【Column】
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.4
「アチチ、アチが見つからない」

 アチチ、アチ、燃えてるんだろうか? 日本に住んでいる30代以上は一度は耳にしたことがあるであろう郷ひろみ GOLDFINGER ’99

今回のコラムの結論から先にお伝えすると、GOLDFINGER ’99のような曲をもっと聴いてみたい!!!これからのアジア音楽とのクロスフェードな楽曲に期待!というお話。詳しくは本編で。

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【コザ天④で聞くべき曲3選】

☞ 後來 Later / 劉若英 René Liu ( https://www.youtube.com/watch?v=t0igPuDjYUE&t=42s )

☞247 (chelmico remix) / LUSS ( https://www.youtube.com/watch?v=9UgtS3XEfHw )

☞凝視 Gaze at Blue [Charlie Lim Remix] / 大象體操 Elephant Gym(https://youtu.be/MdBGLsUAdLY?si=kVUdVRpdKvhBpO9- )

!)コラムに登場するアーティストはできる限り本国での活動名と英語名を併記しています

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 アジア音楽を聴く趣味の人が自分のまわりにまだまだ少ないことは(悲しいかな)事実ではあるけれども、インターネットを通じて日本全国にいるアジア音楽好きな人と繋がれるのがSNSのいいところ。私よりも深く、長くアジア音楽を嗜む人のデータベースやSNSの投稿で日々、様々な音楽の枝葉をキャッチしようと試みるなかでふと気になったことがある。

日本の歌謡曲やJ-POPのアジア諸国カバー曲、相当多い!?

 近年のNetflixなどの映像サブスクリクションのインフラ化に伴い、アニメ主題歌でYOASOBI アイドル の全世界的なヒットや、SNS発信で人気を博したimase NIGHT DANCERのアジア圏を中心とした世界的BUZZなど、世界と日本が繋がる音楽ニュースは新型コロナ渦以前よりも見かけるようになってきた。

しかしそうなる以前から、アジア音楽を愛するリスナーに確立したジャンルがある。それが日本の歌謡曲やJ‐POPが原曲となるカバー曲のディグ(収集)だ。

いつも参考にしているC-POP研究所さんのサイト日文翻譯成中文歌 / C-POP研究所はじめ、アジア音楽好きには、カバー曲専用のページがあるブロガーやDJが一定数いる印象。その中で沖縄関連のものを調べてみると、

沖縄関連のアーティストのカバー楽曲(一例)

☞Kiroroの「未来へ」ー劉若英 René Liu 後來 Later
☞ORANGE RANGEの「以心伝心」ー王心凌 Cyndi Wang 心電心 Heart To Heart

☞夏川りみの「涙そうそう」ー蔡淳佳Joi Chua 陪我看日出

☞喜納昌吉&チャンプルーズ「花」ー周華健 Wakin Chau 花心 The flowery heart

 沖縄のカラオケ常連曲はたいてい中華圏でカバーされているから驚き。

人気台湾アーティストによるカバー曲リリースや、アニメタイアップ、主題歌となった人気ドラマの海外放送をきっかけに、ORANGE RANGEが2012年から何度も台湾で公演、Kiroro玉城千春も、テレビ出演時の交流がきっかけで90年代日本でも活動していた徐若瑄Vivian Hsu(ビビアン・スー)と共演*、上記カバー曲をリリースした劉若英 René Liuと台湾ライブを行うなど、カバー曲リリースが重要な海外交流の機会にもなっているようで、現地アーティストによってカバー曲がリリースされることも重要な海外進出チャンスの一つであるといえる。

そんなことを考えていたら、ひとつの疑問が浮かんだ。

アジアのポップス/インディーを日本のアーティストがカバーした曲ってあるのだろうか?

 そう思い立ち、インターネットでアジアポップス/インディーポップスの日本アーティストのカバー曲を探してみるも、探しても探しても見つからない。探せど探せど見つかるのはK-POPアイドルのオリジナル曲の日本語バージョンばかり。見つけたとしてもトラック(伴奏)のアレンジを日本のトラックメイカー/DJが行ったremixがほとんど。

がっつり日本のアーティストが歌うアジアの原曲のカバー曲に絞ると、本当に見つからない!!!!

