【Interview】秋山信樹(DYGL)Vol.2 “アーティストとしての意識を持って示す態度。 社会の一員として、最良の選択をするという意識”

Photo : ERINA UEMURA

 今年7月に3rdアルバム「A Daze In A Haze」をリリースし、10月から11月にかけて、全19本の全国ツアーを完走した、ギターロックバンドDYGL(デイグロー)。12月25日に、ツアーのAfter Partyと題して、ミュージックタウン音市場(沖縄市)で、沖縄のアーティスト、naz.とTOSHをゲストにライブを行う。
沖縄にルーツを持つという、フロントマンの秋山信樹に、コロナ禍を経て現在に至る音楽活動や、その時々の想い、これからのビジョン、そして沖縄でのライブについて話をしてもらった。
 インタビューを5回のシリーズでお届けする。第二回は、アーティストと政治や社会との関わりについて。

*****

 パンデミックで世の中の動きがスローダウンを始めた2020年春から夏にかけて、約4ヶ月間、秋山は自らのルーツのある沖縄に滞在していた。それはバンドのツアーや制作を離れて、自らの音楽や思考を深め、次のステップに向けて新たな力を蓄えるための貴重な時間でもあった。

 その中で、音楽だけでなく、沖縄の抱える問題などにも目を向けていくことになる。

 

「勉強が全然足りていないので、偉そうなことは何も言えないんですけど。自分の家族も、政治に対して割とフランクに興味を持って話すタイプで、子供の頃から食事のときに政治の話が普通に出たりしていました。

それに僕の明治学院大学時代の同級生が中心になってSEALDsを始めたりということもあって。そうした社会運動も身近に感じていました。

沖縄滞在中、”やーぐまいプロジェクト”に関わらせてもらうようになりました。コロナ禍で家で過ごす中で、沖縄の問題に改めて興味が湧いたんです。沖縄の問題を考えることは、日本の問題を考えることですし、グローバルな社会全体を見渡す上で、沖縄は一つの縮図のように見えました。

”やーぐまいプロジェクト”のメンバーは、既に様々な活動や発信をされている方々なのですが、僕としてはまだまだ知らないことが多すぎて、どちらかというと勉強させて頂いているという感じでした。

 政治や社会のことについて考えたり発言したりすることは、とても危なっかしくて煙たいことのような空気が、日本にはあると思います。アーティストとしてそういう発信をしている人はそれほど多くないし、多少目立って見えるかもしれないですね。そもそも職業や年齢に関わらずそうかもしれません。僕自身できるだけ問題提起になることは発信できるようにと思っていますが、その問題をより正しく理解するための勉強は、全然足りていない、もっとしないといけないなと思います」

 

 日本では、アーティストが政治的なことや社会的なことに対して発言をすることは、ある種タブー視されることも少なくない。しかし、欧米のアーティストは自らの立場を明確にして、異議申し立てをすることが当たり前である。日本だけでなく、海外でも音楽のキャリアを重ねる秋山は、そうした部分をどうみているのだろうか。

 

「海外のバンドは、政治や社会に対して積極的に発言をするという点で、日本よりハードルが低い気はしますね。日本ではそうした話題は避けないといけないことみたいな空気がありますけど、向こうは政治に限らずタブーと思われる話題でも割とフランクに話しますし。それはある種、波風立てないように気を配る日本人の優しい面でもあると思うんですけど。

最近の世の中の傾向として、あまり人のことを否定したくない、否定されたくないということが強くなっているような気がするんです。でも、そのせいで意見が合わないときの、擦り合わせ方や議論の仕方があまりうまくいかない。意見が違うこと自体が悪いことのようになってしまう。議論が下手なまま喧嘩になるから、SNSやニュースのコメント欄なんかも地獄みたいになるし、建設的な議論ができない故に政治や社会のことも話しづらいんじゃないかな。

意見が違っても最後の部分でお互いを尊重できたら良いのですが、顔が見えていないと余計に難しいんですかね。100年先も、きっと人間たちの意見はずっと一つにならないし、だからこそ社会が面白い面もある。だけど意見が違う時のコミュニケーションのスキルは、もう少し伸び代がありそうですね。欧米のストレートな物言いや議論できる環境は素敵だと思うのですが、日本とは違う社会問題も多い。完璧な国はどこにもない分、いろんな国の良いところを吸収して、自分たちの良いところも大事にしたいですね」

