コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.26
聴き逃し厳禁!アジアとつながるコラボ(CO-Write)曲 2024

 年の暮れも差し迫る師走、今年2024年にリリースされたコラボ(CO-Write)楽曲の中からアジアの音楽シーンと日本の音楽シーンの文脈の両面からチェックしておくべき楽曲を5曲、ご紹介して総括していきます!
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2024年チェックしておきたい5曲 Spotify playlistはこちら
1 .Genie feat. aint lindy / quicksand bed
2. True Colors / butaji, Flower.far and MET
3. Trampoline / Alan Kwan & 林正樹
4. 副都心 / ゲシュタルト乙女,荒井岳史
5. OST (feat. ちゃんみな) / ASH ISLAND
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1.Genie feat. aint lindy / quicksand bed

 

 今年のMusic Lane Festival Okinawa 2024で沖縄初ライブを行った日本のバンドBillyrromのギタリストRinのソロプロジェクトaint lindyが、タイ バンコクを拠点に活動する3人組バンドquicksand bed と制作した作品。ベッドルームミュージックなのに、バンドサウンド。ゆったりとしたテンポの楽曲でかといって内省的にならずに、外向きの前向きさが心地よい。作品で届けたいメッセージがイメージしやすく、陽だまりようなあたたかさを感じさせるゆったりとしたソウルとラップのフロウ。ハートウォーミングな音像と、人懐っこいギターフレーズにホッと一息つきたくなる1曲。

2. True Colors / butaji, Flower.far and MET

 

 

こちらもメッセージを届けたいリスナーが明確に感じられる楽曲。先ほどの楽曲Genieのベッドルーム感からガラリとかわり、そのメッセージ性の強烈さがイメージの輪郭をよりはっきりとさせる。
ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の"Presence"、ドラマ『エルピス』の主題歌となった"Mirage"などで卓越したメロディセンスを発揮したシンガーソングライターbutajiが、トラックメイカーMETとともに6月にリリースした楽曲。女性パートを担当するのは、昨年沖縄出身R&Bラッパー3houseとコラボ曲をリリースし、プロジェクトガールズグループ DREAMGALS のメンバーとしても注目される、タイの女性シンガーFlower.far。「セクシャリティ、そしてナショナリティを越えた自由」をテーマにそれぞれの自由な解釈をメロディとリリックに落とし込むことでそれぞれのパーソナリティに深く紐づく作品に仕上がっている。歌詞中の“大丈夫、私たちよくやっている”という1節からも感じられる、自と(自分と)同じ状況に置かれている(恐らく立ちはだかる越えがたい壁の前にいる)同士と共に難題に相対し、軽やかに乗り越えていこうとするテーマソング的1曲。

 

3.Trampoline - Alan Kwan & 林正樹

 

 

椎名林檎のサポートをはじめ、ピアニスト・コンポーザー、ドラマの劇伴、バンド・菊地成孔のラディカルな意志のスタイルズのメンバーなど、ポップス/クラシック/Jazzと幅広いジャンルで活躍する林正と、2023年中華圏での権威とされる音楽賞 Golden Melody Awards金曲奨で最優秀アルバム・プロデューサー賞を受賞している、香港で活躍するJazzギタリスト・コンポーザーAlan Kwanとのコラボ(CO-Write)楽曲。
軽快で心地の良いピアノとギター。電車の車内から景色を見るようなまたは公園を自転車で駆け抜けるような疾走感と清涼感が、すーっと心を解きほぐす気持ちの良い1曲。林正樹は12月6日に那覇 桜坂劇場・12月7日 沖縄市 ミュージックタウン音市場で開催されるアン・サリークリスマス コンサート 2024にピアニストとして登場。この音色にピンときたらぜひコンサートにも足を運んでみては。

4. 副都心 / ゲシュタルト乙女,荒井岳史

 

 

先月11月24日にボーカルMikan Hayashiが那覇で弾き語りライブを披露したことも記憶に新しい、台湾を拠点に置きながら日本語で歌うバンド、ゲシュタルト乙女の楽曲に、the band apartのボーカル&ギター荒井岳史がギターで参加。ギターキッズが思わずマネしたくなるような、1度聴いたら忘れられない魅力的なイントロのギターリフを携え、Mikan Hayashiが日本語の歌詞を繊細に操る。昨年のバンドメンバー脱退などバンドとしての激動を乗り越え、己の目指す道をシンプルにまっすぐに見つめ歌い上げる。リリース時の3月は丁度新生活シーズンということもあり、新たな出会いや別れへの期待と不安を程よくパッケージしていて素晴らしい仕上がりとなった1曲。

 

5.OST (feat. ちゃんみな) / ASH ISLAND

 

 

現在放送されているガールズグループオーディション「No No Girls」のプロデューサーとして新たな手腕を発揮している、日本のトリリンガルラッパー ちゃんみな と公私ともに彼女のパートナーとなった韓国人ラッパーASH ISLANDのコラボ(CO-Write)楽曲。
タイトルのOSTは“Our Sound Track”のこと。2人の物語のサントラ楽曲と説明されている。まるで結婚披露宴で流れる“馴れ初めVTR”を見ているかのよう。
コラボ楽曲制作やライブ共演で交流を重ね、お互いを思いやるーどんなに素敵なことだろう。韓国語バージョン、日本語バージョンともに、君がいなきゃダメなんだと(聴いているこちらが赤面してしまいそうなほど)真っ直ぐ相手を想う気持ちに羨ましくも、幸せをおすそ分けしてもらっているような気持ちにさせる1曲。

筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 2025応援団(MLFO2025playlist随時更新!)
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中
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