【Column】
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.10ー
Music Lane Festival Okinawa 2024【レポート1】

1月19日 – 歓迎レセプション

Opening Reception @ Music Town

仕事を定時に終えて急いで会場に到着。開始予定時刻の19時。会場セッティングで遅れているようで、入口付近で手持無沙汰な出演者。そこにエレベーターで今回海外からの出場国の中で1番参加者の多い、タイのFORD TRIOやLEMONYたちが群をなして到着。拍手や歓声を上げながら始まったぜ!!!と言わんばかりに賑やかに会場に入る。場の雰囲気が一気にインターナショナルな場に豹変する。

それをきっかけに場が動く。イスラエルから参加しているICE HOKKUの2人はお揃いのヘアスタイルのインパクトの強烈さに反して、とても人懐っこく周囲にいる出演者に次々と声をかけ、一緒に写真撮影。そこからどんどん”はじめまして”の輪が広がっていく。KAO=Sのお二人は、ショーケースフェスティバルで有名な、サウス・バイ・サウスウエストSXSWへ参加するなど、インターナショナルな場の雰囲気に慣れているようで、序盤から活発に招待されたデリゲーツ(音楽関係者)とコミュニケーションをとっている(KAO=Sの山切氏が書いたレポートも是非見てみて!)。

その反面、急に海外の雰囲気になった会場に戸惑う出演者たちも。どう行動すればよいか不安そうな表情がより濃くなり、喫煙ブースに逃げ込むように移動する姿をみかける。

この場に来た目的が個々人はっきりしていないと、辛い時間になるな、と彼女・彼らを見ながら私も気が引き締まる。ホワイエには200人ほどが集まっただろうか。どこに誰がいるかわからないほど人でごったがえす会場内。

レセプションの挨拶中は、参加するデリゲーツをざっくばらんに紹介しながらも、”ただいま”、”おかえり”、”まってました!”と和やかな合いの手と共に会は進行していく

“はじまりましたね!この何かが始まる感じ、エネルギーがあふれていて素晴らしい!”と再会の挨拶をしてくれたのはデリゲーツの高波さん。

“会場に来る前、このイベントの告知と、プロモーションで沖縄のテレビ番組に出演してきました!”と教えてくれたのは出演アーティストのJohnniven(それは見たかった!!)

沢山の人とお話をした中で、私がこのレセプションで一番の発見と驚きをもらったのは、中国からのデリゲーツ Nola NIさん。”伝統芸能音楽はポップスを組み合わせることで、もっと面白いものが作れる”彼女の手がけるフェスティバルやプロデュースしたアーティストを紹介してもらった。伝統芸能やワールドミュージックのジャンルで、日本でいうところのフジロック規模のフェスティバルが開催できるなんて!!目から鱗とはこういうことか…

用意されたピザや寿司、天ぷらなどの軽食は、誰もかれも挨拶や歓談に大忙しでレセプション終盤になっても全く手がつけられていない。この会場にいる人々が今日の出会いに夢中になっていることがわかる。延長に延長が続いたレセプションが終わっても話足りないデリゲーツや出演者はコザの商店街の酒場へ(みんなパワフル!!!)

今回のレセプションでもう1点、衝撃だったことがある。会場のスタッフさんに私が”どのアーティストが気になっていますか?”と何の気なしに雑談のつもりで質問した返答。

スタッフさんの答えは”特に…(興味ない)”

正直、この会場内の熱が伝わっているものと疑わなかった。誤魔化して、適当に答えることもできたはずなのに、それさえもしなかった(あまりに質問が不意打ちすぎたという可能性はあるが)。取り付く島もないその返答に、私の過剰な熱は平静を取り戻す。

あぁ、これが今の日本の音楽シーンとアジアの音楽シーンの距離か。遠いなぁ。現実をつきつけられる。

この距離が縮まるにはどうすれば良いんだろうなぁなんて思いながら、遠くやんばるの自宅まで車を走らせた。

1月20日 – 2日目(ショーケース1日目)

