古都台南の街歩き
今年2024年は建都400年を記念して台南市内でさまざまな催 しが開催されていて、さらにフェス数日後に迫った雙十節( 台湾の国慶節)もあってか賑やかな古都台南。2日目の朝には、 フェスに向かう道すがら、 台南の友人のバイクの後ろに乗って会場に向かっていると、 鐘と太鼓を打ち鳴らす台湾の獅子舞ー舞龍のパレードが練り歩いて いました(ちょっと得した気分)。側を通り抜け会場へと向かいます。
街歩きも非常に面白いもので、 早朝に市場を散策していると新装開店のお店から爆竹の音、 お惣菜を売る賑やかな掛け声や、 配達のバイクのドライブテクニック、 日本では見かけない色鮮やかな果物…右に左に目と耳・ 嗅覚が忙しいものでした。 夜食を買いにコンビニに行くついでに散歩をしていると、 筋道には夜遅くまで色鮮やかな廟(神様を祀った建物) の前でお酒を飲み交わす老人たちを見つけー夕方以降は訪問を控え る慣習がある日本の神社仏閣との違いに驚かされたり。 よほど危険そうな筋道を避ければ( そのような筋道はそもそも見当たらなかったですが) 女ひとりで街歩きできる治安の良さにも今回はとても助けられたよ うに思います。
浪人祭 Vagabond Festivalのお話に戻りましょう
浪人祭 Vagabond Festivalの特徴を4つ前編でお伝えしましたが、
ステージ間を移動しやすい会場内とホスピタリティ
について、最終日にもさらなる感動が! 前日まで台風による悪路対策で会場に敷き詰められていたもみ殻が 、最終日の朝会場に到着すると、綺麗さっぱり片付けられ、 足元が元通り復元してる!!(ここまでやる⁇⁇ スタッフ寝てなくない⁈)
ホスピタリティの高さは一体何⁇驚いてばかりです。
台湾国内外から集まるジャンル豊かなアーティスト
2日間様々なステージを堪能した中でも、 印象的だった内容をトピックにしていくつかご紹介します。
前編は沖縄で公演を行ったこともある滅火器 Fire EX.のステージに駆けていったところで、終わりました。 自分が見たステージでも、 台湾の音楽好きの屋台骨になっているバンド・ アーティストを現地でリアルに体験できたことは台湾のポップスや インディーを好むサクライにとって貴重な体験でした。滅火器 Fire EXもそのひとつ。 1曲はじまるごとに屋外の空間が揺れるほど上がる歓声、 ファンの全霊込めたサビのシンガロング。 有志により掲げられるフラッグ。 ここぞというときに方々から上がる拳。 続くヒップホップレジェンド大支、 社会問題や政治的なメッセージも含めありのままを表現する拍謝少 年 Sorry Youth、 昨年日本ツアーの8割以上が台湾はじめ中華圏からのファンで会場 が埋まった草東沒有派對No Party For Cao Dong と、新しくできた台湾の友人たちは「次どこ行く?」 と相談の口数も少なく、 どんどんと観客が1万5千人以上収容の赤や青のエリアに吸い込ま れていく様子は台湾の音楽ど真ん中を強烈に感じるものでした。
招聘された日本のアーティストも圧巻のステージで観客を魅了しま す。幾度の来台公演を行い台湾のファン層の厚いGOKUMON( 打首獄門同好会)は、 演奏中バックスクリーンに流れるミュージックビデオに、 全て中国繁体字の字幕が映されるだけではなく、 台湾で猛威を振るった台風18号の被害を気遣うメッセージをはじ めとして、MC全てをリアル翻訳でスクリーンに、 話した内容をうつしだします。 演奏以上のコミュニケーションを取ろうとするメンバーの優しさを 台湾現地の人はしっかりと受け取っていて、 心にくるものがありました。
2日目、初の海外公演となった離婚伝説は、 日本の早耳リスナーを鷲づかみにした勢いそのままに、 集まった台湾の音楽愛好家の熱い拍手に、 曲ごとに演奏や演出が良くなっていきます。 彼らの得意とする都会の湾岸・アーバン感をもつポップソングは、 会場の港湾マリーナのロケーションにぴったりすぎる! 観客の持ち込んだバブルガンも絶好調にシャボン玉を吹上げてステ ージをサポートします。 終わる頃にはアンコールの拍手が鳴り止まず、 観客の挙げた両手が下がりません。 その光景は海岸に反射する西日の眩しさをさらに誇張しているかの ようでした。
台風一過の澄んだ夜空に映える中華風の衣装で登場したのは、水曜 日のカンパネラ。今回はボーカル詩羽だけではなく、 楽曲担当のケンモチヒデフミもDJとしてステージに登場し、 ベースのキック音増し増しで舞台を盛り上げます。 ボーカル詩羽の「かわいい??」の問いかけに日本語で「 かわいい!!!」と大歓声で反応する台湾のオーディエンス。 人気曲 桃太郎のパフォーマンスでは、 大きなビーチボールに入った詩羽が歌い終わっているのにも係わら ず、ドンドン後方PAテントまで詩羽がリレーされ、 まるで引き波に攫われているかのよう。そのあとは「 どんぶらっここ、どんぶらこっこ」 と台湾のリスナーの手をかりて和やかにステージまで戻ってきて、 日が暮れた海岸沿いの深い漆黒の中に光るネオンのごとき眩しさで 、ヒットナンバーを立て続けに披露していました。
