注目のアーティスト
この作品に度肝を抜かれた。まずはミュージック・ビデオを見てほしい。
韓国のDanpyunsun and the Moments Ensembleの楽曲Independent。 ピアノのノクターンのようなしっとりとしたエチュードから、 突如特大のクラップ音が鳴り、 差し込まれる先程とは打って変わりガツンとしたフォルテッシモで 鳴らされる鍵盤と、ボーカルDanpyunsunの勇ましい“ 독립!”の壮行の掛け声。ここまでの展開までに楽曲は60秒を経過。1曲2分(なんならTikTok15秒)の音楽トレンドからかけ離れた斬新なアプローチに作品構成に私同様、魅了されたリスナーも多いと思う。
かけ声の“ 독립”は、日本語訳では“独立”の意味。 日本語訳だと少しニュアンスが変わってしまう気がしたので、 むしろ楽曲タイトルにある英語の“Independent” の方が作品の世界観を表すのには良いかもしれない。
自分自身の孤独に向き合うこと、その(自分の中での) 自己探究に立ち向かおうとする勇ましさを、悲観せず、皮肉らず、 翻弄されながらも自分で求めていこう、と歌う。 この曲は自分自身のインディペンデント( 支配されようとしない気持ちへの)な応援歌だ。
ミュージック・ビデオはサイケデリックな異世界感から始まり、続くモダンダンスと掛け合わせた、自と他の境界の曖昧さと、はっきりすることで自覚せざるおえない苦しさを視覚化する。映像のストーリーが進むにつれ掻き鳴らされるギターは、 苦悩の傷跡をみるようだ。 さらに激情的なバイオリンの音色の相乗効果もあり、 よりアヴァンギャルドな印象として心に刻まれる。 最後には解放されることを表現するかのようにリラックスしたヨガ を楽しむシーンで締め括られる。怪作、 そして突出したオーケストラロックの名曲だと思う。
Danpyunsun and the Moments Ensembleについて夢中になって調べてみると、彼らは今年で22回を数える韓国大衆音楽賞(Korean Music Awards / 한국대중음악상)で、最多6部門ノミネート、そしてこの賞の中で、最も栄誉のあるベストアルバム賞、最優秀モダンロックレコード賞を受賞していることを知る。
収録されているのは美しいメロディと、大衆の心を揺さぶる政治性のあるソングライティング、様々な視点から音楽のあり方を考えさせられるアルバムとなっている。今回紹介した作品以外の収録曲も是非聞いてみてほしい。
この音楽賞、他の部門受賞者も併せて確認していくと、日本でも人気のK-POPアイドルグループaespaやILLIT、今だに世界中にインパクトを残す楽曲“APT.”をブルーノ・マーズと共に歌うBLACKPINKのROSÉ、今年のフジロックフェスティバルへの出演予定のバンドSilica Gel、など日本でも話題の名前が並んでいた。この連載は実は日本でアジアの良曲を紹介するだけではなく、アジアの音楽の見つけ方を紹介したい、という意図も込められた連載。今回、この作品を見つけたことで、私自身、韓国大衆音楽賞のニュースに辿り着き、音楽の見つけ方のアイデアがまたひとつ自分の中に蓄積できる機会になった。
国名×音楽賞で、各国にどんな音楽賞があるのかを調べた後は、何をしてみようか?
(音楽好きが作った韓国大衆音楽賞のノミネート曲playlist)
音楽賞ともなると、ノミネートの段階からApple musicやSpotifyなどの音楽サブスクリプションで公式playlistや用意されていることも多く、さらに各国の音楽好きのplaylistも見つけられるので、非常に興味深くウォッチできます。テレビ番組に“池の水ぜんぶ抜く”というタイトルの通りの番組がありますが、それをもじって“音楽賞の曲、ぜんぶ聴く”にチャレンジしてみる、っていうのはどうでしょう。全曲通さずともザッピングで30秒・1分…楽しみ方は人それぞれでOK。好きなアーティストのアルバムをまるっと1枚聴くように、受賞曲のplaylistをきいてみる。そうしていくといくつか、自分の好みの作品が見つかるはず、そこから更に深掘りしていく、おすすめです!まず、日本のそれからやってみる?
日本でも海外の音楽ファンも視野に入れた音楽賞が出現しはじめていて、沖縄の音楽フェスMusic Lane Festival Okinawaに参画している音楽のプロ(デリゲーツ)が発起人となり2024年に始まったTOKYO ALTER MUSIC AWARDや、日本の音楽業界関係者が選ぶMUSIC AWARDS JAPANが2025年から立ち上げられたりしています。 あともう一つ、海外と日本、の視点で捉えるとASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が2018年に設立し、 若手ミュージシャンの支援を目的とした音楽賞 APPLE VINEGAR Music Awardなども抑えておきたい。なぜならASIAN KUNG-FU GENERATIONが今年2025年夏に主催する音楽フェスNANO-MUGEN FES.は、日本だけではなく、 インドネシアでも開催が決定していて、 アジアの中の日本の音楽シーン、を意識できる(気がする)から。
まずはこの3つの音楽賞のplaylistから1つ、“ぜんぶ聴く”をぜひ楽しんでみてください。さらに、“アジアの音楽フェス出演者ぜんぶ聴く”など、工夫をして独自の楽しみ方を見つけてみてくださいね。
それにしても、昨年から音楽賞の設立はじめ、アジアのアーティストの来日公演のお知らせや日本のアーティストの海外公演のニュースを頻繁に見るようになり、日本でも音楽の海外発信のまた1段階、フェーズが変わったと感じていて動向からどんどん目が離せません。また、日本とアジアの音楽トレンドを発見したらどんどんご紹介していきますね。それではまた次回!
それにしても、昨年から音楽賞の設立はじめ、アジアのアーティストの来日公演のお知らせや日本のアーティストの海外公演のニュースを頻繁に見るようになり、日本でも音楽の海外発信のまた1段階、フェーズが変わったと感じていて動向からどんどん目が離せません。また、日本とアジアの音楽トレンドを発見したらどんどんご紹介していきますね。それではまた次回!