 

アーティストとして、政治的、社会的なことに対しての態度を示すことの必要性の有無、あるいは社会の一員としての意思表示の必要性について。社会が変わるのはアーティストに頼るというより、一人ひとりが変わること。そのために必要なことは、学び続けること。

 

「アーティストだからではなく、普通にこの社会の一員として、態度を示す必要を感じます。アーティストだから、影響力があるからという力に頼っていると、逆に政治や社会問題が色モノっぽくなってしまうというか。だから、日本にいること、日本で生きていく上で何が一番、ハッピーな選択なのか。何が一番、意味のある選択なのかっていう。本当に誰しもが普通に生きていて感じることのすり合わせですよね。他人とのすり合わせっていう意味では、社会もバンドも似ているかもしれません。

 例えば、郷に入れば郷に従えって言葉があるじゃないですか。あれも使い方次第では危険な言葉だし。でも、使い方次第ではすごくリスペクトのある言葉にもとれる。そういう意味で言うと、欧米的なやり方が全部日本にはまるかといったらそうじゃない面も絶対にあると思います。でも、じゃあ日本は日本のやり方で全部OKなのかっていうと、むしろ海外との比較で見直せるところもあるはずだし、どこが落としどころなのかっていうのが政治の腕が試されるところですよね。政治参加の仕方も、欧米みたいなやり方でアーティストが動くのではなく、もしかするとちょっと違うアプローチのほうが日本に合っているかもしれない。でもそれは色んなことを試しながらしかわからないですね。

 何にせよ考えることと知ることは絶対に大事だし、それをどう表現するかっていうのはアーティストによると思うんですけど。でも、社会が変わるためには有名人に頼るというよりは、本当に一人ひとりが変わることの方が大事だと思います。だから、僕自身もアーティストとしてというより、ただ自分という人間として勉強をしたいし、その上で言いたいことは言いたい。それくらいシンプルでいたいですね。

 でも、その意見に確信がなければ、それは当然簡単には言えない。コロナ禍にあって、音楽や音楽のあり方については本当に考えさせられました。自分が正しいと思っていたことで、正しく無かったと見直すこともあった。自分の意見に確信を持つことは難しい。どこかで自分も間違っているかもしれないという余白を残しておくのは大切かもしれません。でも、仮に間違っていたらそのとき修正すればいいんですが、世の中の空気的に間違いづらい世の中にもなっていると思います。これはとっても難しい問題です。

自分の意見に確信がなかったり、勉強不足だったりしたら無理に何かを言う必要はないかもしれないけど、せめて知ること、考えること勉強はやめないほうがいいんじゃないかなと思います」

(続く)

秋山信樹(DYGL)インタビュー
Vol.1 "パンデミック前夜に感じていたバンドへの想い。
コロナ禍でのそれぞれの変化"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51792

Vol.2 "アーティストとしての意識を持って示す態度。 
社会の一員として、最良の選択をするという意識"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51796

Vol.3 "2ndアルバムの教訓を糧に、バンドとしての変化を前向きに受け入れて辿り着いた、 
新たな音楽の高み"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51810

Vol.4 "メンバー全員参加の曲作りで、作品の振れ幅はさらに大きく。 
より自分たちが納得できるサウンドに"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51815

Vol.5 "大きな手応えを得た全国ツアー。その締めくくりは、クリスマスのコザで" 
https://musiclaneokinawa.com/archives/51823

取材・文:野田隆司 / Ryuji Noda(Music Lane Okinawa)


<イベント・インフォメーション>

▶︎Live At Home from Koza City
DYGL
A DAZE IN A HAZE TOUR
ゲスト:naz. / TOSH
2021/12/25(土)ミュージックタウン音市場(沖縄市)
*ライブ配信あり

*****
「Music Lane Open Lecture Vol.5」
“アーティストが、国境を越えるべき理由”
講師:秋山信樹 / Nobuki Akiyama
アーティスト / DYGL(デイグロー)ヴォーカル・ギター
2021/12/22(水)Live house Output(那覇市)

 

カテゴリー ColumnInterview タグ .