【Column】
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.25
縁深くも遠い台南への道のり…!台湾 浪人祭 Vagabond Festival レポート!前編

 思えば、台湾だけではなく日本国内の旬な出演者の充実ぶりから「いつか行きたい」と思い焦がれていた音楽フェス。毎年10月にフェスの写真がSNSに挙がるたびに、いつか行くんだと思っていた音楽フェス。私にとっての台湾 浪人祭 Vagabond Festivalは、他の人と比較してもかなり思い入れの強い音楽フェスでした。
 そんな折、沖縄 MusicLaneFestivalOkinawa2024取材中に、Famous JapaneseのボーカルHassy や、TOSHのサポートDJとして参加していたEijiHarrisonから、浪人祭 Vagabond Festivalと同じ台南市で開催されているLUC fest 貴人散歩に出演した際に感じた、台南市の伝統や文化を慈しむ土壌の素晴らしさを教えてもらい、サクライの台南市を訪れることへの憧れはさらに高まります。そして、2024年にデリゲーツとして浪人祭 Vagabond Festivalを主催する笨道策展有限公司からやってきたpow 石包 さんとの出会い。自分は台南市に誘われていると思わずにはいられませんでした。
 今回参加して改めて浪人祭 Vagabond Festivalの良さを挙げるとすると、

浪人祭 Vagabond Festivalの特徴は4つ

1⃣ フェスティバルを愛するファンの熱量
2⃣ 移動しやすい会場とホスピタリティ
3⃣ ビーチクリーン活動をはじめとしたエコフレンドリーを掲げたゴミの少ないクリンリネス
4⃣ 台湾国内外から集まるジャンル豊かなアーティスト(大御所・新進気鋭含む)。
の4点。日本のお隣、台湾の音楽フェスがちょっと気になる人はぜひ読んでみてください。
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1⃣ フェスティバルを愛するファンの熱量

 会社の有給休暇の申請をし、意を決して臨んだ7月のチケット発売日、時差1時間の時間と通信距離の壁を乗り越え日本国内からなんとかチケットをGET(詳しくは前々回のコラムを参照)。第1弾出演者のみ発表された状態で、チケットは発売直後30分で即完売!これだけでも人気の高さが伺えます。
 音楽フェスのチケットが手に入った後は、既にパスポートは持っていたため、航空チケットやホテルの手配、海外SIMの空港受け取り手配などを順次進めていきます。
 今回は初の海外フェス参加、初の海外1人旅ということもあり、沖縄発 台北・桃園国際空港ではなく、会場までのアクセスのしやすい、(沖縄からは1日2往復出ている)沖縄→高雄便を予約。(これが今回の大番狂わせになるとはこの時思いもしなかったわけですが。)
  10月上旬、台風18号クラトーンが会場の台南市と、空港のある高雄市に記録的な大雨と強風災害を引き起こします。仕事が手につかないほど、台風が上陸しないよう願った開催直前、主催者から台風の影響による中止・延期を含む4パターンの開催プランの検討と、最終決定を前日の夜22時に告知することがリリースされました。ギリギリまで判断を遅らせることに対し、賛否が分かれそうなこの主催者の発表。台湾現地の参加者の反応はというと、その判断を好意的にとらえ、主催者を応援するメッセージや励ましでThreadsやInstagram・Facebookは応援コメントがあふれかえりました。この出来事も、台湾のファンに待ち望まれるフェスなのだと、熱量の高さを証明しているようでした。台風の勢力は上陸当初強いものでしたが、山脈にぶつかり威力が弱まり消滅したことで、前日夜に4つの選択肢の中から金曜日1日目の開催中止と土日2日間にタイムテーブルを再編成し開催されることになりました。

決断のとき

 しかしサクライにはさらなる試練が続きます。同日夜には、サクライの予約していた那覇発高雄行きの飛行機の欠航が決定(パニック!)。サクライに残された選択肢①参加をあきらめるか、②欠航していない台北 桃園国際空港で航空チケットを取り直すかーここまで、台風の影響で高雄国際空港は直近3日間欠航が続き、台湾行き航空チケット価格は軒並み高騰!どうする?サクライ?!

 

 覚悟を決め、今回どうしても見たい巨大的轟鳴 Gigantic Roarの復活ステージ、今年リリースのepが素晴らしかった穆Murky Ghost、台湾にいても見るチャンスがめったにないであろう、YELLOW黃宣9m88のコラボ曲披露のチャンス…など、豪華なアーティストを何が何でも見たい!その想いで意を決して当初の選択肢から外した台北 桃園国際空港のチケットを予約。出発時間が早まったため荷物を大急ぎてパッキングし、出発しました。
 緊張と興奮と混乱で一睡もすることなく、那覇空港から台北 桃園国際空港→地下鉄で台北駅→新幹線で高鐵台南駅→連絡バスで台南市内…と空港からホテル到着までの移動時間なんと11時間!!!先に台南入りをしている Date FM 「Asian Breeze」のパーソナリティ竹内将子さんが長い旅路の間、励ましてくれていなかったらどうなっていたか…!
 翌日はタイムテーブルの再編成により、チケット引換が朝8時から、開演が朝9時半〜終演予定22時という前代未聞の長丁場。遠出をせずに近場で食事を済ませ就寝しました。

