【Column】
コザの天ぷら【コツのいらないasia音楽】Vol.3
デニムの青と、青い海でつながるコラボ曲「Denim Blue」

コザの天ぷら、通称【コザ天】早くも第3回目。
今回は”沖縄”も歌詞に登場する曲「Denim Blue」についてのお話。

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【コザ天③で聞くべき曲3選】

☞Denim Blue / 葛仲珊Miss Ko, 鶴 The Crane, Gummy B, AUTTA, RITTO（prod. 海大富Deja fu）

https://www.youtube.com/watch?v=aAi3rH90sRY

☞Tell Me(大嘻哈時代Version) / 9m88, Gummy B, 艾蜜莉AMILI https://www.youtube.com/watch?v=-mpyMZvyeu0

☞A day walk to the oasis ft.湯捷Lil Happy Lif3 / Sogare 曾我黎 & BeegYen

https://www.youtube.com/watch?v=3lRT6pbcPyQ

！）コラムに登場するアーティストはできる限り本国での活動名と英語名を併記しています

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音楽アプリのリスナーエリアが面白い

パソコン版アプリでSpotifyを開くと、アーティストプロフィールに続けて、そのアーティストが良く聴かれている地域が表示されるのをご存知ですか？(ずっとスマホで聴いていたので私は最近知りました）

自分の好きなアーティストは、どんな地域にリスナーが多いのか、曲を聴くのにプラスして予想するのが楽しく、ついついアーティストのプロフィールを見に行く癖がついた私。

そこで見つけた興味深いデータを持つアーティスト。2023年９月の聴かれてる地域が多い順から

台北（台湾）約1.1万人
新北市（台湾）約1万人
台中（台湾）約7千人
東京と花蓮（台湾）でそれぞれ約5千人
と、沖縄での活動が中心にも関わらず、台湾に多くのリスナーを持つアーティストがいる。

答えはRITTO

沖縄ラッパー集団の”赤土”のリーダーであり、11月に行われる沖縄の音楽フェス「波の上フェスティバル」の中心人物。彼の曲が台湾で多く聴かれるきっかけになったのは、彼が参加する今年8月にリリースされた楽曲「Denim Blue」だ。この曲はジーンズメーカーLEVI’S台湾とのタイアップ曲。
LEVI’S 501ジーンズの誕生150年の歴史とこれからの未来をテーマに、映像と楽曲が制作、発表された。

凄腕プロデューサーに集められたのは、長年第一線で活躍してきた由緒あるアーティストと、国内外のネクストアップ（話題沸騰中）のアーティストの計5人。台湾/日本/タイと活動地域の異なる様々なメンバーだ。そこに、沖縄のRITTOが名を連ねた。

市外局番”098”

“Denim Blue”はRITTOのラップから始まることで、日本語圏の私たちにとっては聴き続けるハードルが易しく、ラップのリリック（歌詞）はとても分かりやすい。加えて”ハイサイ” ”イヤササ”と随所に感じさせる沖縄っぽさ。極めつけは沖縄の市外局番”098”。沖縄ならではのナンバーに、ニヤリとしてしまう。

RITTOの後はGummy Bに、沖縄から台湾にラップのリレーが引き継がれる。
RITTOの年齢を重ねた深みと大らかさから、Gummy Bの若いながらに魅せる凄み、そのどちらも感じることができ、1stバース（Ａメロ）から私は前のめりになった。続く台湾のR＆Bアーティスト鶴 The Craneの歌うメロディはスマートで秀逸！リズムを肩でとりだしてしまう。2ndバースからはタイのAUTTA、サビからは台湾の大御所 葛仲珊Miss Koが登場しリスナーを未来へと先導する

楽曲リリース前に発表されたLEVI’S公式ビデオは青の美しさと美術館に飾られた絵画のコントラストが美しく、見飽きることがない。（是非みて！）

New Music Friday×アジア！

そして8月、楽曲配信が本格的に開始し、この”Denim Blue”はとんでもない数のSpotifyの公式プレイリストへのリストインを果たした。
その数、19！　すごすぎる！＊

再生数/リスナー数に大きく影響するといわれるプレイリスト、New Music Fridayは、私が確認できただけで、アーティスト活動地域の台湾/日本/タイだけではなく、韓国/シンガポール/インドネシア/マレーシア/フィリピン/ベトナムの合計9か国！
活動地域以外の国でもリスト入りを果たしたことに、タイアップだけではない影響力、楽曲の良さがアジア各国にも伝播している感じが自分も褒められているような気持ちになりすごく誇らしい。

このプレイリストイン数、19がどれだけすごいかというと、このコラムを書いている同時期、沖縄を代表するアーティストAwichの楽曲の公式リストインが8。コザを代表するORANGE RANGEの楽曲のリストインが13。海外とつながることで切り開ける可能性をリストイン19に感じ、ゾクゾクしてしまった

