【リポート】沖縄から発信する優位性とは?
デジタル配信の時代、
日本で最も可能性のある沖縄から発信する意義
ーMusic Lane Open Lecture Vol.6

 

 

2020年代、ドラマティックに変化を続ける音楽シーンにおいて、あなたの音楽を、沖縄からより広く、より遠く、より多くの人に届けることを目指すレクチャー第6弾が、2022年2月15日(火)、16日(水)の2日間、てんぶす那覇3F会議室とミュージックタウン音市場で開催されました。 

 

講師は、音楽プロデューサーでStudioENTRE(株)代表取締役、経産省「ブロックチェーン技術を活用検討会」委員、大阪音楽大学「ミュージックビジネス専攻」特任教授などと多彩に活躍する山口哲一氏。 

 

「デジタル配信の時代、日本で最も可能性のある沖縄から発信する意義」をテーマに、「『東京中心/日本市場完結』の音楽ビジネスから『デジタルとグローバルの時代という環境変化』、「沖縄から発信する優位性とは何か?」、「沖縄音楽をどうブランディングするか」など、約2時間レクチャーしました。 

 

 

 

本講演主催のMusic Lane OkianwaよりMusic Lane Okinawa webサイトの案内の後、さっそく山口氏の講演がはじまりました。 

 

山口氏は、大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、1989年に「株式会社バグ・コーポレーション」を設立。「SION」「村上“ポンタ”秀一」などのマネージメントや、「東京エスムジカ」などのプロデュース&デビューに導く。時代の変化に鋭敏に対応し、音楽ビジネスとITに関する実践的活動も行い、2010年頃から著作活動を開始。「新時代ミュージックビジネス最終講義」ほか著書は約10冊。メディアアート作品のクリエイティブ・ディレクターとして受賞歴があるほか、デジタル時代に対応した人材育成にも積極的に取り組んでいます。2020年8月エンターテック分野の起業家育成と新事業創出を行うStudioENTREを設立。2022年4月開講、大阪音大ミュージックビジネス専攻特任教授に就任。 

 

沖縄とのご縁は約20年前。山口氏がプロデュース&マネージメントしていた「東京エスムジカ」でFM沖縄、琉球放送にお世話になり、デビュー前にフジテレビ「めざましTV」で石垣島から生ライブもやったこともあったそうです。 

 

「沖縄は門外漢なので、勘違いなどがあったらご指摘ください。マクロ的に外から見たときの沖縄音楽界の可能性を独断でお話します」と前置きし、本題に入ります。 

 

 

 

前半の「音楽ビジネスの根本的な構造変化を知ろう~『デジタルとグローバルの時代』という環境変化」というテーマでは、①デジタル化・クラウド化 ②SNSがインフラに ③音楽糸場のグローバル化 ③音楽市場のグローバル化 ④デジタル化進展による音楽創作、制作の変化と、そこから起こる権利分配のルールの変化の4つの大きな変化を紹介しました。 

「日本以外の世界各国のレコード業界(録音原盤市場)はデジタル化の進展、特にストリーミングサービスの普及が音楽市場を復活させており、コロナ渦でも伸長を続けているが、日本のレコード業界は長期低落が続いている」と話します。 

世界のトレンドから見る日本の後進性について、「サブスクリプション型ストリーミングサービス普及の遅れ」、「デジタルマーケティングの遅れ」、「グローバル市場進出の遅れ」と、3つの致命的な遅れがあると分析し、音楽ビジネス生態系UPDATEのための処方箋をあげました。 

 

「音楽ビジネスにおいて、創作/原盤制作、流通/マネタイズ、ユーザーへの宣伝/拡散などすべてのプロセスにおいて『個人へのパワーシフト』が強烈に進んでいる。環境の変化にもとづく変化なので、どんどん加速シていく。不可逆的な流れとの認識が必要。昨日までのやり方は明日から通用しないという心構えが必要です」と話します。 

 

 

 

後半は「『東京中心/日本市場完結』の音楽ビジネスから『デジタルとグローバル時代』という環境変化~沖縄から音楽を発信することが有利な理由」をテーマに展開。山口氏は「ここからは私見です。沖縄を知らないから言えるという前提で聞いてくださいね」と前置きします。 

 

音楽ビジネスの制作、宣伝、販売、ターゲットという一連の流れをあげながら、「沖縄のアーティストが成功するために『東京経由』する必要がなくなった。『個へのパワーシフト』によって、大きな組織に頼らずに、アーティストがグローバルに自分のファンを見つけられるようになり、またファンが見つけてくれるようになった」と山口氏。 

 

さらにデジタルとインディーズの親和性を紹介。「文化的なバックボーンと歴史がブランド」、「多様な音楽の蓄積」、「沖縄人としてのアイデンティティを持つ音楽家の系譜」、「観光地としての魅力」、「インディーズアーティストの活動が成立している」などと、次々と沖縄から発信する優位性を話します。 

 

ほかにも、OKINAWA音楽のブランディングを考えるために大切なことや、インバウンドというマネタイズポイントについて追求。すぐにはじめられることとして「OKINAWA楽曲のキュレーションとOKINAWAブランディングの確立及び継続的な向上」などを上げ、「仲間割れや足の引っ張り合いをしないこと、目先の売上や補助金での収益を狙わないこと」などを注意点として話します。 

そして最後に「まずは自分の曲が売れること。高い視座から将来的で継続的な収益を目指すことをやること」と〆ました。 

 

 

今回、レクチャー全体を通じ参加者よりたくさんの質問が上がりました。 

「日本が遅れている理由」、「個人がSNSでプロモーションする方法」、「国からの支援について」、「コロナ渦で何が変わった?」、「今から音楽業界に就職したいが、どうか?」などと参加者からの活発な質問に、山口氏は1つ1つ丁寧に答え、他参加者もメモを取る様子が見られました。 

 

次回のレクチャーVol.7は2月21日(月)、22日(火)。 

「SNS全盛の今、必要不可欠なPRマインドについて考える」をテーマに、田中デイビーズ智子」氏が登壇します。「PRとはナニか?」、「時代はプロモーションからパブリックリレーションへ」、「メディアに取り上げてもらうことの意味」などをテーマにレクチャーします。乞うご期待を! 

 

 

 

講師プロフィール
山口哲一 / Norikazu Yamaguchi
StudioENTRE代表取締役 / 株式会社バグコーポレーション代表取締役
大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻特任教授 / iU超客員教授

1964年東京生。事務所社長兼音楽プロデューサーとして「東京エスムジカ」など
多くのアーティストをメジャーデビューさせる。日本音楽界のデジタル化の遅れに
危機感を覚え、2011年頃からエバンジェリスト活動を開始。著作活動、人材育成
事業を行い、経産省の委員なども務める。プロ作曲家育成「山口ゼミ」は150人以
上を育成。卒業生はコーライティングを活用して海外交流にも積極的な次世代型ク
リエイターチーム「Co-Writing Farm」として活動している。2020年にエンター
テック領域で起業家育成と新規事業創出を行うスタートアップスタジオ
StudioENTREを設立、代表取締役に就任。著書多数。

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( Text:小鍋悠 / Haruka Konabe

 

 

 

 

 

 

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