【Column】
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.20
満月と羽地内海に浮かぶ月明りに照らされて
～民族音楽とポップスのクロスオーバー

　JAZZY HIP HOPと琉球音階がこれほど上手く混ざりあうとは予想外。琉球音階のメロディがオリエンタル感を醸し出し、そこに稲嶺幸乃の民謡的発声の心地よさ＆なつかしさを思わせる歌唱と三線の音色がするりと入り込む。星空を彷彿とさせるドラマチックな楽曲トラックは、竹取物語的な異国感を漂わせ、それでいてリリックはリアリティがありずっしりとしている。地に足がついたと評すれば良いのか、楽曲タイトルの「月と団子」にもある通り、食う・寝るといった日常に根ざした人ひとり等身大で語られるお団子、もといリリックと、地上から見上げるドラマチックな月のようなロマンチシズムのギャップにぎゅんと心を鷲づかみされる。日々の暮らしの大切さをじわっと感じさせる1曲。ライブ当日は満月ということもあり、やんばるの静かな夜の中に月明り、それでいてこのべニューの裸電球の暖色の明かりと集まる人々のあたたかさをより立体的に感じ心地よい。

　そしてこの日のイベントで私には、もう1曲ステージ披露を期待していた曲が。それがこちら

　前述のブギ丸と、台湾のプロデューサー、キーボディスト、トラックメイカーのDizparityとのコラボ（コライト）曲 Tokoro-処 。月と団子とはまた違う夜空。メロディトラックは望遠鏡で宇宙を捉えるような暗色の宇宙空間の先の見えない広がりに対し、リリックでは内省的に（良い意味で）孤独と向き合うこと、自他の境界線を感じながらも自分の素晴らしさ、自然や他のかけがえのなさを歌う作品だ。

　この曲の中盤、リリックに「いつでもウェルカム めんそーれ」と出てくる。大阪の彼が、なぜ めんそーれ？その疑問はライブ中に解決された。

　ライブ後の幸せな気持ちが溢れる帰り道で、Music Lane Festival Okinawa 2024で中国からのデリゲーツ（音楽関係者）Nola NIさんの話していたことを思い出す。

—民族音楽は他のジャンルと掛け合わせることでもっと面白くなる！—

沖縄民謡とHIPHOPの掛け合わせもこの彼女の言う面白さに繋がっているな、などと思考しながら、さらにもう1曲閃く。

　ブギ丸とコラボ（コライト）曲を作り上げた台湾のDizparityは2019年、台湾の原住民パイワン族として強いアイデンティティをもつソウル・R&BシンガーABAO阿爆 の楽曲Thank You 感謝 の作曲編曲の際、ゴスペル調の音楽と台湾原住民音楽を掛け合わせ、翌年の台湾のグラミー賞と呼ばれる第31回 金曲奨 (Golden Melody Award）の最優秀楽曲賞の授賞の貢献者となり、Thank You 感謝はその年の代表的な1曲となった。