2⃣ 移動しやすい会場とホスピタリティ

 翌朝は、朝8時半にシャトルバスに乗るため台南バスターミナルへ。タイムテーブル変更により、シャトルバスもワゴン車のピストン輸送に変更となっていました。当初計画3日間で8万人以上を動員するフェスとは思えないほど柔軟な対応に驚きながら、会場に到着。
 到着した瞬間、私は主催者の何が何でもフェスを成功させようとする覚悟とそのホスピタリティに胸を打たれてしまいます。
 前日まで台風の影響があった会場だという事を想定し、長靴、雨具ズボン、大量のジップロック…泥だらけになる通称“田植えフェス”の装備を準備していたサクライ。その意に反して入場列に並ぶと靴の底面が泥で一切汚れないコンディションの地面が広がります。
 その答えは もみ殻。会場一帯にもみ殻がふかふかと敷き詰められているではありませんか!泥はねでズボンが汚れることもありません。
 より快適にとお客さんを想う、主催者のホスピタリティにチケットを交換する前から感動してしまうサクライ。荷物検査を終え、チケットをリストバンドに交換し、いざ会場内へ。
 会場となる觀夕平台旁大草皮は旧来、港湾沿いの飛行機滑走路跡地。平坦で高低差もなく、ステージもコンパクトにまとめられ、主通路もかなり大きく確保されています。そのおかげか、フェス中にはハンディを持つお客さんも車イスや歩行器、杖で自由に行き来しながら楽しんでいる姿を頻繁に見かけることができ、福祉的配慮にも唸らされます。
 メインの大小6つのステージ間も端から端まで約15分程、スムーズに移動できる会場です。
 シンボル的なアーケードを通り抜け、目の前にはおよそ1.5万人を収容する2つのステージ“鯤鯓ステージ(赤)”と“劍獅ステージ(青)”、少し離れた場所に中規模の“風獅ステージ(緑)”、“金鶴ステージ(黄)”と“小嘻門ステージ(紫)”。様々なカンファレンスやダンスバトルなど企画が行われる小ステージ浪人塾が設置されています。
 旧来 滑走路跡地ということもあり、日陰になるような樹木はありませんが、会場周辺をテントがぐるりと囲み、疲れた際にテント内で休むことが可能になっていました。台風明けのフェーン現象により、灼熱の夏フェスかと見紛うほどの気温となった両日、日差しを避けるスペースがあることは体力消耗を抑えることができてとても良かったです。

3⃣ エコフレンドリーを掲げたゴミの少ないクリンリネス

 フェス開催前のビーチクリーン活動をはじめとして、浪人祭 Vagabond Festivalはエコフレンドリーを強く打ち出していることも大きな特徴です。ビーチクリーンもただ清掃するだけではなく、来年のチケット優先予約の権利をつけたり、仮装コンテストなども盛り込みイベントを盛り上げます。
 フェス当日は水筒や食器は持参を推奨、持っていない場合はデポジットを支払い、容器を借りて利用することで、ゴミが極力出ないシステム。地面に箸やビールの紙コップが散らばることなく、ポイ捨てされたゴミも見当たらず、清潔に快適に過ごすことができます。
 加えて、台湾は下水道事情が日本ほど良くないので、トイレットペーパーがトイレに流せない場所が多いのですが、会場内に設置された仮設トイレは日本のフェス同様、そのままトイレに流すことができて安心して利用できました。

4⃣ 台湾国内外から集まるジャンル豊かなアーティスト

 朝9時30分いよいよ開演です。サクライ的には、2025年1月に沖縄で開催されるMusic Lane Festival Okinawa 2025への出場が決まっている彼女を見るべく風獅ステージ(緑)へ。
公館青少年GGTEENS ft.林潔心ddkogi88のステージからスタート!
 公館青少年GGTEENS はツインボーカルが特徴の大学生卒業したてのポップロックバンド5人組。先月9月には渋谷で来日公演も開催されています。爽やかなメロディと、男女ボーカルのコーラスメイクでフェス1発目の朝にぴったりな爽やかな演奏が続きます。自分たちのやりたいことと、ストレートな直球のポップセンスがぴったりと合わさり、見ている観客サイドにもバンドとしての雰囲気の良さ、足並みの良さも感じさせ思わずサクライも笑みがこぼれます。
 そんな折、MC中に登場した小道具はカチューシャと、セーラ服のリボン。シュシュに見立てたヘアクリップ。ここでゲストボーカルの林潔心ddkogi88が呼び込まれステージに登場します。
 林潔心ddkogi88はソロ活動前、台湾のAKB姉妹グループ、AKB48TeamTPに所属していたところ、ラップのフロウの良さや歌唱スタイルで頭角を表し、チームを飛び出しソロ活動を始めた経緯があります。どの小道具もAKBの歌に登場するものばかりで、言葉がわからなくとも笑わずにはいられない。同年代だからこそできるイジりや和気藹々としたMCの後、公館青少年GGTEENS ft.林潔心ddkogi88としてのステージを和やかに青春を謳歌するように披露していました。突き抜ける青空にこれは気持ちいい!!と最後の1曲が終わり空を仰いだ瞬間、隣のステージからものすごい歓声が!同じ時刻にステージ演奏中の滅火器 Fire EX.がまだステージが終わっていない?!まだ間に合うかも!と駆けていくサクライなのでした。
 …後半も、サクライが観たステージと、感じたことについてレポートしていきます。お楽しみに!
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筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 2025応援団(MLFO2025playlist随時更新!)
Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中 。
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