音楽×環境×ストリート=やりすぎ上等!な
台湾 浪人祭Vagabond Festival2025 フェスティバルレポート!
コザの天ぷら【コツのいらないアジア音楽】VOL.40

今回は台湾 台南市で10月に開催された浪人祭 Vagabond Festival2025のフェスティバルレポートを写真たっぷりにお届けします!(昨年の様子は前編後編からチェック!)

テキスト:サクライアヤコ 写真協力:笨道策展有限公司 Dustpanner Music

 

さぁ!2度目の台南の地へ!

台湾を直撃した2024年台風18号、昨年の浪人祭 Vagabond Festivalは開催日程を3日から2日+αに変更して開催するという斜め上の解決策で、当フェスクルーは台湾の音楽ファンと、業界の人をあっと驚かせた。昨年はあくまで、イレギュラー。今年こそは正真正銘の3日間フル参加で浪人祭 Vagabond Festivalを体験しよう!!と早々に心に決め、飛行機を予約し旅行の段取りを進めていく。

浪人祭 Vagabond Festival名物のアーチ門。写真撮影スポットに、集合場所になる

とことん「やっちゃえ!」感(やりすぎ!感)

浪人祭 Vagabond Festivalの何が私を惹きつけるのだろう。それはスタッフの逞しさと、楽しいならトコトン「やっちゃえ!」感溢れるコンテンツに惚れ込んでいるのかもしれない。と今なら思う。

音楽ステージ以外の企画の(良くも悪くも)幅広さ、例えば人気アーティストのアコースティックライブ付きバスツアーや、お酒を嗜みながらアーティストとのグリーティングなどとファン延髄の企画が用意されていたり、サッカーチームの子どもたちと一般参加の大人たちの本気のミニサッカー戦や、スケートボード大会などのストリート感溢れるイベントがあったかと思いきや、コンビニの1番クジならぬフェス1番クジに賑わう人々…面白そうな企画がこれでもかと盛り込まれており、正直、やり過ぎではと思うほどの振り切りったホスピタリティを体験できる。

それに加えて、彼らの根底にある「沢山の人が集まるなら、みんなで環境に良いことしたことが良くない?」という心意気はますます強度UP。

参加者各自の会場までの個別移動の環境負荷を考えて、台湾各地からの長距離シャトルバスの路線増。台南市現地の移動をスムーズにしようとCO2排出を抑えた環境性能の良いレンタサイクルのバイクを新幹線駅に配置し、誰でも利用できるように。もちろん会場内では使い捨てない食器やコップはもちろん、人気の来年のチケット優先コード付き仮装ゴミ拾いイベントも健在。
これほど主催者から環境についてのアクションと、何が何でも楽しんでもらうからね!のメッセージがコンテンツから伝わってくるのも、このフェスティバルの魅力である。

ひと手間も、二手間もかけた廃材でデコレーション(光る!)

昨年の苦労が嘘のよう…スムーズに会場に到着!

昨年参加の記憶を頼りに300キロ離れた桃園国際空港から電車と新幹線、バス…とんとん拍子に移動。ホテルに無事に荷物を仮置きして、初めてアプリでオーダーしたUber Taxiに乗り込み15分ほどで会場に到着(タクシーを待っている間に、同じ会場に行くならバイクの後ろに乗っていく?と優しい青年に声をかけてもらい、益々台湾台南が大好きになる。)。昨年の台風欠航からの11時間大移動が嘘のよう…。今年も10月とは思えない気温33度と日差しに、帽子とサングラスと首元のタオルを肌身離さず、いざ3日間のフェス体験開始!

広大な安平遙控飛行場に設置された真っ赤な鯤鯓ステージをはじめとした、特別仕様の特大ステージが6つ。それぞれに廃材を活用してデコレーションが施されている。特大のアーチ門で記念撮影を行おうと準備をしていると、特徴的な三味線のジングルと共に2万人収容の鯤鯓ステージの緞帳バーが上がった。その瞬間、誰もが手を止め、祭の開始を見ず知らずのそばにいる仲間とともに讃える、恒例の景色。

1.5万人を収容する真っ赤な鯤鯓ステージ

トークライブや、フェスおすすめの新進気鋭のアーティストが登場する浪人塾ステージ

2回目の参加だからこそ感じる浪人祭 Vagabond Festivalのラインナップのクセ

日本に負けず劣らずのフェス天国である台湾。2回目の参加の私だからこそ感じる浪人祭 Vagabond Festivalの良さは特徴的なラインナップにある。

その中でも3つ紹介すると、

1|マスロックやポストロックに強い
2|ヒップホップに強い
3|アップカミングのピックアップにめっぽう強い

 

1|マスロックやポストロックに強い

今月11月に来日が決まっている荒山茉莉Molly in Mountain

仲の良い日本のバンドDYGLとの対バンイベントも開催されるManic Sheep

緻密な楽器隊の織りなす演奏に支持が高い、台湾のインディー界隈。この強みをもって今年、渋谷SYNCHRONICITYとのパートナーシップを組んだのも納得(台湾のバンドがわからずとも、台湾版SYNCHRONICITY、とイメージすれば浪人祭 Vagabond Festivalがどんなアーティストラインナップをもってくるフェスなのかは想像し易いと思う。)。SF的でエモーショナルな5人組インストゥルメンタルロックバンド荒山茉莉Molly in Mountainや、DYGLの秋山信樹をフューチャーした楽曲をリリースしているManic Sheepなどのインストゥルメンタルバンドのステージ前に老いも若きもミドルも大集合!弦の織りなす複雑なメロディに耳を傾けている。今年1月に沖縄のMusic Lane Festival Okinawaをきっかけに当フェスへの出演が決定したインドネシアのエレクトロインストゥルメンタルバンドLittlefingersは3人フルバンド編成で登場。メルヘンチックさと、楽器の生演奏際立つ立体感のバランスが見事!5千人を収容可能な金鶴廳ステージを大いに沸かせていた。

