【Bangkok】
めくるめくタイインディーズの世界
第16回「バンコクのライブハウス事情」2024年版

 

2021年12月に「タイのライブハウス事情」というコラムを書きました。

めくるめくタイインディーズの世界第7回「タイのライブハウス事情」

 

あれから2年強が経ち、今までインディーズバンドのイベントを定期的におこなっていたライブスペースが頻繁にライブを企画しなくなってしまったり、ライブができる場所が新たに設立されたり、とバンコクのライブハウス事情も大きく様変わりしました。

そのため、2024年版として、また、バンコク限定の内容であるため、「バンコクのライブハウス事情」と題し、今現在でタイインディーズのライブが見れる場所をまとめていきたいと思います。なお、前回のコラムにて書き記した内容の一部については、加筆・修正しつつ書き残しています。

 

また、以下で紹介する場所も含め、インディーズのライブが見れる場所、インディーズの音源を扱っているCD/レコードショップ、楽器屋、各所周辺のカフェなどについてまとめた地図「Bangkok Indies Music Map」を作っています(気が向いたときに更新)。

バンコクにお越しの際は、こちらの地図を片手に、生のタイのインディーズシーンに触れてみてください。

 

 

 

さて、本題です。

タイの街を歩くと感じると思うのですが、タイって街中での音楽と人の距離が近いんです。デパートでも、レストランでも、バーでも、そこらじゅうで生演奏してます。しかも結構な爆音で。しかもチャージフリーで。

ちょっと散歩すれば出くわすほど生演奏の環境が充実しているのに、タイにライブハウスは(ほぼ)ありません。不思議ですよね。もうちょっと付け足すと、タイに日本式ライブハウスは(ほぼ)ありません。

Wikipediaでは、ライブハウスについて、以下のように記載されています。

 

ライブハウス(和製英語: live-house)は、ロックやジャズなどのライブやその他イベントを行う、比較的小型で立ち見中心のコンサートホール、または可動式テーブル席を置く飲食店のこと。俗に「ハコ」(箱)とも呼ばれる。

 

日本のライブハウスって、音響設備が整ってるし、照明機材もばっちりだし、ステージもあるし、楽屋もあるし、アンプやドラムセットなどの機材もちゃんとメンテされてるし、演奏する側も音楽を聴く側も、双方にとって良い環境で音楽を楽しめる場所だと思います。さらに、サウンドエンジニア、照明エンジニア、ステージスタッフ、ドリンクスタッフ、チケット担当、と、必要なスタッフがライブハウス側にいます。

日本でライブをやっていた頃は、それが当たり前のことだと思っていて、どんなに恵まれた環境で演奏ができていたのか、知る由もありませんでした。

 

タイでのライブ環境

タイにきて、あれは最上級に恵まれた環境だったんだ、ってことを思い知りました。

 

2008年当時、タイインディーズバンドのイベントが盛んにおこなわれていた「Noriega’s」。写真はタイのロックバンド「Abuse The Youth

 

もう十数年前のことになりますが、タイでの最初のライブは、繁華街の外れにあった小さなバー。ステージなんてありません。フロアの端っこのほうに機材がポンと置かれているだけ。

バーのサイズに合わせたと思われる小さくて古びたアンプからは、エフェクターかましてないのにオーバードライブがかかったような音がでてくるし、ドラムのシンバルは基本全部割れてるし、というか割れたライドシンバルと錆びついたハイハットしかないし、ドラム用の椅子はなくて高さ調節ができない普通の椅子が置いてあるだけだし、モニターなんかあるはずもないし、「これが海外でライブするってことか」と、感慨深くなった記憶があります。

今はだいぶ環境が整い始めていて、良い状態の機材で演奏できたり、モニターが備わっていたり(系統が分けられなかったりもしますが)、良い環境で演奏できることが増えました。ただ、それでも、日本のライブ環境と同じレベルか、というと、だいぶ差はあります。

でも、インディーズが演奏できる場所が極端に少ないバンコクでは、どんな環境であっても、それに適応してライブするしかないんです。自分のスキルを高めて、どんな環境でも最高のパフォーマンスできるように鍛えるしかないんです(自戒)。

アメリカやヨーロッパなどへツアーしにいったバンドとライブ環境について話をしていると、バンコクの様子とそんなに遜色ないといったような話を聞きます。海外のバンドを見ると「出音が強いなぁ」と思うことが多々あるのですが、それは、こういった環境(自分で出音を強くしないと音が前に出ていかない環境)で育ってきたからなのかな、と思います。

 

タイのインディーズバンドはどこでライブをしているのか?