 私のリサーチ方法が悪いのかと、先述のC-POP研究所さんにも相談してみたものの、70~80年代のものは見つかるけれども、2000年代以降の楽曲のものは「#歌ってみた」系の動画しか見かけないかも、とお返事。

そんな中、思い出したのがこの曲。

 原曲の持つ、恋愛に悩む女の子の1人で過ごす夜の寂しさや切なさが、日本語バージョンになると日本のラップデュオchelmicoの得意とする、女の子の心情の機微がさらに繊細にリアルに歌われる。またLINEの着信音のようなシンセ音が入ることでチャットでのバーチャルな恋愛と実際に会いたい気持ちのちぐはぐさの輪郭がはっきりして、まるで少女漫画を読んでいるような気持ちにさせてくれる。

 オリジナルはタイ・バンコクのエレクトロ・ヒップホップ/ポップデュオ LUSS。

彼女たちのヒット曲「247」がYouTubeで2200万回以上も再生される人気の2人組だ。以下、chelmicoの公式ホームページにあったニュースリリースをそのまま引用すると、続けてこう書いてある

 

そんなLUSSからのラブコールにより大ヒットソングとなった「247」をchelmicoが『247 (chelmico remix)』として日本語で大胆にアレンジ、片やchelmicoの人気曲「Balloon」をLUSSが新たなメロディを加えた新生『Balloon (LUSS remix)』としてタイ語と見事な日本語で歌い上げている。”

とある。

 

日本語で大胆にアレンジ⁇⁇⁇

 このワードに聞き覚えがある…コラム冒頭に登場した、郷ひろみのGOLDFINGER’99が大ヒットしテレビで演奏されていた当時、よくこの「日本語で大胆アレンジ!」と曲解説が入っていた。それと同時に、アジア圏の楽曲ではないものの、DA PUMPのUSAMAXのTacata’など定期的に洋楽の日本語カバーがヒット/BUZZしていることも思い出した。

日本語訳で大胆にアレンジ、ありじゃん‼︎

 LUSSは活動がタイ バンコク、言語はもちろんタイ語だ。タイ語のまま歌うのは確かに演奏する方も、リスナーとして聴く方も双方ハードルが高い。

タイ語の歌詞を見てGoogle翻訳、LINE翻訳、DeepLを駆使して歌詞の意味を読み解きながら楽曲をまるごと楽しむ層はごくわずかだと想像する。

 けれど、日本語にアレンジしてカバー演奏/リリースすることでリスナーに届ける難易度がグッと下がり、日本国内のリスナーに届きやすくなる。アジア音楽独特の温度感を持った楽曲を、音楽玄人飛び越えてお茶の間、世間に見つけてもらえるチャンスだってあるかもしれない。

 郷ひろみのGOLDFINGER’99やDA PUMPのUSA、MAXのTacata’までトンチキな歌詞をあてずとも、「247」のchelmico remixは、歌詞の世界観を尊重して日本語歌詞をつくり歌うことで、そもそもの楽曲が持つ素晴らしさを伝えることに成功している。原曲の良さを引き出す日本語詞カバー曲は、人と人の繋がりを強く感じるインディーミュージックで本領を発揮する良い手法なのかもしれない。このコラムを読んでいるアーティストがいてくれていたら、気になるアジアインディーで1曲、日本語詞でカバー曲に挑戦してみてほしい。(何より私が聴きたい!)

続けてもう1曲

 フジロック出演や大規模な日本ツアーも行う台湾のインストポストロックバンド大象體操 Elephant Gym。彼らの人気インスト楽曲 凝視 Gaze at Blueをシンガポールのプロデューサー/シンガーソングライターCharlie Limが英語詞をつけたremixバージョン。原曲の精妙な緊張感とは異なるアプローチのダンスフロアアレンジで、さらにピアノが入ったことでドラマチックな仕上がりに。アジアインディーのインスト曲に歌詞を乗せる、というのもアイディアになりそう。全世界のリスナー向けに英語詞で展開するのも良し、こちらも大胆に日本語で挑戦するのも面白そう。

 

*Kiroro玉城千春と徐若瑄Vivian Hsu(ビビアン・スー)の歌った「長い間」も収められている動画03:35~ 【日台友好】Zepp Premium「徐若瑄(ビビアン・スー)」×「玉城千春(Kiroro)」のスペシャルライブに酔いしれました♪

§コラムに登場した楽曲のオリジナル曲も参考までに。聴き比べて楽しんでみてほしい

247 / LUSS( https://www.youtube.com/watch?v=Vm9rFxdiA-o

凝視 Gaze at Blue / 大象體操 Elephant Gym

 ( https://www.youtube.com/watch?v=rAQu1CtcmzE )

 

筆者紹介

サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。

Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中

 

リンク https://adroit-orchid-f7m0xv.mystrikingly.com/ 

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