【Column】
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.17
閃きのフルコース!それとも闇鍋⁈
INSPIRATION OKINAWA 2024 ライブレポート 前編

 今回沖縄市で初開催のINSPIRATION OKINAWA 2024。出演アーティストは日本国内に留まらず、海外からも招聘され、出演者の奏でる音楽ジャンルもバラバラ。本当にフェスまるごと楽しむことができるのか、これから始まるのはメインディッシュだらけのフルコースか、はたまたスリル満点闇鍋か。私自身、過去参加した音楽フェスティバルでは体験したことのないスリルとチケットを手に、ミュージックタウン音市場へ。しかし蓋を開けると、初めて知ったアーティストが、目が覚めるようなステージを披露し、初めて聴いたメロディや演奏に胸打つ場面が幾度となくあるフェスティバルだった。結果、未知の味わい初体験!な豪華フルコース!
 17回・18回のコザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】はINSPIRATION OKINAWA 2024のライブレポートをお送りします♪
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【前編に登場するアーティスト】
▶ Kendy Suen ケンディ・スウェン
▶ 角舘健悟
▶ GANG PARADE
▶ SugLawd Familiar
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INSPIRATION OKINAWA 2024 スタート!

 入場開始前から、会場前の階段には色とりどりのマフラータオルを持った観客が開場を待ち構える。梅雨に入り高い気温と湿度の中、地元のフード出店のスタッフの皆さんは真心込めて調理の下準備やディスプレイの飾り付け。本日は16時から那覇行きバスの最終間際22時までの長丁場。イベントのテーマカラーにもなった紫のリストバンドを手に取り、会場に入るとまだ人の入りはまばら。観客はホワイエのソファで目当てが始まるまで色鮮やかな出店の商品を吟味したり、ドリンクを交換しフロアの拠点を見定めたりと思い思いに時間を過ごす。
 スペースに若干余裕のあるフロアは、最前エリアにも、中央にも、後方にも自分が見たいスペースを見つけることができ、自由度が高く自分のペースで楽しめるようになっていて居心地が良い。会場ギチギチにお客さんが入りその場から離れられないフェスティバルよりも、私は今日のような余裕がある方が嬉しい。

オープニングアクト:Kendy Suen ケンディ・スウェン from 香港

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

 定刻より少し遅れてのスタート。オープニングアクトは香港からKendy Suen ケンディ・スウェン。「いらっしゃい!」「良く来たね!!」と観客の温かな拍手に迎えられ、Kendy Suen ケンディ・スウェンが披露したのは、香港のラジオチャートで2位を記録した、白眉hakubi。日本語バージョンでの楽曲リリースもあるこの楽曲を、1番は日本語で、2番ではオリジナルの広東語と英語で披露。80年代歌謡曲の懐かしさの残るメロディと日本語歌詞で、耳に馴染みやすく、「聴いたことのない歌」から「日本語で歌われた歌」に変わったことで、客席フロアの余分な力みが程よく抜けた雰囲気になる。さらに彼女はMCで「めんそーれー!」と沖縄の方言と日本語、英語を駆使して観客との距離を詰めていく。 彼女の後ろを固めるのは、こちらも香港の新進気鋭のアーティストJ1M3とエレクトロ インストロックバンドCODEのメンバーら。
 ステージ最後に披露されたのは今月 6月リリース予定のShinka (進化)。掴めない夢とそれに足掻き前に進もうとするこの歌を、間違いない演奏に支えられ、芯のある歌声を存分に発揮したステージだった。
MCのありんくりんはステージ転換中のアーティストの舞台袖での様子やインタビューのこぼれ話を披露し、このシーンでは香港から来た観客から広東語のアクセントのレクチャーを受けるなど観客の笑いを誘う(彼らの話に夢中になるが故、ドリンクカウンターに飲み物を取りにいくのを忘れてしまうほどに)。

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

角舘健悟

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

フェス本編を前に会場には続々と人が集まってきた。本編トップを飾るのは角舘健悟。日本国内だけでなはく台湾、タイをはじめアジアの音楽ファンからも人気の高い自身のバンドYogee New Wavesの楽曲から沢山披露された。

 本イベントに出演するためタイからやってきたバンドH3Fと、過去Yogee New Wavesとしてタイで共演した際のバックステージでのやり取りも織り交ぜながら会場と積極的にコミュニケーションをとっていく。そんな角館はステージ中央、椅子に腰掛け、ギター1本の弾き語りスタイル。前日は石垣島のファンを沸かせた彼。ミュージックタウン音市場の大きな会場にいても、まるで喫茶店のカウンターで演奏しているかのようにA.Y.Aを鳴らす。