沖縄のフェスMusic Lane Festival Okinawaへの出演をきっかけに出演が決定したインドネシアのLittlefingers

2|ヒップホップに強い

台湾の若者から支持の高いラッパーの艾蜜莉AMILI

浪人祭 Vagabond Festivalの他の台湾のフェスとの大きな違いはヒップホップアーティストの充実度(前述でインストゥルメンタルが強いといっておきながらなんであるが、尖ったジャンルを集めるのが得意なのだ。)。時代の流行り廃りを経て、人気の定番ジャンルとなった台湾ヒップホップ。浪人祭 Vagabond Festivalはヒップホップ専用の小嘻門ステージを用意する気合いの入れようで、日本のラップとはまた違う、言葉のアクセントや韻の踏み方など、音の違いを聴いているだけでも十二分に楽しいステージが続く。

今年のMusic Lane Festival Okinawaに出演したラッパー艾蜜莉AMILIのステージには特に10~20代の若い世代のファンがぎゅうぎゅうに詰めかけ熱狂的にシンガロング。MCとは裏腹の、ばちっと決めるステージのギャップに釘づけに。一方、次回のMusic Lane Festival Okinawaへの出演が決まっている、今や台湾音楽業界で飛ぶ鳥落とす勢いのラッパー山姆someshiitはフルバンド+MPCシンセサイザー編成で登場。自身の歌の内省的な静と動、そして感情を露わにするフロウをさらに舞台照明でくっきりと際立たせ、焦燥や怒りを激情を、立体感のあるバンド演奏とライティングで強烈に印象付け、観る者を虜にするステージだった。

来年の沖縄 Music Lane Festival Okinawaに出演が決定しているラッパー山姆someshiit

3|アップカミングのピックアップにめっぽう強い

韓国の映画やドラマでも俳優として活躍するシンガーソングライターKIM PUREUM

前述のまだまだ駆け出しのインドネシアのLittlefingersを台湾で沸かせた審美眼をはじめ、今回が海外初公演となった韓国の若干18歳のシンガーソングライター・俳優のKIM PUREUMもあの1日で台湾のファンを一気に増やしたことであろう。あどけなく、少し背伸びした愛らしさのある楽曲とkawaii衣装とフルート演奏を合わせた可憐なステージに、男も女も関係なく観客の心を鷲掴みにされていた(もちろん、私もその一人である)。これらの2組をはじめ、新人のピックアップが本当に上手いのがこのフェスティバル。特に、今年度肝を抜かれたのは、浪人祭 Vagabond Festival と渋谷SYNCRONICITYのコラボレーションとして開催された日本のオーディション枠でステージ出演を勝ち取った、日本のバンドユニット板歯目-BANSHIMOKU-。彼女らの演奏する同時刻に、別のステージを観ていた私は、ボーカル千乂詞音の強烈な歌声と観客のあおりに、思わず振り返り彼女らのステージを仰いだ。後方に位置するステージから台湾のオーディエンスが彼女の声に呼応し声を荒げ反応し、モッシュピットが出来ているであろう中央からは砂埃がもくもくと湧きたっている。「一体何が起こっているんだ???」と思わせる地響きと書きならされるギターに益々異様な領域がどんどん出来上がっており、その瞬間に立ち会わなければ後悔するような異質な熱量のステージ前には、他のステージからも続々と人が吸い寄せられモッシュピットの輪がどんどん密度濃く、広がっていた。今回のフェスの中でも特に印象に残るステージだった。

台湾と日本の共同オーディションで出演を決めた日本のロックユニット板歯目

板歯目のステージを夢中でみる台湾のオーディエンス

…まだ書き足りないことも沢山ありますが、ここでお知らせ。台湾 浪人祭 Vagabond Festival のフラッグシップ公演が今月11月に東京で開催決定したとのこと。

サニーデイ・サービスや、次回のMusic Lane Festival Okinawaへの参加が決定しているsomeshiit 山姆など、台湾のライブハウス即日完売のアーティストが出演が決定しています。気になる人は是非ご参加を!そして来年、本場 台湾 台南まで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

(ここで書ききれなかった沢山のアーティストについては、私のブログにも詳細を掲載していきますのでチェックしてみてくださいね!)それではまた次回!

 

《東京公演詳細》

浪人祭vagabond festival in Tokyo

日時2025年11月27日(木) 開場17:00 開演18:00

会場 代官山UNIT(東京都渋谷区)

出演

サニーデイ・サービス
ORGE YOU ASSHOLE
我是機車少女 I’mdifficult[from Taiwan]
someshiit 山姆[from Taiwan]
銀河1966 Milkway 1966[from Taiwan](opening-act)

チケット Peatix https://251127.peatix.com/view

写真協力:笨道策展有限公司 Dustpanner Music

筆者紹介

サクライアヤコ:沖縄本島やんばる在住。アジア圏のインディペンデントな音楽を愛聴する、コラム・エッセイスト。 Music Lane Festival Okinawa 2025応援団。

Instagramにて、邦楽アーティストとアジア圏のアーティストのコラボ(コライト)曲に特化した楽曲レビューを不定期更新中

 

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