Crossover Cafe 614前のパルミラ通り

この日の最高気温は25度!この時期の沖縄でもなかなか考えられない夏日。腕まくり、額に汗滲む天気だ。

夜が賑やかなコザは、日中はシャッターが閉じられた店も多く、人どおりはまばら。昼下がりにすれ違う人は十中八九、このショーケースの参加者。相手が誰とは知らずとも、手首につけたリストバンドをみかけてはMusic Lane Festival Okinawa 2024の参加者同士、すれ違いざまに会釈&笑顔。みんなせわしなく移動しているが口角があがりそれぞれに楽しんでいる様子が見てとれる。

昨年見かけた、何やってるかわからないけどなんとなく来てみた、と話していた地元のおばちゃん連れや、次はなにを見ようかとタイムテーブル片手に談笑する老夫婦を今年も発見。常連さんとなって、それぞれのスタイルで移動しながら音楽を楽しんでいて音楽の輪の広がりを感じられ勝手に嬉しくなる。

前回のコラムでこのショーケースフェスティバルがいかに素晴らしいかをお伝えしたが、ショーケースフェスティバルだからこその宿命ともいえる問題がある。

タイムテーブル通りにいかない問題

出演順が遅くなれば遅くなるほど、タイムテーブルに予定されていた時間よりもスタートが遅れていく。(SXSWも後ろになるにつれてどんどん遅れていくと聞いたことがある。2~3時間遅れることもあるとか)このタイプのフェスティバルでは避けて通れない道。

“ステージスタートが遅れたから間に合った!”も、

“前のステージが遅れて間に合わなかった!”も、

どちらに転ぶかどうかは出演者の運と、それに居合わせた観客の運。人それぞれだ。

出演者の立場になって考えれば、与えられたリハーサル時間は、ほんのわずか。大所帯になればなるほど、リハーサルの難易度は上がる。
イヤモニへの返しの音量調整や、その瞬間に起こってしまったマシントラブルなど、セッティングやリカバリをそのわずかな時間で行いながら本番を迎える訳だが、本番はデリゲーツにアピールできる最大の場面。妥協が出来ない気持ちも痛いほどわかる。

StripJoint @ Remy’s

Remy’s出演2組目。StripJoint

6人と大所帯でありながらも、妥協なくリハーサルで1つ1つ確認事項をPAと詰めていく。個々の楽器の出音のバランス、マイクと楽器の位置の相談など、リハーサルではうまくいかない歯がゆさを感じる部分も。それでも諦めずにリハーサルを進めるメンバー。

セッティングが遅れ、僅かに遅れてのスタートではあったが、他の会場のステージ終演遅れがうまい具合にばちっとあたり、始まった瞬間にフロアにお客さんがなだれ込んできた。

ドラム後ろからの裸ライトのサスペンション照明も、彼らの持ち味の叙情性を引き立て良い演出に。大所帯だからこその音の差し引きで生まれる音の豊満さ、トランペットの華やかさを思う存分楽しむことができた。

その後、Crossover Cafe 614前に到着。階段入口付近に人が大勢。こちらも会場リハーサルが押している。友人やデリゲーツたちと、614前に続々集まる人の多さに、この人数、会場全員入り切れる??と心配になるほどの大入りだ。

安次嶺希和子 / Kiwako Ashimine @ Crossover Cafe 614 Photo by Naoko Taira

安次嶺希和子のステージ。が…スタート遅れが故に、私は泣く泣く次の会場へ移動。ついてない私…。

音楽に出会う運、今回、私はなかなかの悪運を引き続ける。

続けて、次に見ようとしていた出演者は来日できずキャンセル!!海外からの出演者はビザ発給タイミングや各国の時事的動向の危険性等、どうにもならないことがある…楽しみにしていた分ショックは大きい。

