めくるめくタイインディーズの世界
第5回「タイでファンを獲得するためにしておきたいこと」

前回は「コロナ禍の今のうちに海外進出に向けてやっておきたいこと」と題し、まずは自己プロフィールを作成し海外進出の機会に備えておきましょう、といったことを書きました。

 

めくるめくタイインディーズの世界 第4回「コロナ禍の今のうちに海外進出に向けてやっておきたいこと」

 

今回も引き続き、海外進出のための参考情報として「タイでファンを獲得するためにしておきたいこと」について綴りたいと思います。タイ進出を目指す音楽関係者、特にDIYで活動しているバンド・アーティストの方にとって、有用な情報になれば嬉しいです。

 

どんなに良い音楽を作っていたとしても、その音楽が広まらなければ誰にも知られないままです。

ボクは日本で音楽活動しているときから現在に至るまで、ずっとDIYで活動しています。もちろん、朝から晩まで御礼して周っても時間が足りないくらい大変多くの方々にお世話になっていて、そのおかげで今も継続して活動できているので、常に感謝の気持ちを持ちつつ、DIYにこだわって活動しています。

 

DIYで活動をするにあたって、常に思っていることのひとつとして、「音楽を作ることと、作った音楽を広めることは両輪だ」というのがあり、この両輪が揃わないと上手く前に進みません。

「音楽を作ること」は、例えば曲を作る、練習する、ライブをする、レコーディングするといった、ミュージシャンとして当然おこなうべきことを指しています。

「音楽を広めること」については、マーケティングやプロモーション、営業(ライブやフェスのブッキングを取ってきたり)、企画(ライブイベントを企画したり)などを指します。レーベルに所属しているバンド・アーティストであれば、この部分をレーベルにお願い出来ますが、DIYでやっていくとなると、基本的には自分達でおこなわなくてはなりません。

広めること自体はミュージシャンとしての本分ではないので、どこまで費用と時間を割くのか、というのはそれぞれの目指すところで異なります。ただ、広める範囲は別として、まずは知ってもらい、ゆくゆくはファンになってもらう、という流れ自体は変わりません。

 

自分たちを知ってもらうためにはどうすればいいか。

自分たちの楽曲を聴いてもらうためにはどうすればいいか。

自分たちのライブを観てもらうためにはどうすればいいか。

自分たちのファンになってもらうためにはどうすればいいか。

 

日本国内向けに広めることも難しいのに、海外向けに広めていこうとなると、勝手もわからず、より大変かと思います。ボクの場合はタイのことしかわかりませんが、タイへの露出や進出を考えている方々に、タイでファンを獲得するにはどんなことをすればいいのか、当コラムでなんとなくでも掴んでもらえれば幸いです。

日本とタイとではよく使われているSNSだったり接触メディアだったり異なる点も多々あるので、そういった相違点も含め、お伝えできればと思います。

 

タイでのファン獲得までの施策モデル (ざっくり版)

ファン獲得に至るまでの道のりを、大きく2段階に分けています。

「認知度向上」「エンゲージメント強化」です。

まずは「認知度向上」「知らない」を「知っている」状態にする段階です。

この段階では、楽曲やMVに触れてもらえる機会を増やし、自分たちを知ってもらえるような活動をしましょう。

具体的な例を挙げると;

 

・タイでよく使われているSNS(後述します)で広告を打つ

・現地の音楽系メディアを探してPR送って記事を書いてもらう

・現地のラジオ局に曲を送ってオンエアしてもらう

・プレイリストに入れてもらえるようプレイリストオーナーと交渉する など

 

そうすることで、まず、「知らない」から「知っている」という状態になってもらい、さらに、タッチポイントを多面化することで何度も触れてもらう機会を作り、何度も触れているうちに気になるようになってもらい、SNSのフォローをしてもらえるまで持っていければ上々です。

