フィギュアスケートでいうところの試合後のキスアンドクライのような曲だと思った。
試合後の得点を待つドキドキや力を出し切れずに悔しがる姿、良い結果も良くない結果もそのリンク脇で受け止める姿を、観客は選手の努力を讃えて見守る。私はその観客のような目線でこの曲を聴いた。
穏やかに目の前にいる”あなた”を、”あなた”に相対する”自分自身”までも穏やかな愛情で包む曲だ。
この8月末から開催される、バスケットボールワールドカップ2023の開催地のフィリピンのマニラ、インドネシアのジャカルタ、そして日本の沖縄市コザの各都市で活動する5人のアーティストで作り上げた”Love Live Life”について少しお話を。
スポーツ、と聴いて思いつく曲は甲子園で演奏される吹奏楽の定番曲、サッカーやボクシングなどの選手の入場曲、オリンピックのテーマ曲…各自パッと思い浮かぶ曲は誰にでもあると思う。
でも、それらの曲とこのLove Live Lifeは性質は全く異する。
自分自身を鼓舞する勇ましさではなく、かといって勝利を称えるファンファーレのようなド派手さがあるわけでもない。
スポーツの勝ち負けとは関係なく、目の前にいる相手と真っ直ぐ向き合おうとする深い愛情を纏う。
楽曲制作のベースに新時代への希望や相互理解がテーマにあるとライナーノーツを見て納得。この曲を聴いて勝ち負け、勝利などを想像するのは難しい。
かといって軟派な曲というわけでもないのが、一癖あるこの曲の面白いところ。
日本語、(沖縄方言の)うちなーぐち、英語、インドネシアで使われるジャワ語、フィリピンで使われるタガログ語、5ヶ国語が不思議とするっと耳に入り込んでくる。決め打ちのフォーマットにそれぞれがただはめ込んで歌いました、という楽曲では決してない。
国を超えて沖縄市からマニラ・ジャカルタへ訪れての「はじめまして」から、己の本心をグループチャットで互いにさらけ出し、想いを交わしたからこその5人の心の距離の近さが表れたような、”まんちゃー(うちなーぐちで混ざる、ごちゃごちゃする、の意)’な歌詞。この一端からも伺い知ることができる。
“まんちゃー”の良さはイントロから続くWaiianの英語とタガログ語の”まんちゃー” verseに日本語英語とも違う、多くの人にとって初体験になるであろうタガログ語のアクセントの珍しさ、滑らかに言葉と言葉が繋がるラップからはじまり、
(キスアンドクライの”クライ”の部分を強く感じたのはここ)”繋いでくれたLIFEごとみーふぁい(ゆー)” ”ぬーがぬーち意味わからん、ならん、泣き寝入りなら巻き添え国のチャンバラ”と刺激強めな”まんちゃー” なverseがRude-αと¥uK-Bから日本語とうちなーぐちで繰り出される。自分らしさをつらぬく強さを持て、と訴えてくるようだ。心を抉られる。
さらに女性ボーカルTANAYUの歌声は軽やかさがありながらも、自分で自分を肯定する素晴らしさを歌い上げ、Alisson ShoreのR&Bとラップが程よく混ざった耳馴染みのよい大人びたメロディーに、自分自身が肯定される喜びを味わう。
ライブ初披露は8.26 ミュージックタウン音市場 “Our New Songlines2023” 。
5人がコザに集まり、国境を超えてコライト(共同制作)された楽曲が初披露される。
さながらこのイベント “Our New Songlines2023″は次の時代への壮行会で、この歌はそのテーマソングのよう。壮行を祝して!この曲で彼女彼らと(もちろん自分も観客として)大いに感動で盛り上り幸せを味わおうと思う。
text:サクライアヤコ
*ジャカルタ、マニラに訪れた際の旅行記、作成noteはこちらから
① https://musiclaneokinawa.com/archives/54076
② https://note.com/strada65/n/nc7cb1ffc5c5e
③ https://note.com/strada65/n/n5a2929204765
楽曲は準備が整い次第、音楽ストリーミングサイト/アプリで配信開始予定。
筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中