WEST CASTLE @ GIG STUDIO 騒音舎

気分を切り替え、騒音舎のそばにある無国籍食堂Vanquciaでスパイシーな軟骨カレーを食べていると、目の前ではWEST CASTLEの2人が歓談中。先程の彼らのステージを見た地元の外国人のお客さんから熱烈なフィードバックとハグ、沖縄市周辺でのライブオファーを受けていた。

彼らは全編マイクスタンドを使ったマイクプレイやダンスをしながらの歌唱。エンターテイメント性が高く、客席フロアまでその楽しさの熱が伝播して良いライブだった。

さらに何組かみてまわってきてRemy’sに戻ってきた。

TOSHがリハーサル中。音を出しながら、後方から当てられた照明の演出に

“今日はライブ中、この感じで照明を抑えめであててもらえますか?”とオーダーしている。今回はシンプルな照明演出で挑むようだ。

TOSH @ Remy’s Photo : Naoko Taira

ステージ開始直後、地元のファンと友人、海外からのデリゲーツで、ぐっと密度の上がったライブハウス内。全編ほぼ新曲という事前告知もあり、期待値も高く、ワクワクの擬音が一人ひとりからみえるようだ。1曲ごと、演奏が終わるごとに上がる観客の熱に合わせて、徐々に照明がメリハリがついて派手目になる。
本人も「(抑えめな照明に反して)イケイケな照明」とMCで言っていたので、照明スタッフさんまでノリノリになる展開は予想していなかったのかもしれない。会場がそうならざるおえないくらい、盛況だった。

「タイムテーブル押してるから、ワンチャン見れる可能性に賭けて見に行こう!」と、ライター仲間と余韻に浸る暇もなく、本日最終演目のBirryrromに駆けつけるためミュージックタウン音市場へ。彼らの後半のステージに滑り込む。会場へ入ると、これぞMusic Lane Festival Okinawa !と言う景色が広がりニヤけてしまった。

Billyrrom @ Music Town

お手並み拝見、ではない景色

このフェスティバルはミュージシャンとデリゲーツを繋ぐ、というのが趣旨にある分、一般の観客にはとっつきづらさは否めない。けれどその分、意外なものが見られる。

「(観に来る人は)業界人が多いと聞いていたから、ふむふむお手並み拝見、と腕組みして見てる感じかと思ったら、みんなノリノリで驚いた」

出演後、ラジオ番組で自身のMusic Lane Festival Okinawaでのステージの様子をOvallのドラマーmabanuaはこうラジオで話をしていた。この言葉にあらわされるように、音楽に精通する手練れのデリゲーツ自身が、目の前のステージに絆されて踊り出す光景は他のフェスティバルではなかなかお目にかかれない。

メンバー6人の繰り出す饒舌なリズムとソウルに、観客はステップを踏み、”excellent!”、”hoo!”とあちこから掛け声があがっている。居ても立っても居られず、直立のまま楽しんでたまるものか!と無心で踊りだす人多数。

これだよ!これ!と私も友人そっちのけでフロア前方へ走り込み、まわりのデリゲーツたちとグッと来る瞬間は顔を見合わせ、笑顔になりながら腕を振り上げる。終演。力いっぱいのステージを終え袖に戻ろうとするメンバーに対する、沖縄の指笛と”アンコール!”、”ワンモア!”の掛け声。ライブ終わりのお約束ごとのような型としての掛け声ではない、もっと見たい!というパワーから発せられた賛辞。予想外のアンコールに、メンバーが舞台上で戸惑いながらもアンコール曲を相談し始める。“1曲だけ!”と人気曲Magnetを披露し1日目は終了。

会場の勢いそのままに、話足りないデリゲーツや出演者は今日もコザの商店街の酒場へ(やはりパワフル)

@SLUM BAR

かなりのボリュームになってしまったので、最終日のレポートは次回。

筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中 。
Music Lane Festival Okinawa2024の出演者を網羅したミュージックプレイリストはこちらから!(SpotifyAppleMusic

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