めくるめくタイインディーズの世界
第14回「Music Lane Festival Okinawa 2023」参加レポート 中編

 

去る2023年2月17日~2月19日の3日間、沖縄のコザにてインターナショナルショーケースフェス「Music Lane Festival Okinawa 2023」が開催された。

Music Laneを含めたショーケースフェスへの参加に興味のあるバンド・アーティストの方に向け、「こういう雰囲気のイベントなんだ」「こういう人と会えるんだ」「こういうチャンスが得られるんだ」というのをなんとなくでも掴んでもらうため、自分が体験したことを参加レポートとして記しておく。今回はその中編をお届け。

※前編・後編はこちらより

めくるめくタイインディーズの世界第13回「Music Lane Festival Okinawa 2023」参加レポート 前編

めくるめくタイインディーズの世界第15回「Music Lane Festival Okinawa 2023」参加レポート 後編

 

2月18日

1on1ミーティング

Music Lane Festival Okinawa 2023、初日。この日は1on1ミーティングから始まる。

1on1ミーティングとは、参加バンド・アーティストやレーベル関係者がデリゲーツに個別相談をするミーティング。相談内容は多岐に渡り、ただ、イベントの性質を考えると当然なのだが、海外進出についての相談が主であった。

 

 

タイでライブをやるためにはどうすればいいか、(タイのバンドが)日本でライブやるためにはどうすればいいか、といったざっくりしたものから、自分の音楽と親和性のあるタイのレーベルはどこか、自分の音楽をタイで広めるにはどうすればいいか、自分の音楽とコラボできそうなタイのアーティストは誰か、バンコクでライブのブッキングをするためにはどうすればいいか、タイツアーは既に経験済みだが次のタイツアーではどう攻めるのがいいか、などなど次の一歩に結びつきそうな具体的な相談まで。

一組辺り15分と設定されていたが、だいたいは15分を越え会話は続き、全部で6組ほどの相談を受けた。

 

Music Lane Festival Okinawa 2023 初日

さぁ、始まりました、Music Lane Festival。今年は3年ぶりのフルスペック開催ということでデリゲーツもバンドも海外組の参加がわんさか。去年の状況を知らないのでなんともいえないのだが、街に活気がある気がする。初日は4つの会場を使っており、あっちいって音楽聴いて、こっちいってライブ観て、コザの街を堪能しながら音楽を楽しめる。

 

 

初日に観て回ったのは以下のバンドたち。

 

Soft Pine (https://www.instagram.com/softpineeee/)

予定されていた1on1ミーティングの時間を軽くオーバーして相談は続き、Soft Pineのライブのスタート直前に会場であるRemy’sに滑り込み。

去年11月のタイのフェス「CAT EXPO」で一瞬だけお会いした(というか、すれ違いながら挨拶した)FM802のDJ土井コマキさんと再会。タイの屋台などに置いてあるガチ一味唐辛子をお土産としてお渡しできた。会場にはWESSのイベント事業部の方(北海道で開催されているRISING SUN ROCK FESTIVALを担当されている方)もいらしていてご挨拶。タイの近況などをお話ししているとSoft Pineのライブがぬるっと始まる。

Soft Pineの力の抜けた、それでいて熱を感じるライブは沖縄でも健在。前々日に東京・新代田のライブハウス「FEVER」にて日本でのライブを経験していたので、いくらか緊張はほぐれている様子だった。

 

VINI (https://www.instagram.com/vini.company/)

Remy’sから騒音舎に移動。ライブ開始までまだ時間があったので、Sonyチームの方々とドアの前で並びながら談笑。ただ、ライブの開始時間になってもなかなかオープンしない。これはなんか問題発生してるな。と、「関係者です」(実際関係者だし)と受付の方に伝えて会場内へ。

会場内は殺伐とした雰囲気。タイから乗り込みのPAがせかせかとあっち行ってこっち行って頭抱えてる。まだ音出しもできていないくらい、セッティングに時間がかかっている。ちょうど主催の野田さんが騒音舎にいたのでタイムテーブル変更について相談したところ、次のバンドの時間を調整できればタイムテーブル的にも大きな変更をしなくて済みそう、ということで平にお願いする。

調整いただいたのに、それでもまだ時間かかりそうだったので、「野田さんが調整してくれてライブは30分フルにできる。でも、リハはあと5分で終わらせてくれ」とPAとメンバーに伝える。イヤーモニターを使う予定であったが、メンバー自ら「(足元にある)モニターでやります!」と気合いの宣言。ということで、無事(じゃないけど)、オープン。

パンパンの騒音舎にて、VINI、日本初ライブ、やり遂げました。

 

MassMan (https://www.instagram.com/massmanb99/)