タイの方は比較的気軽にSNSをフォローしてくれるので、上記のような方法だけでもフォローしてもらえると思いますし、キャンペーンを張ればフォロワー獲得がより容易になります。例えば、新曲のMVをYouTubeでリリースした際に「オフィシャルSNSをフォロー&MVをシェアでCDプレゼント」みたいなキャンペーンを実施したりすると、一気にフォロワーもMV視聴数も増えます。

 

なお、Music Lane主催のオープンレクチャーで、まさに認知度向上施策を考えるうえでぴったりの講座が企画されているみたいです。

2021年11月16日(火)にミュージックタウン音市場にて、参加費無料(定員:50名)での開催とのこと。

ボクもものすごく参加したいのですが、身がバンコクなので難しそうです。しかもライブ配信はないとのことで、運よくミュージックタウン音市場に足を運べる方は、後日、こっそり内容を教えてください。

Music Lane Open Lecture Vol.4「海外のファンベースを獲得するインターネット広告基礎講座」

 

そして、「エンゲージメント強化」

SNSの発達により、それまでは一方通行だった情報の伝達が双方向化しました。認知度向上の段階では、どちらかというと一方通行な情報伝達の側面が強いですが、SNSをフォローしてもらった後は主戦場をSNSに移し、双方向のコミュニケーションを繰り返すことでエンゲージメントを強めてファン化を促す、といったところまで持っていければと思います。

 

オフィシャルSNSページをフォローしてもらえると、継続的にフォロワーとやり取りできる機会ができ、継続的にやり取りできるとエンゲージメントが強まることが期待できます。

Facebookページへのコメントに「いいね」してくれた、オフィシャルアカウントでリツイートしてくれた、インスタライブでコメントを読んでくれた、YouTubeプレミア公開でMVを一緒にリアルタイム視聴した、グッズをタイへも送付してくれた、オンラインライブでリクエスト曲を演奏してくれた、など、双方向のコミュニケーションを繰り返していくうちにエンゲージメントが強まる=ファンになる可能性が高くなります。

そうなれば、いつか実際にタイでライブをやることになった際の集客や、会場でのグッズ販売にも期待ができるでしょう。行き来ができない現在でも、グッズについては越境ECという方法もありますし、ライブについては無料有料に限らずオンラインライブを視聴してもらえる可能性があります。

SNSへのポストは、タイ語でできればベストですが、せめて英語で。ちなみに、Google翻訳は、日本語・タイ語間の翻訳は精度がかなり悪いので、あまりお勧めしません。

 

以前、とある日本のバンドがタイにライブをしに来るということで、そのバンドのFacebookページの運用をサポートしていたことがあります。ポストするコンテンツとアートワークの制作、キャンペーン企画の立案・実施など、全般的に受け持っていました。

まずは認知度向上のため、来タイライブ前にSNS広告を配信しつつフォロー&シェアキャンペーンを打ってフォロワー数を増やしました。2ヶ月弱でフォロワー数は6倍以上となりました。

その後はSNSページを頻繁に更新し、楽曲やライブ情報に触れてもらう頻度を上げ、ときにはバンドメンバーからのメッセージ動画を日本から送ってもらい、こちらでタイ語翻訳・テロップを付け、認知度を上げつつ親近感を持ってもらい、ライブへの集客を目指しました。

ここで得られたフォロワーは、もちろんボクのサポート後にも有効に活用できます。新曲のMVが完成した際には、Facebookにアップすれば、特に意識することなくタイのファンにも届きますし、次回のタイツアーが決まった際には、すでにフォロワーとなってくれているタイのファンにライブ情報を容易に届けることができるようになります。

 

タイのインターネット・SNS利用状況

タイのファンを獲得するためには、SNSを有効に活用するのが重要だということは理解いただけたかと思います。

では、具体的にタイの人たちはどんなSNSを使っているのか。まず、どういうメディアに接触しているか、といったことから見ていきましょう。

 

