【Report / リポート】
Music Lane Open Lecture Vol.16
2024年版 変わりゆく音楽の届け方とインディペンデントアーティスト
講師:松島功さん

音楽専業のデータ分析・デジタルプロモーションマーケティング会社「arne」の代表として、インディペンデントからメジャーまでデジタル事業のサポートを手掛けている松島功氏を講師に迎え、Music Lane Open Lecture Vol.16が2月28日に開催されました。

今回のテーマは「2024年版 変わりゆく音楽の届け方とインディペンデントアーティスト」。
YouTubeやサブスクによる音楽ストリーミングの主流化、TikTokに代表される縦型動画プラットフォームの隆盛など、音楽の届け方や楽しみ方が変わりゆく中でのSNSとの向き合い方、考え方、そしてインディペンデントアーティストが健全に活動を続けていくためのヒントについて、最新のトレンドやアーティストを取り上げた事例紹介もしつつ話を展開しました。

取材・文:真栄城潤一 / Junichi Maeshiro

 

音楽で稼ぐための“戦い方”の違い

冒頭で先ず、話の導入として松島さんは「最近の良いこと」として「TuneCoreから配信してお金になっている人が本当に増えました」と、サブスク配信での売り上げを伸ばしている人の増加について触れました。
TuneCoreの国内の再生回数で見ると、2,000万回以上5,000万回未満が多い傾向で、この層は年々厚みが増していて、ほとんどがHIPHOPであるという特徴も指摘しました。また、「再生回数の多い楽曲はほぼTikTok経由で数字が伸びていますね」ということも付け加えます。

その一方で、「最近の悩ましいこと」として「全然再生回数が増えないし、お金にもならない」という現状についても言及し、活動中のミュージシャンを例に挙げて説明しました。

「働きたくないから音楽を作って稼いで暮らす」ということをTuneCoreのメディアでも話されて実践しているトラックメーカーのSUKISHA、強い独自性を持ち固有のファン層を築き上げているラッパー・dodo、ライブをほとんどしないがインストで国内外のプレイリストに組み込まれているピアニストの橋本秀幸

この3人のスタイルについて、松島さんは「それぞれに“戦い方”が違います」と説明。「自分自身の活動のヒントとなるような人物、アーティストを見つけて、どのようにキャリアを築いているのか参考にしてください」と強調しました。

どうすれば応援してもらえるか?

後半部分に差し掛かると、松島さんは「自分の楽曲を聴いてもらうために、3つのフローで考えてみましょう」と提案。

先ず①「知ってもらう」ために、プレイリストへのエントリーやSNSのショート動画を頑張ってみること。次に②「広げてもらう」ためには、SNSでファンに音を使ってもらうために誘い、アーティストとして“応援したくなるような姿”を見せること。そして最後に③「愛してもらう」ために、自身の発信で存在感を示しながら、SNSで過去曲を用いて再度聴くきっかけ作りを意識することなどを挙げました。

「どうすれば応援してもらえるかを考えることが重要です」と松島さんは強調する。これらの要点を踏まえて、「自分がアーティストとして意識している他のアーティストは何をしているか、をきちんと分析してみるのも大事です」と付言。
その上で、超大物のテイラー・スウィフトや、沖縄の人気ラッパー・CHICO CARLITOやシンガーのKinamiなども例に挙げながら、各アーティストがそれぞれのパーソナリティに基づいて、3の項目でどのような振る舞いをしているのかを分析しました。

そのほかにも、独自のやり方で発信をし続けて支持を得ているインディペンデント・アーティストのインスタリールやTikTokも多数紹介しました。

自分にとって何が強みなのかを考える

まとめで松島さんは「自分にとっては何が強みなのかを考えることが重要です」と切り出しました。「ラッパーの皆さんのように、同じジャンルの音楽に励む“同志”たちがいれば、そのコミュニティーやカルチャーごと盛り上げていける可能性があります」。

また、そのほかにも「孤高に固定のファンをつかんでファンクラブ的なものを作っていく」、あるいは「ファンとの距離を近づけてフランクに接することで、通常のSNSとは違った距離感を築いていく」といった具体的な方向性についても説明しました。

さらに「自分の音楽が受けるマーケットがどこにあるかを少しでも意識することも大切だと思います」というマーケティングの視点も強調します。
その上で「市場が大きい場合はダイナミックに攻めても良いのですが、逆に市場が小さければ、きちんと受ける層に向けて粛々とやっていく。そして続けていきながら中長期的に単価を上げていくという戦略になっていくと思います」と実践的なビジョンを示しつつ、レクチャーを締め括りました。

 

松島 功さん プロフィール

株式会社arne代表・元Spotify Japan Artist & Label Marketing Manager
音楽と美容が好きな人。 インディペンデントで活動する音楽家のアーティストサービス、並行して国内レコード会社・マネージメント会社 各社のプロモーション業務サポートにつとめる。

https://arne-jp.com/

 

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