そもそも、数あるアーティスト/ラッパーのなかで沖縄のRITTOに白羽の矢が立ったのはなぜか？きいたところ、こう返事がきた。

日本の音楽シーンにおいて沖縄のヒップホップアーティストが多く台頭している点と、台湾ヒップホップの音楽サバイバル番組”大嘻哈時代”でのヒットをはじめ、台湾で如実に現れた広い世代でのヒップホップ人気。波の上フェスティバルとのコラボレーションを見据えて、その沖縄のヒップホップシーンの歴史の中で重要人物であるRITTOに真っ先にラブコールしたまでだ、と。

私個人としては、鶴 The Craneと自分の住む沖縄で活動するRITTOがつながったことにひとりで勝手にに熱くなり、その情熱で”Denim Blue”を聴き込み、情報を深掘りしてこのコラムを書いているわけだが、こういった１楽曲/１アーティストが好きという”点”が、沖縄/日本/自分の関心のあるカルチャーやコミュニティとの繋がりを小さな事柄であっても発見した瞬間、”点が線”になることでぐぐっと広がる自分の中に生まれる興味や関心の芽吹き。自分の気持ちに沸き起こす熱さが、私のアジアのインディペンデントな音楽を掘る理由の一つになっていることは間違いないし、これを読んでいる人にとっても紹介するコラボ曲を点に、新しいアーティストや楽曲との出会いで線になってくれれば嬉しい。

続けてプラス1曲

コラム冒頭に紹介した、2曲目は日本のDJ/トラックメイカーMitsu the Beatsと台湾の人気R&Bシンガーの9m88のマスターピース楽曲”Tell Me”。今回紹介の楽曲”Denim Blue”に参加する台湾のラッパーGummy Bと、同じく台湾のラッパー艾蜜莉AMILIがアンサーを加えた新バージョン。
プラスされた歌詞が原曲の歌詞とリンクし、原曲の世界観と、再解釈された世界観どちらも味わえる良いアレンジ。”Denim Blue”を聴いた後に、あと1曲続けて聴くのにおすすめしたい１曲。

さらにもう1曲。３つめに紹介する楽曲はA day walk to the oasis。歌うのはSogare 曾我黎。台湾で活動する日本人ラッパー/マルチアーティスト。来年1月に行われる台湾の音楽フェスティバル Neon Oasis Fest. 霓虹綠洲音樂祭は、RITTOの主催する波の上フェスティバルと様々な形でコラボレーションを行い準備が進められている。この橋渡しをしているのがSogare 曾我黎 だ。
RITTOの台湾リスナーが増えている理由が”Denim Blue”だけではなく、実際に台湾のNeon Oasis Fest. 霓虹綠洲音樂祭で交換留学のような形でライブ出演が決まったことも要因ではないだろうか。楽曲をきいて、良いと思ったらライブが見たくなるのは自然な流れだ。楽曲に話を戻すと、Sogare 曾我黎の歌心のあるフック（サビ）が心地よく、またリリック（歌詞）も詩的でリスナーに考察の余地を残すがゆえ、ついつい次のフックはまだかと期待してしまう印象的なメロディ。台湾華語でバース（Aメロ/Bメロ）を担当するのは、アーティストPiNkChAiN紅粉鍊人を介して知り合った、Sogare 曾我黎の大学時代の先輩でもある、ラッパー湯捷Lil Happy Lif3。MVには日本語訳、台湾華語訳それぞれがあるのでより一層リリック（歌詞）が心に残る。派手さはないが未来/希望を希求する、静かに熱い、カッコよさが光る曲だ。沖縄と台湾を新しい形で繋げた彼の作品もあわせて聴いてみてほしい。

それにしても、このコラム第1回で紹介したLove Live Life-Alisson Shore , Rude-α , Tanayu , Waiian , ¥uK-B (https://www.youtube.com/watch?v=Vsz2bFd-HQw&t=5s)といい、今回紹介した”Denim Blue”といい、今年の夏、沖縄とアジアが楽曲で繋がる出来事が立て続けに起こったのは偶然では無い気がしてならない。2023年、沖縄から何か始まろうとしている。新しいシーンはどんな風に展開をみせるのか、音楽を聴く楽しみがまたひとつ。

＊公式リストインを確認できたプレイリスト19
・New Music Friday　Taiwan
・New Music Friday　Japan
・New Music Friday　Thailand
・New Music Friday　Philippines
・New Music Friday　Indonesia
・New Music Friday　Malaysia
・New Music Friday　Singapore
・New Music Friday　Vietnam
・New Music Friday　Korea
・Hot Hits Taiwan
・Edge!
・The Sound of Formosa
・男聲報到
・嘻哈華語精選
・Mandpop Hits
・獨立最前線
・女力爆發！
・噺歌熱播
・男聲報到

 

筆者紹介
サクライアヤコ：沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。
Instagram（https://instagram.com/ma__ke.ai?igshid=MzMyNGUyNmU2YQ==）にて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ（コライト）曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中

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