上記で「タイって街中での音楽と人の距離が近い」と書きました。ただ、デパート、レストラン、バーなどで演奏しているバンド・ミュージシャンは、タイで知名度があって持ち曲が有名なバンド・ミュージシャンや、海外やタイの有名曲のコピー・カバーバンドがほとんどです。客寄せのためだったり、BGM代わりだったりなんですよね。

一方で、インディーズバンドが自分の楽曲を演奏できる場というのは限られていて、だいたいは、インディーズ音楽に理解のあるオーナーが経営しているライブバーや、中小規模のイベントスペース(屋外・屋内)での活動がメインとなっています。その数は、日本と比べると相当少ないです。また、ここ近年、「ライブを見ることをメインにした場所」、つまり、ライブハウスとして営業をおこなっている場所が現れてきたものの、まだまだ数えるくらいです(でも、タイインディーズシーンにとっては大きな希望です)。

そのため、巷でインディーズバンドのライブにたまたま出くわす、ってことはそうそうありません。なので、ここで、インディーズバンドのライブが見れる場所をいくつか紹介します。

 

Blueprint Livehouse

2023年3月にオープンしたライブハウス「Blueprint Livehouse」。名前に「Livehouse」とついているだけあり、日本のライブハウスと同じく、音楽をメインに据えた場所として運営しています。平日にもイベントを開催しており、様々なジャンルの音楽を楽しむことができます。

 

タイ産メロコアバンド「Electra Complex

 

キャパは200~250人と、今までバンコクにはなかったサイズの場所。タイインディーズシーンで活動するミュージシャンたちで運営されており、タイ国内のインディーズバンドはもとより、海外バンドの受け入れも盛んにおこなわれています。

バンコク中心部のプロンポン地域に位置し、BTS(高架鉄道)の「Phrom Phong」駅より徒歩20分弱、車・バイクで5分ほどの商業施設「A Square」内にある室内サーフィン場「Flow House」の2階。

 

Noise House Lat Phrao

2023年8月にオープンした新たなミュージックスペース「Noise House Lat Phrao」。音楽にまつわる様々なコミュニティスペースとして運営しており、ライブイベントはもちろん、ワークショップや音響機材の修理など、音楽にまつわるあれこれを企画しています。

 

最近バンド名を改名したスリーピースパンクロックバンド「Barber Dead

 

ロックやポップな音楽から実験的な音楽まで、幅広いジャンルのイベントを開催しています。

オーナー陣のうちの一人は、老舗レーベル「Panda Records」の創始者であり、エレクトロニカノイズポップ「Stylish Nonsense」のメンバーでもあるPokさん。今では伝説となっている超自然派野外音楽フェス「Stone Free Music Festival」や、マーケットと音楽の融合フェス「Noise Market」、バンコクの空き地でゲリラ的におこなうライブイベント「Bangkok Street Noise」などなど、多くのイベントを立ち上げてきています。タイインディーズシーンを今日まで支えてきている立役者。

バンコク郊外のワントーンラーン地域に位置し、最寄り駅はイエローラインの「Lat Phrao 101」駅。駅からは車で10分ほど。

 

Speakerbox

Thong Lor通りの一番奥(Phetchaburi通り側)の右側、廃墟のようなビルの入り口脇に位置するライブバー「Speakerbox」。

 

日本でも音源リリースしているガレージロックバンド「Hariguem Zaboy

 

バンド系ライブが盛んに企画されていて、また、持込イベントも多いので、様々なジャンルのライブを見ることができます。ステージがないので、日本でいうところのスタジオライブっぽい雰囲気を感じることができ、ライブを間近で体験できます。

BTS Thong Lor駅から車で5分くらい(混んでなければ)。

 

Brownstone

On Nut通りをずずっと直進していった辺りにあるイベントスペース「Brownstone」。

 

タイから世界へ羽ばたくハードコアバンド「WHISPERS

 

敷地はいって左側の倉庫でイベントやったり、敷地はいって正面で屋外イベントやったり、敷地はいって右側の大きめの練習スタジオでイベントやったり、と、多彩な使い方が出来るスペースです。

ロック、ポップなどはもちろん、ポストロックやハードコア、ノイズ、サイケなどなど多岐に渡ったイベントが開催されています。基本、イベントがあるときにしかオープンしていません。