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

A.Y.Aを演奏し終えた直後、「音楽とお客さん(のフィーリング)が、未だばちっとあっていないから、フィーリングあわせて楽しんでいきましょう」と次の曲で観客を一気にフェスモードに引き上げる。SISSOUのテンポ速いギターリフが、先程の喫茶店の雰囲気から一気に梅雨の湿度をものともしない、心地よい風を感じる野外の舞台に佇んでいるかのように、ギター1本で空間を変化させる。声とギター1本、最低限の道具だけで、ばちっと会場とステージの温度感を整え、Climax NightやSunset Rownなどを歌い上げ、あっという間の時間だった。

GANG PARADE

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

会場で円陣を組むグループ、メンバーに合わせて踊る振り付けを確認する人、腕時計タイプのペンライトの通電確認をする人、この日のためにセットした自慢のヘアスタイルに乱れがないかを確認しあう女の子たちーこれまで私が経験してきた音楽フェスティバルでは見たことのない景色が視線に入り込む、私にとっても初体験が沢山あるステージだった。照明ライトがステージを照らし、音が鳴った瞬間から、色鮮やかなペンライトをつけた腕が観客席の四方から高々に空に向って上がり、観客の雄叫びとともに、GANG PARADEのメンバー13人が広いステージ所狭しと登場。間髪入れずオーディエンスと激しいコールアンドレスポンスが印象的なPlastic 2 Mercyで、会場を飲み込んでいく。

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

「わっはっは‼︎‼︎」
 思わずお腹の底から笑ってしまった。ステージから届く直列電流のようなパワーとそれに負けないほどのファンの気合いの圧で会場の空間が膨張するかのようなシーンの連続。汗をかくのはステージ上の彼女たちだけではない、彼女たちを応援する彼ら彼女らも、汗で表情が崩れるほど必死に歌い、踊る。手を抜くという選択肢は一切ないステージとフロアはさらに熱気を帯びていく。最後に披露したFOULが終わった瞬間、このフェスがまだまだ序盤であることに気がついた。このテンションのままで観続けるとフェス終盤、体力が尽きて立って居られるのだろうかと、全開になった自分自身のアドレナリンに不安になりながら、ドリンクカウンターに喉を潤すべく駆け出したのだった。

SugLawd Familiar

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

 全力疾走をとげたGANG PARADEのファンがホワイエへ引き上げる中、ステージ前方には地元沖縄のヘッズが続々、前方スペースの隙間めがけて入り込んできた。
 かく言う私もいい年してヘッズに混じって前方エリアで見ていたひとりである訳だが、すべてのフェスを観終えて改めて気が付いたー前方エリアにいる観客のバラエティの豊かさはダントツ彼ら。小学生の子どもから、高校生、子どもと共に並ぶ主婦、白髪まじりのオールドダンディまで、期待に満ちた表情で登場を待つ。Awichの全国ツアー帯同の忙しい合間をぬって沖縄に戻ってきた5人組ヒップホップクルーSugLawd Familiarが登場すると、老若男女それぞれが、ダウンでリズムをとりながら、彼らの煽りに反応して手のひら掲げ楽しむ。この音楽フェス出演直前に出演した日本国内最大のヒップホップ音楽フェスPOP YOURS 2024をはじめとした、全国の名だたる大きな会場で経験を積みキャリアを突き進むSugLawd Familiar。
 会場全方位に視線を向けステージからオーディエンスをよくみている。MC4人が舞台の下手上手ひっきりなしに立ちまわり煽り、前方フロア・後方フロア関係なくオーディエンスを奮い立たせる。耳馴染みの良いクラシックなビートに乗り、4人それぞれが得意とする言葉が粒だったフレーズや韻、リズム、心地よく崩しなだれ込み勢いづくヴァース。ヘッズでなくとも胸躍らせずにはいられない。

 終盤のReflectionからの2021年Spotifyバイラルチャート全国1位となったLonginessの観客の沸き方たるや!観客の笑顔も、5人の上気した笑顔もどちらも印象的なステージだった。

撮影:稲福秀淳 @shumz_mags

INSPIRATION OKINAWA 2024の後半のレポートは次回、コザの天ぷらVOL.18に続く
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中 。
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