新進気鋭のアーティストに出会う楽しみ
今年の浪人祭 Vagabond Festivalは音楽リアリティ番組大嘻哈時代The Rappersの爆発的人気を素地にしたHipHopやR& B系のアーティストーーーストリートカルチャーに由来をもつアー ティストが多数出演していた点が印象的でした。1日目“ 小嘻門ステージ(紫)”のトリを飾ったのは、 1月に沖縄で開催されるMusic Lane Festival Okinawa 2025への出場が決まっているラッパー艾密莉AMILIがメン バーとして参加するHipHopクルーBSB。Music Lane Festival Okinawa 2025の予習もかねてと思い、 かなり前方でスタンバイしていると… なんと艾密莉AMILI欠席!( この日はマレーシアでライブだった模様) 宝くじの7等300円に外れてしまったかのような虚しさを感じな がらも、沖縄に来る1月の本番を楽しむしかない!と思うことに。 この紫ステージではその他にも、 2019年に日本のミュージシャンVIDEOTAPEMUSIC とのコラボ曲をリリースしている女性ラッパー周穆Murky Ghostが登場。 ゲストの男性ラッパーとモダンバレエのダンサーを引き連れ、 抒情的でいて、社会へのアンチテーゼたっぷりに、 コンテンポラリー作品を見ているかのようなステージ。
someshiit 山姆は、独白のように淡々とフロウを操るポエトリーラッパー。 ロックバンドのような激しさはないながらも、 絶えず観客のシンガロングが起こります。淡々と歌い綴る、 何気ない日の1日を、 印象的なメロディやフレーズでリスナーの心を揺さぶります。 フェスで「静かに感動する」ステージは、( 賑やかなフェスとの対比もあり)印象に残りました。
そして2日目の紫ステージ大トリ。「 ダンスフロアにマイクがあったら何が起こる⁈」 をコンセプトに音楽空間を演出するDJクルー慶記KTV。台湾・中華ポップスや歌謡曲、K-popなど誰もが口ずさむことができる人気曲を中心に選曲され、DJ中はカラオケメドレーのようにフロア中にマイクリレーが行われながら観客は思い思いに踊っています。このステージの面白いのはゲストミュージシャンとその瞬間たまた まマイクを持った観客が即興デュエットやボイスパーカッションで セッションのミラクルが起こったりする、 何が起こるかわからないワクワク感! 好きなアーティストと一緒に歌って踊れてしまうかもしれないチャ ンスに胸躍らせるフロアは、 深夜のクラブのピークタイムのアッパーな活気と学園祭の後、 後夜祭の雰囲気が入り混じり日本で見たことのない光景に驚きばか りでした。
海外のフェス気になってきた⁇
沖縄の地理的問題で沖縄をはじめ地方の音楽好きにとって新潟 フジロック、幕張・大阪 サマソニに参加することさえ気軽ではないことは十分に理解してい ます。まして海外の音楽フェスなんて、 さらにハードルが高くないとは言い切れないです。 けれど今回の台南で得た経験は、 ホスピタリティの高さからはじまり、 三線の主旋律が気持ちを昂らせるジングル、 屋外で上質なスピーカーで体験する音楽や、人の優しさ、 美食と言われる美味しいフェス飯、魅力的なフェスグッズ、 ー挙げたしたらキリがない素敵な初海外フェス体験、 と日本と変わらないもの、 違いを楽しむものそれぞれの要素をもちつつ素晴らしいものでした 。台湾やアジアの音楽に少し興味がある、 自分の応援するバンドが海外の音楽フェスに出演する… どんな理由であれ、このコラムを読んでいる人で1人でも台湾・ 台南のフェスに(特に浪人祭 Vagabond Festivalに)行ってみたいな、 と思ってもらえたら何よりです。
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special Thanks
Vagabond Festival staff 李さん&林さん
オーストラリアで頑張る石包 さん
他、出会い助けてくれた優しい台湾・台南の人々!
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筆者紹介
サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。 アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・ エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 2025応援団(MLFO2025playlist随時更新!)