BTS On Nut駅から車で15分くらい、On Nut soi 25の手前に位置しています。

 

JAM

キャパ20人くらいの小さなライブバー「JAM」。

 

 

コロナ禍中にオーナーが変わり、音楽イベントが頻繁に開催されるようになった矢先、ご近所とのトラブルでしばらくの間イベントを打つことができませんでした。が、去年末にそのご近所さんが引っ越し、今年にはいってから音楽イベントが復活し始めています。

ノイズ、エクスペリメンタル、ハードコア、ポップ、ロックなど、幅広いジャンルのイベントが開催されています。また、バーとして運営しているので、イベントがない日も営業しています。

BTS Surasak駅から徒歩5分くらい。

 

DECOMMUNE

Thong Lor地区から民主記念塔近くに移転したライブバー「DECOMMUNE」。

 

タイのインディーズで活躍するバンドメンバーで結成されたロックバンド「Salad

 

バンドイベントのみでなく、DJを招いてのクラブイベントも盛んにおこなわれています。

場所は民主記念塔近くなので、市中から車での移動になるかと思います。

 

イベントのチェック方法

タイではオフィシャルWebサイトを持っているライブハウス、ライブバー、バンドはほとんどなく、FacebookやInstagramなどのSNSで情報発信することが多いです。

上記のライブハウス、ライブバーだったり、お気に入りのバンドやプロモーター、イベンター、所属レーベルのオフィシャルSNSをフォローしておけば、イベントのチェックができるかと思います。

 

どうすればタイでライブができるのか?

このコラムを読んでくれている方のなかには、海外進出を考えているバンド・ミュージシャンの方もいらっしゃるかと思います。なので、ここでは、どうすればタイでライブができるのか、いくつかの方法を提示したいと思います。

 

2017年、当時バンコクで一番勢いのあったライブバー「PLAYYARD」での日本のロックバンド「LOSTAGE」のライブ。

 

色んな方法がありますが、自分から能動的に動く場合、だいたい以下に集約されるのではないでしょうか。

 

・ライブバー・ライブハウスと交渉
・地元のバンドと交渉
・地元のイベンター・プロモーターと交渉
・出演者を募集しているフェスに応募
・自主企画を実施

 

もちろん、タイ側からフェス・イベントに招聘される、といった場合もあるでしょうし、実際にそのようにタイでライブをおこなった日本のバンドもいます。ただし、大変狭き門で、基本的に招聘される日本のバンドというのは「日本での知名度が世界・アジア・タイにも轟いており、タイでもイベントが成立するくらい集客力があるバンド」となります。しかも、日本からバンドを呼ぶ規模のフェス・イベントは年に何十本もあるわけではありません。

順番が来るのを待ってられないので、上記のように能動的に動き、自分の手でライブの機会をもぎ取りたい、という人を応援するため、具体的な方法を記していきます。

 

なお、上記いずれの場合かでタイでのライブが実現したとしても懸念はあります。集客です。

タイに行ってライブをする、ってこと自体は、実はそんなに難しくないです。ですが、多くのタイの人たちにライブを観てもらいたい、となると一気にハードルが上がります。

ライブバー・ライブハウスのプロモーション力が凄い、とか、イベントを組んでくれた地元バンドが現地で知名度のあるバンドだった、とか、そういうのがあれば集客面は安心できるかと思います。そうでない場合、タイでライブをおこなう前に、現地での知名度を上げて集客できるよう、まずは自分達で仕掛けてみるのもいいかもしれません。現地での知名度向上については、こちらのコラムを参考にしてみてください。

めくるめくタイインディーズの世界 第5回「タイでファンを獲得するためにしておきたいこと」

 

・ライブバー・ライブハウスと交渉

上記で紹介したようなライブバー・ライブハウスに連絡を取り、「●月頃にタイにいくので、イベントを組んでくれないか?」と交渉する方法です。来タイ半年前くらいから交渉すると時間にも余裕があっていいかと思いますが、3ヶ月前くらいからの交渉でもいけるかと思います。ライブバー・ライブハウスのオフィシャルSNSページなどから英語でメッセージを送り、やりとりしてみてください。

交渉の際は、自己紹介のためのプロフィール資料やライブ動画の送付を忘れずに。プロフィール資料の作成方法や、プロフィール以外に必要な資料については、以下のコラムを参考にしてみてください。

めくるめくタイインディーズの世界 第4回「コロナ禍の今のうちに海外進出に向けてやっておきたいこと」

 