タイの方々は、1日のうち約9時間インターネットを利用し、テレビ視聴は3時間半。24時間のうち睡眠を7時間、起きている時間を17時間とすると、起きている時間の実に半分以上をインターネットに費やしていることになります。またそのうちの約3時間をSNSが占め、ストリーミング型の音楽配信サービスの利用は1時間半ほど。

参考までに日本のデータを載せますが、日本はどの項目もタイより少ないです。

 

こちらのデータの通り、タイ人が一番長く接触しているメディアはインターネットである、と言えるかと思います。

広告媒体としても、ネット広告は予算の融通が利きますし、音源やMVを流すといった行為と親和性の高い媒体です。また、繰り返しになりますが、とりわけSNSについては双方向でフォロワーとコミュニケーションができるという特徴があるので、エンゲージメント強化に期待ができます。しかも、基本的には無償で利用できます。

いきなり大きな予算を割いて海外向けにプロモするのはリスクがあるかと思います。タイ進出を相談いただいたレーベルや企業やバンド・アーティストには、まずは少額でも実施可能なSNS広告・SNS運用から始めることをお勧めしています。

 

2021年1月時点でのネット利用率ですが、タイは人口の約70%、日本は93%がインターネットを利用しています。

ただ、SNS利用率になると、タイは人口の約79%、日本は約74%です。SNS利用率をインターネット人口対比で見てみると、タイは110%超え、日本は約80%です。タイが人口比100%を超えているのは、一人が複数のアカウントを所有していると考えられます。

よく、タイはSNS大国と言われますが、先程のSNS利用時間の多さからも、実際にSNSに触れる機会が多いことが裏付けられます。

 

では、どのSNSがよく利用されているのか。

 

ここが日本と大きく異なる部分になるのですが、タイで最もよく利用されているSNSはFacebookです。続いてInstagramとなります。日本ではSNSはTwitterが多くて、そのあと、Instagram、Facebookの順です。

動画プラットフォームはYouTube、チャットツールはLINEが主でして、ここは日本と同じです。

 


SNS利用者としては、10代後半~40代前半がボリュームゾーンで、40代後半以降になると少なくなります。

この調査では、ツールごとの年齢分布が記載されていないのですが、以前調べた限りですと、Instagramの利用者層は若年層が多かったです。なので、ツールごとの年齢分布は日本と近しいのかと思っています。

 

音楽ジャンルによってターゲットとなる年齢層は異なりますが、だいたいは、このボリュームゾーンに収まるのではないかと思うので、タイ国内においてプロモーション活動をするのであれば「Facebook」「Instagram」「YouTube」の活用は必須だと言えます。

実際に、タイ国内のバンド・アーティストも、この3つについては基本的にはアカウントを持っており、また、ストリーミングサービスもほぼ全てのバンドが登録しています。なかには、LINE公式アカウントをファンクラブ的に運用しているアーティストもいます。

 

まとめ

ざっくりと「タイでファンを獲得するためにしておきたいこと」を解説しました。まずは認知度高めて知ってもらう、そしてエンゲージメントを強化してファンになってもらう、という流れです。

やる前は「大変そうだなぁ」と感じるかもしれませんが、まぁ、実際に大変ではありますが、やっていくうちにタイからのフォロワーが増えたり、タイ語のコメントが寄せられたり、ストリーミングサービスやYouTubeでのタイからの視聴回数が上がったり、そういった反応があると俄然やる気が漲ってくるはずです。

繰り返しになりますが、今はコロナ禍のため、海外との行き来が容易ではありません。ただ、いつかは行き来が容易にできるようになり、現地に赴いてのライブやファンとの触れ合いができるようになるはずです。

なので、今のうちから、まずはオンラインで、そのうちオフラインで、皆さんのタイへの進出、お待ちしております。

 

※Music Lane連載との連動プレイリスト「めくるめくタイインディーズの世界」も合わせてどうぞ。

 

 

■執筆者紹介

Ginn

タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。

 

●dessin the world

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