私はずっと見誤っていたのかもしれない。アジアの音楽に興味を持ってくれる人ってどんな人だろう、まず音楽が好きな人。この軸がないと話が進まない。次に、私が考えていたのは、これまで音楽フェスやライブに行き慣れた人ー本当にそうだっただろうか。TikTok でインパクトの強いバズった楽曲に日本国内でも反射的に反応はあろうとも、未だに国際通りのお土産品店の店先や、ショッピングセンターの店内でK-popや英語圏の洋楽以外の楽曲が流れている様子はみられない。
そんな中、Music Lane Festival Okinawaで出会った友人とチャットをしていて
“旅先での予想外の出来事って、何故かその旅のハイライトになったりしない⁇”という話になった。はっとした。私が見落としていたのはこの視点ではないだろうか。
海外に限らず、旅先で買い物したら少しおまけをしてくれたり、思いがけない地元のイベントに参加したり、ふらっと入ったお店のご飯がおいしかったり。
Alien City Roast ( feat.Shin Sakiura ) / ぷにぷに電機
Alien City Roast ( feat.Shin Sakiura ) / ぷにぷに電機は、昨秋音楽フェスに訪れた際の台湾 台南市のハンバーガーファーストフード店で流れていた1曲。騒がしい店内に、洗練された日本のシティポップの軽快なメロディと耳に残るギターのフレーズ、低く擦れた透明感のある声色が印象的な日本語の女性ボーカルが流れてきた。好きな楽曲が異国で流れている予想外な喜び。自分の経験を振り返ってみても、確かに思い出と楽曲がリンクする経験は記憶に「強めに」刻まれるようだ。
好不容易 / 告五人
一方こちらは、沖縄 那覇市の観光客にも人気の観光スポット 国際通りのドラッグストアにいたときに店内に流れていた、台湾の男女3人組 超人気バンド告五人(Accusefive)の、ドラマ主題歌にもなった大ヒットナンバー。サビの綺麗なハーモニーが特徴の透明感のあるポップミディアムバラード。実はこの楽曲は後に、俳優やシンガーなどマルチに活躍するディーンフジオカが日本語歌詞をつけ、ディーンフジオカと共に歌う日本語バージョンが存在する。(告五人は日本語での歌唱にもチャレンジした意欲作)。
晴れの日(晴天)/ 告五人 feat. Dean Fujioka
前述のドラッグストアで流れていたのは後に紹介した日本語バージョン。目の前にいた台湾からの観光客は、馴染みのあるイントロを海外のドラッグストアで聴くことになりびっくり&日本語で歌われている歌詞に2度びっくりしていた。
私も台湾で経験した予想外な出来事が、誰にでも起こることを目の当たりにした出来事だった。
夜别 / 马頔(Ma Di) · ハンバート ハンバート
最後にご紹介するのは、25年のNHK秋の朝ドラ主題歌にも決定している夫婦デュオ ハンバート ハンバートが中国のSSW 马頔(Ma Di)とコラボ(コライト)した1曲。タイトルは日本語で“夜にさようなら”
フォークを基調として、クラシカルなピアノとギターの旋律が室内音楽的な要素に夜を強く印象づける中、中国のSSW马頔Ma Diの凛とした清らかなボーカルメイク、さらに続くハンバートハンバートの2人の男女のユニゾンによって柔らかさもありながら神秘な情景が広がる1曲。シンプルながらに澄んだストリングスも印象的です。日本の人が海外旅行中につける日本のテレビチャンネルにホッとするように、海外から日本に来た人が、現地のテレビのチャンネルを点けた時に马頔Ma Diが好きな旅行者がハンバートハンバートに出会うことがあるかもしれない。そんな誰にでも起こり得る何気ないワンシーンが、日本のまだ聴いたことのない作品に触れるきっかけになってほしいなと期待を込めて。読んでいるあなたの生活の中にも予想外、思い出にリンクする素敵なアジアな楽曲に辿り着いてみてくださいね。
筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 2025応援団
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中