めくるめくタイインディーズの世界 第9回「タイのインディーズレーベル」

タイにも多くのインディーズレーベルがあります。DIYを突き詰めていたり、ポストロックに注力していたり、英語で歌うアーティストのみ所属していたり、それぞれがそれぞれに個性的です。

今回は、そんなインディーズレーベルと、レーベル所属の注目ミュージシャンも合わせて紹介していきます。

お気に入りのミュージシャンがレーベルに所属しているようであれば、同レーベル所属の他のミュージシャンも片っ端からチェックしてみると、いい出会いがあるかもしれません。

 

Panda Records

1999年にStylish NonsenseのPokさんとJuneさん、Bear-GardenのJuneさんの3人によって設立された老舗インディーズレーベル。インディペンデントとは正にこのことと言わんばかりの活動方針で、世間の流行り廃りを横目にもせず、自由な発想の音楽をサポートし続けてきています。タイのアンダーグラウンドシーンには欠かせない存在です。

所属するバンドは、エレクトロニカ、ポストロック、オルタナロックなど様々。各バンド、メンバーがいちいち個性的で、一回見ただけで全員の顔を覚えてしまうほど。Summer DressAbstraction XLなど、風変りなことを風変りだと思っていない鬼才たちが奏でる音楽が集まっています。

 

Pokさんは、タイのインディーズシーンにおいて、常に興味深いイベントを仕掛け続けています。以前のコラム「タイの音楽フェス事情」で紹介した伝説の自然派野外音楽フェス「Stone Free Music Festival」や、フリーマーケットとライブの融合フェス「Noise Market」は、彼とその仲間が始めた活動でした。今はまた「Bangkok Street Noise」という名で新しいイベントを始めていて、バンコク中の「え?こんなところでライブできるの?」といった場所(鉄道駅の線路脇、陸の孤島のような公園、高架下の空き地など)を探し出してきて、定期的にイベントを開催しています。すべては「自身の楽曲を持つインディーズアーティストが表現できる機会を得られる場となるため、そして、演奏したい人と演奏を観たい人の出会いの場となるため」(Pokさんより)。

この人を尊敬しなければ誰を尊敬すればいいんだ、ってくらい尊敬しています。

 

parinam music

Gym and Swimを始め、Wave and Sofolk9などシンセポップやシティーポップ系のバンドが目立つレーベルなものの、Pla Nin Tem BarnChuChloëなど全く別ジャンルのバンドも所属しており、多種多様な顔を持つレーベルです。

 

レーベルオーナーは、他にも「Seen Scene Space」というイベント団体も運営していて、タイ国内のバンドはもとより、日本を含めたアジアのバンドを多く招聘してイベントをおこなっています。近年のYogee New Waves、toe、MONO、LITE、Lucky Tapesなどのタイへの招聘は、彼らによるものでした。

コロナ禍では海外からバンドを招聘するのは難しかったのですが、その間に招聘したいバンドをごっそりリスト化しているようなので、コロナ禍明けにどんなバンドをタイに呼ぶのか楽しみにしています。

 

minimal records

チェンマイが拠点の老舗インディーズレーベル。ロック、ポストロック系のバンドが多く所属しており、ファインギターポップバンド「YONLAPA」を見出したのもこのminimal recordsでした。ただ、このYONLAPAも、看板バンドだった「Solitude Is Bliss」もレーベルとの契約が終了。各バンドの今後の動向を追いつつ、現所属バンドも良質なバンドが多くいるので、The Subtitle ProjectSAPAPSUPAPVEGAThe Bandit Boyなどなど、これからの活動も注視していきたいと思っています。

 

レーベルオーナーは、レーベルの運営をしつつ、チェンマイでミュージックバー「Minimal Bar」も経営しており、新進気鋭のチェンマイのミュージシャンを集めた弾き語りライブを店で企画しています。まだ売れる前のYONLAPAのボーカルNoinaさんも、ここでレギュラーで弾き語りライブをやっていました。

また、「チェンマイのローカルバンドに、自身の音楽を音楽関係者へ紹介する機会を創出したい」という想いで始まったチェンマイ発のショーケースフェスティバル「LABBfest.」の仕掛け人でもあります。「Music Lane Festival Okinawa 2022」の「TAMM(Trans Asia Music Meeting) Selection」枠で出演の「Common People Like You」は、この「LABBfest.」より選出されたバンドです。

今までもこれからも、自身のレーベル所属のバンドだけでなく、チェンマイのインディーズシーン全体を支えているレーベルです。

 

Newlights Production

ポストロックとその周辺ジャンルに特化したレーベル。ポストロックバンド「Hope The Flowers」のギタリストでリーダーのHon君が運営。

約10年前、タイではポストロックが盛り上がりを見せ、多くのポストロックバンドが生まれました。大きなイベントやフェスにブッキングされたり、メディア露出が増えたり、と、ポストロックバンドが目立った活躍をしていました。しかし、ほどなくしてブームは去り、ブームに乗っかっただけの人真似バンドは消え、流行っているからという理由で聴いていたリスナーもいなくなり、今やすっかり下火となりました。

