【Interview / インタビュー】
ジャズSAX奏者テリー重田、
5年ぶり2枚目の新作「Sun’s of the son」を語る
|1985年のライブがよみがえる

 

 

 

 

 

 

 

沖縄JAZZ協会顧問やビッグバンド「The Blenders Orchestra」主宰、ソロアーティストなどとして、ライブハウスやイベントを中心に美術館や飛行機など場所問わず音を届けてきたSAX奏者テリー重田(80)。7月30日にリリースした2ndアルバム「Sun’s of the son」には、1985年にライブハウス「沖縄ジャンジャン」でのライブ音源全6曲が収録された。

2016年の1stアルバム『「島渡る風」~心に残るオキナワンメロディー テリー重田の世界』」から5年ぶりの今作には、どんな思いが込められているのか、話を聞いた。

 

―ズバリどんなアルバムでしょうか?

沖縄ジャンジャンでの2部編成のライブ音源を1枚にまとめました。実際の12~13曲から6曲を厳選し、限定500枚で販売しています。聞く人は、聞けば聞くほど4ビートでフリーな感じ、前衛な要素が抜けていく感じに聞こえるかもしれません。カルテットとしては初めて出したアルバムです。

 

―1985年のライブ音源が残っていたなんて、すごいですね。

本当だね(笑)。テープで録音した音源で、30年ぐらい聞いていなかったんです。音質はあまり良くないが、フレーズがいま聞いても斬新で。

 

―今のタイミングで新作をリリースしたきっかけを教えてください。

収録されているライブに一緒に出演した稲福常善(Dr.)が亡くなり、この「プロムナードJAZZ」ライブを企画した渡嘉敷唯夫が亡くなったとき、生きている者の責務としてアルバムを出したいと思いました。「TERRY SHIGETA QUARTET」は、私以外のメンバーは代わる代わるで変わっていくスタイルだが、この時のメンバーはあうんの呼吸だった。とても良かった。

 

―どんな音を奏でるメンバーでしたか?

玉栄政昭(Piano)は、ちょうどこのライブを開催した1975年ごろに知り合いました。心温まるピアノを弾く人です。西川勲(Bass)は、メトローム不要な正確さで、ベースでメロディラインを表してくれる。故・稲福常善(Drums)は、決められた時間で自由にやる人だった。

 

―なるほど。それぞれの楽曲のポイントをぜひ教えて下さい。

1曲目の「Sun’s of the son」はアルバムのタイトルになっている私のオリジナル曲です。原曲はテレビの挿入歌として使われたんだけど、その曲をJAZZ調にしました。2曲目の「Caprice」は、僕以外の3人で演奏している。3人のコンビネーションが良くて、どうしてもアルバムに入れたかった曲です。3曲目の「Spectacular」はリフ(フレーズ)を全員で揃えていて面白い。私はアルト(sax)を吹いていますよ。

 

―どれも個性が光っていて面白いですね。

そうだね。4曲目は「Alice in Wonderland」(不思議のアリス)。3/4のワルツで、私はソプラノ(sax)。5曲目のバラード「It Never Entered My Mind」は、TPをSAXに置き換えたらどうだろう?」という気持ちで演奏していて、6曲目はチック・コリアの曲。それぞれのポイントが面白い。

 

―話は変わりますが、1985年のライブということは沖縄に来て相当長いですか?

1953年に沖縄に来ているので、人生のほとんどが沖縄です。私は徳之島出身なのですが、父は戦死し、出稼ぎで先に沖縄に来ていた母と祖母を頼って来沖しました。船で18時間ぐらいかかったでしょうか。トイレはポットン(くみ取り式便所)で、近くには船のスクリューで本当怖かったなぁ。牛とともにギューギュー詰めでしたよ。

―まさか親父ギャグが来るとは(笑)。

たまにはね。あの頃はパスポートが必要だったから、沖縄で結婚して永住許可証をもらうまでは毎年パスポート更新。沖縄に最初にきたとき「草がたくさんあるなぁ」という印象を受けました。徳之島は牛がいっぱいで草が少なかったから、余計にそう感じたかも。

 

―もともとJAZZミュージシャンを目指していたのですか?

それが全然。故郷の徳之島に恩返しをするために、高校は(沖縄県立)中部農林高校に入学しました。高2の途中ごろ、友達から「吹奏楽部に入ったら女の子と遊べるよ」と言われて喜んで入部したのですが、女の子どころか楽器も見当たらなかった(笑)。体育祭に向けて体育の先生が資金を工面してくれて、楽器を買ってくれましたが、私は、最初はバリトンフォーンでしたよ。今でいうユーフォニウム。高3からSAXです。卒業式の分散会のとき、先輩に声をかけられてJAZZの道に入りました。音楽はもともと本業じゃなかったけど、食べるためにはじめたんです。

 

―チャレンジャーでいらっしゃるんですね。

そうだね。「なんくるないさ」で、本当いろんな方々と演奏させていただきました。

 

―次作の期待はしていいでしょうか?

またそのうち出すかもしれないですね。アルバムで演奏しているメンバーのうち3人は存命だから、またカルテットかも。

 

―最後に読者の皆様に一言お願いします!
1985年当時のサウンドありのままの雰囲気をぜひ味わってください。前衛っぽいアドリブっぽい雰囲気を楽しんでくださいね。ちなみに、ジャケットに映る私が持っているSAXは、1972年沖縄復帰の年にNYに行って、現地で買った楽器です。

(インタビュー / Text:小鍋悠 / Haruka Konabe

 

〈収録曲〉
・Sun’s of the son(太陽の子)テリー重田オリジナル
・Caprice
・Spectacular
・Alice in Wonderland
・It Never Entered My Mind
・500 Miles High

 

 

Youtube「テリー重田の沖縄JAZZストリーム」

 

TERR SHIGETA QUARTET「Sun’s of the son」
2021年7月30日発売 定価2,000円(税込)
〈取り扱い店舗〉
キャンパスレコード/ピアノプラザ沖縄/沖宮/高良レコード/沖縄レコード商事/
ゼロバンチレコーズ

〈問い合わせ〉
090-8290-7177(テリー重田)

 

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