今回、台湾から唯一参加のバンド。タイからは9組も参加しているのに、沖縄に程近い台湾からの参加が1組というのが意外だった。自分がやっているバンドと音楽的な親和性がありそうだな、と思っており、今回、彼らと友達になるのが一つの目標でもあった。

結果、ここぞとばかりに持ち前の人見知りを発揮。メンバーがライブ会場の騒音舎の前で楽器の調整をしていたので、よし話しかけるぞ、と思うも最初の一歩が踏み出せず、彼らの前を行ったり来たりするなどキモい行動を取り始め、しまいには話しかけるのを諦めて騒音舎向かいにあるチャーリー多幸寿でタコライスを食すというしょっぱい展開に(タコライスはとても美味しかったです。また行きたい。)。

ライブは予想通り熱く厚い。友達になるのは、彼らがタイに来るときか、自分たちが台湾に行くときまでとっておく。

チャーリー多幸寿のタコライスとタコス。コンビニで腹を満たしていた僕の五臓六腑に染みました。

 

Door Plant (https://www.instagram.com/doorplant__/)

そのあとはRemy’sへ移動。結構な人だかり。Door Plantはすでにライブ中盤。個人的にはタイで唯一の下北系バンドだと思っている。彼らも日本初ライブ。熱のこもった良い演奏してた。

先日、タイでおこなわれたレコ発ライブも大盛況。今後の展開も色々と考えているようで、次回の日本ツアーも良い形で計画できるのではないだろうか(予定はまだないけど)。

 

そのままRemy’sでCOMMON PEOPLE LIKE YOUを観賞。どこにいっても堂々としたパフォーマンス。ボーカルのふてぶてしい佇まいと、ギタリストのちょっと膝を折りながら弾く姿勢と、ベーシストの全体を見ながらコントロールしている感じと、ドラマーの一生懸命にスティックを叩きつけるスタイル、全部が相まって全部好き。

 

って、観てんのタイのバンドばっかじゃん。どんだけ好きなんだ、タイの音楽。いや、なんか(誰にも求められてないけど)親心というか、心配になっちゃって。日本の音響システムに慣れてないから上手くやれてるかな、とか、彼ら彼女らの演奏を聴いた日本のオーディエンスの反応はどうなのかな、とか。

結果、僕が心配しなくても、皆、自分のスタイルをちゃんと披露してて、ちゃんと良い評価もらってた。たくましく育って欲しい。

 

SPINOFF NIGHT

今回のMusic Laneに参加しているバンド・アーティスト・デリゲーツによるライブやDJが、Music LaneからはスピンオフしてRemy’sにて繰り広げられるイベント「SPINOFF NIGHT」。

 

 

僕もタイの音楽を流すDJとしてオファーをいただいた。人生初DJ。機材の操作、わからない。曲、繋げない。余裕、全然ない。主催の方が簡単な操作を教えてくれる、ということで参加を承諾した。事前練習もできないので、小手先の技とかカッコいい繋ぎ方とか、そういうのは事故ることが明白。なので、ただただ、大きな音で聞きたい僕の好きなタイの曲を、ジャンルも年代も知名度も関係なく選んで、それを流せばいいや、と開き直った。

現場に到着するも、本当に機材を触ったことがない。左右になんか2つある、くらいしか知識がない。僕の出順前にDJやってた寺尾ブッタさん(デリゲーツとしてMusic Lane Festivalに参加)に手ほどきを受ける。学生の頃、試験前に「全然勉強してねーよ」みたいなことを猛勉強してるくせに言ってる奴がいたが、こちとらガチで機材触ったことない。ブッタ師匠も「こいつ、本当に何も知らないな」と思ったはず。曲の繋ぎ方とか、音量調整の仕方とか、親切に教えていただいた。

 

Soft Pineのギターボーカル Xより。一生懸命覚えようとしています。

 

沖縄から世界進出の急先鋒 TOSH君より。初めて触るDJ卓のつまみにおっかなびっくり。

 

あれ、そういえば、機材操作を教えてくれるって言ってた主催の方、全然見かけないな。どこにいるんだ?と思ってたら、別のトラブル対応に駆り出されていたようで、挨拶できたのは自分のDJが始まる1分前だった。そして、衝撃の一言。

「2階でやってたライブでトラブルがあり(DJは1階)、2階でライブやる予定のバンドが1階でライブやることになった。タイムテーブルを変更しなくてはならないので、DJの時間を半分にして欲しい」

タイ音楽の多様性を知ってもらおうと、練りに練って選んだタイの珠玉の曲たち。できれば全曲かけたかったが、困ったときはお互い様なので、半分の時間でできる限りまで曲をかけることにした。

DJ初心者のため、曲をかけてる間は何していいか分からず、こんな顔にもなるし、写真もぶれますよね。

 

Soft Pineのドラム Boomより。強烈にぶれているが、それでも手持ちぶさた感が見て取れる貴重な瞬間を捉えた写真。

 

