおちゃらけたものです」

◎メロディーの美しい曲が多いと感じます。作曲のアイデアはどういうところから生まれるのですか?

「通常、作曲をするときは、まずハーモニーから始めます。大まかなアウトラインができたら、コンピューターやキーボードから離れて、音楽とはまったく関係のないことをする。気分転換に鼻歌を歌うと、自然とメロディーが流れてくるんです。
 一時的に音楽から離れるというのは、頭の中で幻想を見るようなものだと思うんです。本能から切り離すことで、別のゾーンに入り、本能的なものだけでなく、自分だけのオリジナルを作り上げるのです。日本のアニメ『呪術廻戦』に出てくる『領域展開』に似ていますね。自分がどのタイプなのかで、広げられるものが決まってくる。本能を超えつつも、それをベースに、触発されて、自分らしい、新しいものを生み出すんです」

photo by OC & possibilities Ltd.


今まで知らなかった沖縄を知ることができそう。

◎ライブで音楽を表現するときに、どういうことを意識していますか?

「音楽と向き合うとき、最も純粋な自分を保ち続けること」

◎今回の沖縄が、初めての海外でのライブだと聞きました。OCexperimentの音楽はどのように聴かれると思いますか?

「フレッシュでエネルギッシュ、そしてジョイフル」

◎沖縄について知っていることがあれば教えてください。

「NPB(日本プロ野球)の春季キャンプ、三線、情熱、安室奈美恵。6月には今まで知らなかった沖縄を知ることができそうで楽しみです」

◎沖縄の音楽ファンにメッセージをお願いします。

「皆さん、私の音楽をライブで体験しに来てください。これは、私が大好きな、皆さんと共有したい音楽です。私のライブに来る理由が何であれ、また、そのジャンルが馴染みのないものだったとしても、私は、あなたが満足できることを約束します」

 

◎OC experiment / オーシー・イクスペリメント(台湾 / Taiwan)
Biography

リーダーのOCは、2019年よりキーボードとラップトップでハウススタジオでの制作を開始。フュージョン・ジャズをベースに、リズムラインはジャズ・フュージョン、R&B、ファンクの間を自由に行き来しする曲を紡ぐ。中国語と台湾語のバイリンガルなソングライティングは、普通の人々の気分や人々の間の曖昧な関係を代弁している。
2021年秋、「OC experiment」を結成。「Debut」(The UU Mouth、台北)、「Small Oyster Rock Music Festival」(高雄)、「台中Jazz Festival」(Jazz Young Stage)、「LUCfest」(台南)などのライブハウスやフェスティバルに出演し、その音とヴァイブを広めている。彼らは、人々がグルーヴし続けられるような宇宙を創造することを目指している。
今回、沖縄でのライブが初の海外公演。自分たちの音楽が別の国でどのように受け止められるのか、とても楽しみにしているという。

OC: Keyboard , Vocal
LEE5: Trumpet
YuChia: Bass
Yenchan: Drums

公式サイト
https://possibilitiestw.wixsite.com/oooc

◎Live Information

Okinawa-Asia Music Front Line Vol.2
出演:OC experiment(台湾)・yukaD(沖縄)

日程:2023年06月09日(金)
会場:桜坂劇場 ホールB (那覇市牧志3-6-10)
時間:開場19:00 開演19:30
料金:前売3,000円 当日3,500円(全席自由)高校生以下無料
Vol.2 / Vol.3通し券5,000円
※時要1ドリンクオーダー(500円)
プレイガイド:桜坂劇場窓口・ミュージックタウン音市場・イープラス・チケットぴあ・ファミリーマート・ローソンチケット
問合せ・電話予約=桜坂劇場098-860-9555

 

▶︎Live At Home from Koza City
Koza City Jazz 2023
“Beyond Jazz, Beyond Borders”

 出演:element of the moment(沖縄) / Gray by Sliver(韓国) with special guest Aragaki Mutsumi(沖縄) / OC experiment(台湾)

日程:2023年6月10日(土)
会場:ミュージックタウン音市場 (沖縄市上地1-1-1 3F)
時間:開場17:00 開演(ライブ配信開始)18:00
◎通常チケット
料金(全席自由)
一般前売3,000円 当日3,500円
沖縄市民割引2,500円(前売のみ・枚数限定)
一般(障がい者)割引(介助者同料金)1,500円(要手帳提示)
高校生以下1,000円
*要1ドリンクオーダー(500円)
<プレイガイド>
ミュージックタウン音市場/普久原楽器店/照屋楽器店/キャンパスレコード/桜坂劇場/チケットぴあスポット/ローソンチケット/ファミリーマート・イープラス

◎ライブ配信チケット
料金:1,500円
*6月16日(金)までアーカイブ視聴可能
<プレイガイド> Peatix
https://peatix.com/event/3532874/

問合せ・電話予約=ミュージックタウン音市場
098-932-1949
主催:沖縄市・ミュージックタウン音市場

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