・地元のバンドと交渉

上記の方法とほぼ同じですが、地元のバンドにイベントを組んでもらえるよう交渉する方法です。すでに交流のある、もしくは、今後交流したいバンドにコンタクトを取り、訪タイの日程を伝え、イベントを組んでもらえるようお願いしてみましょう。

この場合、地元バンド側でライブバーと交渉する必要があるため、上記のようにライブバーと直接交渉したほうがライブ実現まで早いように感じるかと思います。実際、ライブバーと交渉したほうが、タイでライブを実現すること自体は早いです。ただ、ライブバーに企画を任せる場合、ブッキング担当に人脈がなかったり、人脈はあるけど自分達とは異なるジャンルにしか伝手がなかったりすると、ちょっと的が外れたブッキングとなる可能性が高く(それはそれで面白いのですが)、イベントの集客に関わってきます。

地元バンドにイベントを組んでもらえれば、少なくとも、自分が音楽性を気に入って交流している・しようとしているバンドとは一緒にライブができますし、交流も深まるかと思います。また、そんなバンドが企画してくれたイベントであれば、共演バンドやお客さん含め、そこから繋がっていく縁もあるでしょう。

 

・地元のイベンター・プロモーターと交渉

こちらも上記の方法とほぼ同じです。地元のイベンター・プロモーターにコンタクトを取り、イベントを組んでもらえるようお願いしてみましょう。ポイントとしては、自分の音楽性に合ったイベントをおこなっているイベンター・プロモーターなのかどうかです。自分の音楽性と親和性のあるイベントを組んでいるようなイベンター・プロモーターなのであれば、交渉が成立する可能性は自ずと高くなります。

交渉の際は、自己紹介のためのプロフィール資料やライブ動画の送付を忘れずに。

 

・出演者を募集しているフェスに応募

日本や他の国と同じように、タイでも音楽フェスが盛んに開催されています。基本的には公募はしていないのですが、タイ初のショーケースフェスである「Bangkok Music City」などは開催時期が迫ってくるあたりで出演バンドの募集をかけていました。新たなフェスも次々と生まれているので、フェスや音楽メディアのオフィシャルSNSをフォローして、情報を追ってみてください。

タイ以外の国については、Music LaneのWebサイトでもニュースリリースが発せられてますので、こちらもこまめにチェックしておくと、色んな情報が入手できるかと思います。

 

・自主企画を実施

日本で自主企画をおこなったことがある方であれば、タイでも自主企画をやれるんじゃないか、と思う方もいるかもしれません。ただ、書いておいて難ですが、これは相当ハードル高いのでやめた方がいいです。

日程を決め、場所を確保し、スタッフを確保し、共演バンドに声がけをし、フライヤー作って、プロモーションをする、というのが最低限しなくてはならないことです。これを全部タイ側とおこないます。基本は英語でおこなうかと思いますが、相手側の英語得手不得手や、細微に渡る詳細の伝達などを考えると、どうしてもタイ語が必要な場面もでてきます。場所を確保というだけでも一苦労で、そもそも日本のライブハウスを借りるのとは勝手が違いますし、仕組みも違いますし、いちいち交渉しなくてはなりません。

また、イベントスペースを借りてやる場合は、機材もステージもない、ただのスペースを借りることになるので、全部自分で手配することになります。ステージ、音響機材(スピーカー、モニター、PA卓など)、照明機材、演奏用音響機材(ドラムセット、アンプ、マイクなど)、サウンドエンジニア、照明エンジニア、ステージスタッフ、チケット担当、などなど、全部自分で手配します。手配が終わったら、ステージ、そして照明、そして音響、と設営のタイムテーブルを組み、チケット担当やステージスタッフの入り時間を決め、実施してもらう内容のブリーフィングをし、それをやりながら当日オープンギリギリまでプロモーションもおこないつつ、オープンしたら不測の事態に備えて各所に目を光らせ・・・、と、言葉で尽くせないくらい大変です。

なので、もう一度言いますが、書いておいて難ですが、これは相当ハードル高いのでやめた方がいいです。それでも気合入れてタイで自主企画やりたいんだ、という方がいるのであれば、協力はできませんが応援します。

 

※Music Lane連載との連動プレイリストも合わせてどうぞ。今回ご紹介のバンドは105曲目以降になります。

Music Lane連載 連動プレイリスト「めくるめくタイインディーズの世界」

 

■執筆者紹介

Ginn

タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。

 

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