自分のDJの後が、Music Lane直前にバンコク・チェンマイツアーを敢行した日本のバンド「Delicious Grapefruits Moon」のライブだった。8曲目の「electric.neon.lamp」が流れてる辺りで自分の持ち時間に終わりが迫っていた。ただ、Delicious Grapefruits Moonのメンバーさんも好きだというチェンマイのファインポップバンド「YONLAPA」の曲がちょうど次の曲だったので、それだけ流してDelicious Grapefruits Moonにバトンを渡せればチェンマイ繋がりで美しいかな、と思い、メンバーさんにもお話しし、それでいこう、となった。

そして、9曲目、YONLAPAの珠玉の名曲「Let Me Go」のイントロが流れた瞬間、音が消えた。やっちまった。事故った。焦りながら機材の丸いのとか長方形のとかを上下してみるも音は鳴らず。すると、モニターから「時間が来たので音切りました」という声が。YONLAPAのイントロと共に、僕の人生で最初で最後のDJは終了。

結局、用意した曲の半分もかけられなかった。10曲目以降から怒涛の情緒不安定系展開で皆の魂を震わせる予定だったのに。なので、用意していたプレイリストをここで供養させてください。

 

Playlist for Music Lane Festival Okinawa 2023 – SPINOFF NIGHT
※YouTubeでプレイリスト作りました。

01 Plot – ไม่สนิทอย่าเล่น (Strange People)

02 Cana – Last Goodbye

03 Summer Dress – Over Willing

04 KUNST – Test Drive

05 January – ICYMI

06 daynim – IN YOUR BAD DAY PT. 1

07 Gym and Swim – Bunny House

08 electric.neon.lamp – หนีไป

09 YONLAPA – Let Me Go

10 JELLY ROCKET – เจ้าเหมียว

11 Happy Buddha – ไม่มีทาง

12 Degaruda – Accidents

13 Faustus – Cenerentola

14 BrandNew Sunset – Headspin

15 LowFat – 爺さんは戦場へ行った

16 Mr.Lazy feat. Preaw Kanitkul – เพิ่งจะรู้

17 Alec Orachi – GG Love

18 Hariguem Zaboy – (She Loves her) Expenzive Hairstyle

19 DOGWHINE – Democrazy

20 DCNXTR – PATPONG

21 Silly Fools – เพลงนี้เกี่ยวกับความรัก

22 Beagle Hug – Beagle Hug

 

DJ後は、Delicious Grapefruits Moon、HOMETOSH x shunta (HOME)のライブを観る。どのミュージシャンもそれぞれ自分の持ち味が高い次元で光ってる。Delicious Grapefruits Moonはすでにタイツアーを何度も敢行済みで、HOME、TOSHも世界で勝負できる逸材(TOSH君はモンゴルの音楽フェスが決まった模様。そりゃあ、大金星かっさらってくるんじゃないかと思ってる)。

Music Laneから世界に才能が飛び立っていく日も遠くない。

 

もうすっかり深夜となった。Remy’s店内には、昨日のウェルカムパーティーでもお話しし、今日の1on1ミーティングでも相談しにきてくれた「Herbert Hunger」の曽我さんがいて、Music Laneの話をしながら、なんとなく流れで、バンドというものについて話し込んだ。

身に染み渡る話で、今でも深く印象に残っている。

「バンド内部では色々ある。あいつなんにもやらないな、とか、自分ばっかり動いてるな、とか。でも、外から見ると、そんなのは関係ない。有名な●●(バンド名)の○○(メンバー名)とか、実際にバンド仕事は何もやってないかもしれないけど、ファンにとってはかけがえのない存在だったりする。傍からは、意外とバランス取れて見えてるし、それで良いんだと思う。その代わり、動いている人には恩恵があっていい。」

僕はDIYでやっていることに拘りがあって、凄く大変で、困難も多くて、覚悟が必要なんだけど、尊いことだと思っている。なので、自分でやれることは自分でやる、と決めて、今まで活動してきた。それは、レーベルに所属せずにDIYでやっていくと決めたメンバーに対しても求めることだった。

以前やっていたバンドで、曽我さんと話したようなことに何度も直面してて、演奏以外では何の役割も果たしてないのに評価だけ受けているメンバーがいるのが引っかかっていた。もうそのバンドは無いんだけど、曽我さんと話してて、なんだかその当時持っていたわだかまりが蒸発したような、気持ちが軽くなったのを覚えている。

 

思い出深い夜になった。今夜も、夕飯のことは忘れていた。

 

※本日の夕飯 (AM 2:52)

 

※Music Lane連載との連動プレイリスト「めくるめくタイインディーズの世界」も合わせてどうぞ。

 

■執筆者紹介

Ginn

タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。

 

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