Hon君はタイのポストロック界を再興すべく尽力していて、「ASiA Sound Space 亞洲聲音收藏計畫」という名のもと、ポストロックバンドやその周辺ジャンルを集めたライブイベントを企画したり、世界中からポストロックバンドを募ってコンピ音源を製作したり、アジアのポストロックバンドの紹介をおこなったり、他国からポストロックバンドが来タイした際にライブを企画したり、西に東に駆け回っています。

納得いく活動を納得いくまで続けていって欲しいと思います。

 

Sundae Records

今のタイアンダーグラウンドシーンを騒がす若手バンドが所属するレーベル。シティーポップ的音像を纏ったオルタナロック「Soft Pine」、社会派インディーロック「DOGWHINE」、若手サイケソウルの急先鋒「Supergoods」、と、どのバンドも異なるジャンルでそれぞれ楽曲が素晴らしく、演奏レベルも高く、ライブでの高揚感が凄まじく、他の若手より頭2つ3つ飛び抜けてます。

3バンドとも頭角をめきめきと現しており、アンダーグラウンドを突き破らんばかりの勢いなので、日本の音楽業界関係者の皆さん、手を付けるなら今のうちです。

 

 

Rats Records

英語詞で歌うアーティストをずらりと取り揃えているレーベル。今や世界的な人気で、2019年のサマソニにも出演を果たしたPhum Viphuritも、タイではここに所属しています(日本ではLirico / InpartmaintよりCDリリース)。他にも、Benjamin VarneyThalassaHenri Dunantなど、アーバンがむせかえるほど芳しいミュージシャンが揃っています。

レーベルオーナー曰く、リスナーの半分以上はタイ国外かららしく、文字通り、タイで一番世界に近いレーベルです。

 

Smallroom

オルタナロック、シティーポップ、ガレージ、エレクトロニカ、などなど、色んなタイプのバンド・アーティストがいますが、いずれもポップミュージックを軸に据えているミュージシャンが所属するレーベルです。競合の多いポップミュージックで差別化できるミュージシャンって、やっぱ演奏レベルも楽曲の質も高いですよね。

多分、タイのミュージシャンやディープな音楽リスナーで、このレーベルをインディーズレーベルだと思っている人は少ないんじゃないでしょうか。それくらい、世間一般にも浸透しているバンドを擁するレーベルです。

 

NewEchoes

2020年、コロナ禍の真っ只中で設立されたレーベル。Gym and SwimのボーカルのChalerm、The 10th SaturdayのドラムのBomさんなどがフロントに立ち、タイの才能溢れる若手たちを支援しています。

英語詞で歌うアーティストが所属しており、音楽性はR&B色が強めな感じ。今後、上記で触れたRats Recordsとどう差別化を図っていくのか、海外リスナーをどのように増やしていくのか、などいくつもの関門はあるものの、有望株が次々とNewEchoesに所属しており、今後注目しておかなくてはならないレーベルのひとつです。

 

SO::ON Dry FLOWER

2016年の年末、当時のタイインディーズシーンに大きな衝撃が走りました。タイインディーズの歴史を語る上では外せない重要レーベル「SO::ON Dry FLOWER」が活動を停止すると発表したからです。レーベル解散から5年以上経ちましたが、「タイのインディーズレーベル」と題したコラムでこのレーベルを外すわけにはいかないので、ここに記しておきたいと思います。

レーベルオーナーは日本人のKoichi Shimizuさん。自身もアーティストとして活動しています(現在は日本を拠点に活動)。2003年のレーベル設立より、タイのインディーズシーンで重要なポジションを占める(占めていた)バンドがこぞって所属しており、レーベル買いしても満足できるクオリティーのバンドばかりでした。実際、レーベルのコンピレーションアルバムがリリースされたときは大きな話題となり、各販売店で売り切れが続出していたのを覚えています。もちろん、僕もリリース直後に速攻で入手しました(タイでは、CDなどのフィジカル音源はすぐに廃盤になる傾向があり、欲しい音源はすぐに入手しないと、その後、入手が超絶困難になります。詳しくはこちらのコラムで)。

解散しちゃって残念だなぁ、本当の意味でのインディペンデントなインディーズレーベルがひとつ無くなっちゃったなぁ、と、解散から5年以上経った今でも悔やまれます。復活の日を密かに待ち望んでいます、清水さん。

 

※Music Lane連載との連動プレイリストも合わせてどうぞ。今回ご紹介の楽曲は72曲目以降になります。

Music Lane連載 連動プレイリスト「めくるめくタイインディーズの世界」

 

■執筆者紹介

Ginn

タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。

 

● dessin the world

・Official Site: https://dessin-the-world.jimdosite.com

・Facebook: https://www.facebook.com/dessin.the.world

・Spotify: https://open.spotify.com/user/uhf7xnxdo35hwzlxngedl8f4l?si=6107a787d5424019

 

● Faustus

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