沖縄のオルタナティブ・ロックバンド、the youのアルバム「by now」が、2022年3月16日にリリースされる。
昨年2月から毎月1曲ずつ配信で発表されてきた10曲が、1枚の作品として形になるわけだ。サブスクリプションが席巻する音楽業界の中にあって、アルバム1枚をじっくりと聴くリスナーは少数派になっているともきく。シングルとして配信リリースすることは、ある意味では今の時代にマッチしたやり方ともいえる。しかし、バンドとして目指したのは、アルバムとして作品を世に送り出すこと。
コロナ禍を挟んで、本作のリリースに至るサイドストーリーを、リーダーの伊禮勇希に自身の言葉で綴ってもらった。
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「by now」。
コロナ禍、乱高下する心の中から 生まれた珠玉のアルバム
Text:伊禮勇希 (the you リーダー)
今から5年前、2017年。the youはEP「vein」をリリースした。二度目のモンゴルPLAY TIME FESTIVALにも出演。バンドキャリア13年目にしてこれまでにない程勢い付いていた。精神的にもかなり充実し、早くも次のアルバムに向け頭の中では色んなアイデアが渦巻いていた。
ライブやイベント出演と平行して曲作りを続け、いよいよニューアルバム制作に入る目処が立った。2019年11月からレコーディング準備の為にライブ活動を一旦停止。スタジオリハに集中した。
2020年2月、いよいよレコーディングスタート。しかしこの頃からコロナの影響が出始めた。まさかそこから現在に至るまで、2年以上もバンド活動が制限されてしまうとは夢にも思わなかった。
レコーディングはかつてない程難航した。その間、周囲の音楽界隈ではライブハウスを救おうとする動きが多発し、バンドやミュージシャンが声を上げ地元の音楽シーンを守ろうと行動を起こしていた。
the youはコロナ禍において有観客ライブをしないという決断をした。インディーズバンドにとってこれは活動休止状態に等しい。馴染みの音楽関係者が窮地に立たされ、何度もステージに立ったライブハウスが無くなっていくのを傍観しているだけの状態は精神的に非常に暗い気持ちになった。腹を括りコロナ禍でもライブを続ける決意をしたミュージシャン達のエネルギーは相当なものだと思うと同時に、止まり続けるというのもまた同じぐらい踏ん張る力のいる事だと感じた。
鬱屈した感情を抱えながら、今出来ることはレコーディングに打ち込む事だけだと自分に言い聞かせ続けていたある夜の事。家族が寝静まったのを見計らい、好きな音楽をヘッドフォンで聴いていた。ランダム再生していたプレイリストから、大好きなUKバンド「the verve」の名曲「sonnet」が流れた。学生時代から聴き続けてきた曲だけど、歌詞を気にした事が無かった。この時なぜか、エンディングで何度も何度も繰り返されるワンフレーズの歌声に心が震えた。曲を聴き終え、ワンフレーズの英語歌詞を辞書で調べ意味を知った瞬間、この言葉をアルバムタイトルに付けようと決めた。「by now」
これまで自分はバンドを続ける上で次の事ばかりを考えてきた。次のライブは、次の新曲は、次のアルバムは…。まだ足りない、もっと先に行きたい。そればかりを考えていた。今まで自分がやってきた事や歩いてきた道のりを思い出混じりに振り返る事は、まだ物足りなく感じている現状にOKを出してしまうような思いがあった。でも、今までがあるから今があり、これからがやって来る。そう思える事が出来た。良き理解者に囲まれ、恵まれた環境の中で好きな事に打ち込める。こんな幸せな時間を過ごして来て、それを自覚出来ていなかったのだと気付いた。真夜中に一人、呆然とした。
レコーディングは押しに押し、 2020年11月にやっと完成。相変わらずコロナ終息の兆しは感じられなかった。by nowという言葉に出会えていなければ、ただふて腐れ、あてもなく発売を先伸ばししていたかもしれない。逆に何のプランも無く勢い任せでリリースしていたかもしれない。2021年、アルバム収録全10曲を配信シングルで10ヶ月連続リリースするというやり方に舵を切れたのは、いつまで続くか分からないコロナ禍に、バンドが地に足付けて正面から立ち向かう覚悟を持てたからだ。
2022年3月16日、やっとCDアルバムとしてリリースをする。これからライブ活動がどのぐらいのペースで出来るのかは分からない。でも、ここまで進んで来れたんだから大丈夫。きっと光は見えて来るはずだと今では腰を据えて信じる事が出来る。
心境がジェットコースターのように乱高下を繰り返したこの2年間。色んな思いが詰まった我々the youのニューアルバム「by now」をぜひ聴いてほしい。
◎New Release
the you
「 by now 」
収録曲 / Tracks
1.ignition point
2. silent escalation
3. 水鏡-water mirror-
4. 冬の汽笛 -winter whistle-
5. old tears
6. back of eyelids
7. i didn’t know
8. not my monkey , not my circus
9. far side
10. by now
https://www.tunecore.co.jp/artists/theyou
the you (L→R) 浦崎直哉 / Naoya Urasaki (Drums) 伊禮勇希 / Yuki Irei (Vocals / Guitars) Zunari (Guitar Chorus) 田川俊一郎 / Shunichiro Tagawa (Bass / Chorus) 2004年、伊禮を中心に結成。 二人組ユニットから始まり、度重なるメンバーチェンジを経て4人編成バンドとなった。 2009年に1stミニアルバムを発表して以降、3枚のミニアルバムと1枚のシングル、2枚のフルアルバムをリリース。 ライブでは地元沖縄でオーシャンレーン、ブラフマン、キセル等と共演。 2016年6月、モンゴル最大のロックフェス、PLAY TIME FESTIVALに出演。The Radio Dept.(スウェーデン)と 共演。 2017年7月、2年連続でモンゴルPLAY TIME FESTIVALに出演。11月、来沖したLITEと2マンライブを行った。 2018年3月、配信限定シングル「月ぬ美しゃ」をリリース。 2020年7月、コザミュージックタウン音市場にて無観客配信ワンマンライブを行う。 2021年、10ヶ月連続配信シングルをリリース。 2022年3月16日、アルバム「by now」をリリース。 -English- Formed in 2004 with Irei as the central member. The chord work and exquisite melodies that touch your heart and the overlapping chorus ensemble create a strange floating feeling, and the band's groove is supported by bass. To date they have released two mini albums, one single, and two full albums. In 2016, they appeared at the Playtime Festival in Mongolia.Their new mini album 'vein' has been released in January of 2017.
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