去る2/28から3/2の3日間、タイ・バンコクにて国際ショーケースフェスティバル「Bangkok Music City 2025」(以下、BMC)が開催された。タイ国内のバンド・アーティストやDelegatesはもとより、海外からのバンド・アーティストやDelegatesも6年ぶりに招致された。
開催初回の2019年は今回と同じく海外からのDelegatesとバンド・アーティストを招致して大々的に開催された。その後、コロナ禍に見舞われ、タイ国内バンド・Delegatesのみでの開催や、オンラインでの開催、以降数年は開催を見合わせていた。
Music Lane主催の野田さんからイベントレポートが届いている。
イベント当日、どんなことがおこなわれたのか、どういったDelegatesが参加していたのか、など、当日の雰囲気が垣間見れる。
【Report】”Bangkok Music City 2025″
https://note.com/strada65/n/n65af6f345c3a
今回のBMCでは自身のインストロックバンド「Faustus」で演者として参加する機会に恵まれた。
今回のコラムでは、イベントやライブのレポートではなく、ショーケースフェスに出演する演者として、参加にあたってどのようなことをおこなったのか、そして、どういう結果が得られたのか(詳細はぼやかします)、ということを、以前書いたコラム「ショーケースフェスティバル参加の心得」に照らし合わせながらお伝えしたい。
以前寄稿したコラム「ショーケースフェスティバル参加の心得」。「海外進出のチャンスを掴むこと」を主目的としてショーケースフェスに参加するにあたり、どのようなことをおこなえばチャンスを得られやすくなるのか、「事前準備」「イベント当日」「事後フォロー」に分けまとめている。
もちろん、今回実施したことで得られた結果は、あくまで今回のBMCではそうなった、と言うことでしかない。他のショーケースフェスに参加の際、同じことをしたからといって同じ結果が返ってくるわけでもない。汎用性がなく、なので自身の体験を共有する意味はないのではないかとも考えた。
ただ、「ショーケースフェスに初めて参加してみようと思っている」「参加したけどどうすればいいかよく分からなかった」といったバンド・アーティストの皆さん、レーベル・マネジメント関係者の皆さんにとって、何かのヒントになれば良いと思い、寄稿することにした。数ある体験談のうちの一つの例ということで、読み進めてもらいたい。
書いているうちに、あれもこれもと詰め込んでいたら長文になってしまったので、三編に分けてお届けする。今回はその前編。
※中編・後編は以下のリンクからご覧ください。
中編:https://musiclaneokinawa.com/archives/56119
後編:https://musiclaneokinawa.com/archives/56129
前コラム内「ショーケースフェスへの出演方法」に対して今回実施したこと
だいたいのショーケースフェスでは参加バンド・アーティストを公募しています。なので、出演したいショーケースフェスがある場合、そのフェスのWebサイトやオフィシャルSNSをフォローしておき、公募が開始されたら応募しましょう。
(前コラムより引用)
BMC公式SNSは、開催初年度からずっとフォローしている。そのBMC公式SNSにて去年の11月に応募の告知がなされた。僕らは告知が始まってすぐに応募した。BMC公式SNSで公示された応募用Googleフォームにアクセスし、必要情報を入力することで応募となる。
Credit:Bangkok Music City
応募の時点であらかたのバンドの情報を記入する必要がある。簡易プロフィール、メンバー構成、公式SNS、連絡先などの基本情報はもとより、EPK閲覧リンク、ライブ演奏ビデオなどの提出が必要だった。
ここら辺の情報は普段からまとめておきたい。できれば、定期的にアップデートしておきたい。ただ、月一などで更新するのは面倒なので、こういったショーケースフェスに出演する際や、音源リリースがありメディアへプレスリリースを送付する際など、なにかのきっかけごとに更新すればいいと思う。
※プロフィール資料作成についてはこちらを参照
応募してから待つこと3ヶ月ほど、年が明けた2025年の1月後半にイベントチームより連絡が来て、出演することが決まった。
前コラム内「ショーケースフェスへ出演するにあたりやっておきたいこと」に対して今回実施したこと
ショーケースフェスに参加する目的は、ずばり、「海外進出のチャンスを掴むこと」かと思います。
その海外進出への道を開いてくれるかもしれないDelegatesに自分たちを知ってもらう、覚えてもらう、ライブを観てもらう、機会をもらうためにはどうアピールすればいいのか。
(前コラムより引用)
「Delegatesに自分たちのライブに足を運んでもらう」「先々のチャンスに繋がるアクションを多面的・継続的におこなう」ことを主眼に、以下をおこなった。
事前準備
・Delegates調査
自分が進出したいと思っている国から来ているDelegatesはちゃんと抑えておきましょう。
(前コラムより引用)
BMCの公式ページにはDelegates一覧ページがあり、国別に抽出できる機能もついていた。
僕らのバンドには、近年中にツアーに行きたいと思っている国が数ヵ国ある。
