【COLUMN】
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.32
沖縄にいるからこそ、注目しておきたいコラボ曲3選

  音楽フェスのマーケティングスタッフとして慌ただしく過ごしていた年末から、サクライがずっと取り上げたくてウズウズしていた内容で今回はお話していきたいと思っています。

 実は24年の暮れから、沖縄を拠点に活動するアーティストとアジア各国のアーティストがコラボした楽曲が立て続けにリリースされていること、ご存知でしょうか。コラボ曲好きとして、沖縄に住む音楽好きとして、放っておけないトピック。是非みなさんにも知って欲しい!ーということで、アジアとのコラボ(コライト)楽曲の沖縄編として3曲ご紹介していきます。

沖縄アジアなコラボ曲3選
| Awich, Jay Park, KR$NA, Masiwei & VannDa “ASIAN STATE OF MIND”
Rude-α, Skinny Brown “Do it”
Yun*chi & HMGNC & 宝生久弥 & カクマクシャカ “Love and Lust ~虹と雨~”

 Awich, Jay Park, KR$NA, Masiwei & VannDa “ASIAN STATE OF MIND”

 

沖縄のフィメールラッパーAwichがアジア各国の凄腕ラッパーと共に制作した1曲。かつて韓国アイドルグループ2PMに所属し現在ワールドツアー中の韓国のJay Park(박재범)、インドでヒップホップを確立させた重要人物KR$NA、近年のアジアの音楽を語る上で外せない音楽コレクティブ 88 risingとの契約をはじめ、アジアのヒップホップシーンのアイコンとなったヒップホップクルーHigher BrothersのメンバーであるMasiwei(馬思唯)、2024年パリオリンピック閉会式でステージを披露し、カンボジアの伝統音楽とヒップホップと融合させ独自のスタイルで影響力をもつカンボジアのVannDa(វណ្ណដា)
紹介文だけでお腹いっぱいになってしまう豪華さに驚くなかれ。“What you do it for ?”と、クセのある5人のトラップが1曲にまとまること自体が神業といっても他言はないはず。上手くまとめるだけではなく、Awichは女性として、沖縄のおかれる立場や歴史・文化をリリックに込め、Jay Parkは賛否をねじ伏せ己のスタイルを突き通す強さを、KR$NAはヒンディー語の特徴的な韻とリズムを英語を織り交ぜながら、インドと自身の歴史の重みを説く。Masiweiは中国内外の歴史的、政治的な様々な感情を代弁しながら中国ヒップホップの面白さと実力を見せつけ、参加メンバーの中で最も若いVannDaはカンボジア音楽とヒップホップどちらのレガシーも手に入れて、この国のためにやっていると唱い、若者のポップアイコンとして突き進む。最後にカンボジアの雅楽の音がキュッと引き締めるところは鳥肌が止まらない仕上がり。このトップスターたちが、アイデンティティを尊重しながらアジアとして団結していこうと歌う壮大な作品となっている。

Awich、この作品のリリースの余韻冷めやらぬ中、過去アジアツアーを一緒にまわったラッパーのJP THE WAVYとともに台湾の超人気SSWでありラッパーのØZIとのコラボ曲もリリースされている。こちらも見逃せない仕上がりとなっているのでチェックを忘れずに。

Rude-α, Skinny Brown “Do it”

 沖縄市出身のラッパーRude-αと、コロナ禍前からの旧知の仲の韓国のラッパーSkinny Brownの共作。ミュージック・ビデオは、日本・東京の冬の少し乾燥した空気感を含みとてもドラマチックな仕上がり。バンド活動などを経たRude-αの魅せるフロウは、ソウルやファンクに通じる高揚感を含み華やかだ。素直な言葉で綴られ、Rude-αらしいストレートで親しみやすいリリックは、歌に出てくる仮想の主人公の愛する相手を思うハートウォーミングさを十分に感じることができ、恋愛のあったかさと、映像の冬空のギャップがたまらなく愛おしさを感じてします。続くSkinny Brownの歌声は低音が響きビターでありながらも艶があり、やはりこちらもパートナーとの未来を想像し、2人で健やかに愛を育もうと紡いでいる。2人のスイートな歌詞にピッタリなビートトラックは都会的なスマートさのなかにも、くすぐったくなるような心あたたまる愛情のようなものを感じ、若い世代の恋愛模様を想起させる可愛らしい1曲だ。

Yun*chi & HMGNC & 宝生久弥 & カクマクシャカ “Love and Lust ~虹と雨~”

 インドネシアの3人組の人気エレクトロユニットHMGNCをプロデューサーに迎え、日本のクリエイターとともに制作されたコラボ曲。
日本からのジョインしたのはアニソンやJ-POPに強い女性SSWのYun*chi、アニメ•ゲームやCMソングなど広く活動する宝生久弥、沖縄のラッパー カクマクシャカ。この4組、全員がトラックメイクができる音楽プロデュースを行うマルチなクリエイター。HMGNCの持つ軽やかさと透明感のあるトラックに、Yun*chi は恋愛の思い通りにいかない様子を天候に例えた歌詞をキュートに歌い上げ、続くバースでカクマクシャカは落ち込むことはあっても、恋愛にはイリュージョンが起こる時があるが(それはまるで、虹がかかり無くなるように)いつかは開けると勇気づける。そして宝生久弥はそれをY2K(2000~2010年代リバイバル)のトレンドの流れを汲みつつ、懐かしさを感じさせるフレーズで曲をまとめあげており、聞き心地の良い作品になっている。
偶然にもラップ曲でまとまった3曲。コラボ相手のアーティストの楽曲から是非アジアのポップスやインディーズの作品を聴くきっかけにしてみてくださいね!ではまた次回!

筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 2025応援団
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中
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