ターゲットとしている国から来るDelegatesを全員調べ、自分たちがやりたいと思っていることと親和性のある事業を営んでいるDelegatesに絞る。Delegates各ページにはメールアドレスも載っているので、自作の連絡リストに追加した。この連絡リストは、こういったイベントがあるごとにアップデートしている。
また、イベント期間中に会場のどこかで遭遇することがあるがしれないので、名前、所属、役割、顔写真などをまとめてスマホに保存しておく。
・Delegatesへメール送付
片っ端からメールを送りましょう。
メールの内容としては、以下で言及するプロフィール資料を添付しつつ、短文バージョンの自己紹介と共にショーケースフェスでの自分たちの出番の日時・会場を記載し、ライブを観に来てもらうように促しましょう。
(前コラムより引用)
上記のリストを活用しメールを送る。リスト化したメールアドレスをBCCに入れて一括送信すれば手間がかからず楽なのだが、これは自分たちのチャンスを創出するためのメール。労力を惜しむ理由がない。送る内容を個別に変えながら一人一人にメールを送る。
メールには、自己紹介、自分のバンドの紹介、音源リンク、SNSリンク、EPKリンク、そしてBMCの出演日時・出演ステージを載せ、ライブに足を運んでもらえるよう促した。
ちなみに、FaustusのEPKは日タイ英の3ヶ国語で作成している。
・プロフィール資料作成+ちょっとしたお土産の用意
プロフィール資料を用意しておきましょう。
プロフィール資料を更新したうえで、イベント当日にDelegatesにスッと渡せるよう、一枚ほどにまとめておけると尚良しです。
(前コラムより引用)
以前のコラムでは、僕らのバンド「Faustus」が2019年のBMC初回に出演した際に作成した名刺サイズのプロフィール資料について記載した。
シンプルに、表面はバンドロゴ、バンド名、活動拠点、連絡先(黒く塗りつぶしてあるところ)を、裏はバンド公式Facebookページに飛ぶQRコードとYouTubeにアップしてある楽曲に飛ぶQRコード(YouTubeチャンネルへ飛ばすと、曲を選んで再生する手間がかかるので、直接楽曲に飛ぶようにしてる)を記載。
今回のBMC用に用意するプロフィール資料では、当資料だけでもバンド像をある程度把握してもらえるようにしようと考えた。
まずはサイズを検討した。Delegatesはステージからステージへと常に歩き回っているだろうし、他のバンド・アーティストからもプロフィール資料を多く受け取るだろうし、音楽関係者からも名刺を大量に受け取ることだろう。
となると、名刺サイズでは他に埋もれるし、A4やA5だと大きすぎて手持ちするには邪魔だろうし、A7だと小さすぎて情報を満足に載せられない。
ということでサイズは手のひらサイズのA6にした。また、ペラペラの紙だと本気度が伝わらないと思ったので(別に紙の厚さで本気度を測れることなんてないが)、手にした際に質感を感じられるくらいの厚紙にした。ちょうどポストカードくらいのサイズと厚みのプロフィール資料となった(以下、ポストカード)。
サイズが決まったら、次はポストカードに載せる情報の検討。
前述の「当資料だけでもバンド像をある程度把握してもらう」ということを方針とし、基本プロフィール情報をざっと書き出し、ポストカードに載せる情報を精査し、デザインとして配置していく。
情報を両面に配置することで、片面にごちゃごちゃ情報を載せないようにし、見やすくてわかりやすいすっきりしたデザインを心掛けた。表面にはロゴをどーんと配置し、各種リンクをまとめたURLのQRコード、バンド公式SNSアカウント名を配置。裏面にはバンド写真と英語バンドプロフィールの簡易版を記載した。
当初、表面にはEPKやSpotify へ直接飛べるQRコードをいくつか載せていた。が、QRコードがいっぱいあると見た目がごちゃごちゃするし、メンバーに相談したら「QRは少ない方がいい」という意見だったので、リンクまとめサービスを利用し、必要なリンクをまとめ、リンクまとめURLをQRコード化し、QRコードを一つだけポストカードに載せることにした。
ポストカードに載せるためリンクまとめサービスを利用した。
印刷は近所の印刷屋で。サイズ、白黒、両面印刷、部数(100枚作成した)を伝えて依頼。1時間ほどで出来上がった。
さて、これでプロフィール資料=ポストカードは出来上がった。ただ、まだ重要な情報が抜けている。BMCでの出演日時・出演ステージだ。これはあえて別で作成し、ポストカードにくっつけることにした。その方が目立つし、BMCで配り切れずに余った場合、くっつけた紙を剥がせば別のイベントで配ることができる。
こちらは載せる情報が少ないため小さなサイズで構わない。A4用紙に詰め込めるだけ詰め込み、普通紙で印刷し、あとは自分で切ることにした。面倒くさいけど。切った後は、出演日時を蛍光ペンでなぞり目立つようにした。面倒くさいけど。そして、ひとつひとつポストカードにホチキス止めをした。面倒くさいけど。面倒くさいけど。
(次回に続く)
■執筆者紹介
Ginn
タイ・バンコク在住15年。タイ人メンバーと結成したポストハードコアバンド「Faustus」で自身でも音楽活動をしつつ、日本とタイのインディーズシーンを支援するためのレーベル「dessin the world」を主宰。「日本の音楽をタイに。タイの音楽を日本に。」をコンセプトに、日・タイ音楽交流のための草の根活動をおこなっている。
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● Faustus
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