【Interview】秋山信樹(DYGL)Vol.4 “メンバー全員参加の曲作りで、作品の振れ幅はさらに大きく。より自分たちが納得できるサウンドに”

Photo : ERINA UEMURA

 今年7月に3rdアルバム「A Daze In A Haze」をリリースし、10月から11月にかけて、全19本の全国ツアーを完走した、ギターロックバンドDYGL(デイグロー)。12月25日に、ツアーのAfter Partyと題して、ミュージックタウン音市場(沖縄市)で、沖縄のアーティスト、naz.とTOSHをゲストにライブを行う。
沖縄にルーツを持つという、フロントマンの秋山信樹に、コロナ禍を経て現在に至る音楽活動や、その時々の想い、これからのビジョン、そして沖縄でのライブについて話をしてもらった。
 インタビューを5回のシリーズでお届けする。第四回は、3rdアルバムの制作を通しての作品作りの変化について。

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 1stアルバム「Say Goodbye to Memory Den」は、The Strokesのアルバート・ハモンドJr。のプロデュース。2ndアルバム「Songs of Innocence & Experience」は、ロリー・アットウェルのプロデュースによるものだった。常に英語の歌詞で、洋楽寄りの制作を続けているDYGL。その作品作りはどのように進んでいくのだろう。3rdアルバムでは、その制作スタイルにも変化が見られたようだ。

 

「曲作りは、アルバムごとに少しずつ変わってきてはいるんですけど、今のところ、僕が曲を書くことが一番多いです。デモを作ったら、メンバーと共有して、僕が書き切っていない部分のフレーズを足してもらったり、僕が書いたフレーズをもう少し曲にはまるように、もっとメロが良くなるようにアレンジしてもらったり。骨組みを僕が作って、メンバーが手を加えていくということが、多かったですね。

 今回のアルバムについては、曲の原型自体を他のメンバーが持ってきて、僕がそれを広げるということも増えました。メンバーと共作した曲が、それぞれあって。作品の振れ幅は前作よりも広くなった気はしますね。

 今回は、それぞれが送ってくれたデモに、僕が歌を入れながら、アレンジして返すっていう作業をやりました。3人それぞれ違う方向ですごくいい曲を書いてきてくれたので、これは使いたいっていうものを拾って、また投げ返してという作業をしながらだんだん形を作っていきました」

 

 ザ・ビートルズ、UKのポストパンク・リバイバル、etc。さまざまな形で抱えてきたバンドに対するロマン。それまでのこだわりの手綱を緩めて手放すことで、見えてきた新たなDYGLのサウンドの第一歩。

 

「ギター、ギター、ドラム、ベース。ビートルズじゃないけど、”バンドはこうじゃなきゃ”みたいな、自分としてのバンドのロマンみたいなものがすごくあったんです。UKのポストパンク・リバイバルにすごく影響を受けていたので、そのサウンドをどうしてもこのバンドでやりたいと最初は思っていました。自分がバンドをやるなら絶対それだと。10代の頃のほうが頑固だったと思うんですけど。

 でも、少しずつ時間が経つうちに、音楽というのは色んな要素が混ざり合っていて、それが更に自分の中で混ざることで自分のサウンドになるんだなと。経験を重ねることで、こういうジャンルをやりたいと思い込み過ぎていたものをちょっと緩めて、手放すようになりました。拘りには必要なものも当然ありますが、自分にとっては必要のないこだわりを手放すことで、逆に作りたいものに近づけるというか。

 今回の3rdアルバムで、より自由に、今本当に自分たちがいいと思っているサウンドに近づけたかなと。まだ完璧ではないと思うんですけど、その一歩目になったと思います。4枚目、5枚目、ここから先が答え合わせになっていくのかなと。すごく楽しみですね」

 

  秋山は、ライブよりも楽曲制作を重視してきたという。では作品作りを行う上で、それをライブで再現することをどれくらい意識するものなのだろう。

 

「僕は、録音作品を聴くという行為が好きだったので、音楽を始めた頃からどちらかと言えば制作を自分の中で大事にしてきた面があるんです。でも、ライブをしたときの気持ちというのは、やはり特別なんだなと、最近改めて自分の感じ方に気づきました。

 なので基本的には制作段階ではそれほどライブの事を考えない曲もあるので、アルバムが出来上がってから改めてライブ用のアレンジを、ちょっと違う作業としてやったという気はしますね。今はサンプラーやルーパーも導入して、より音源に近い形で実際の人数よりも多い音を鳴らすこともできるので。でも、色んな制約は減らしてきましたが、クリックを聞いて同期はしたくないって思いは強いんです。ミスがあろうが、その場の生感は生きていて欲しい。そういう意味では、ライブに対する拘りも、自分たちの中でしっかりある気はしますね」

 

 DYGLの歌詞は基本英語で書かれている。Sunset Roller Coaster(台湾)やPhum Viphurit(タイ)、 ADOY(韓国)など、ここ数年アジアから世界的な成功を納めたバンドの多くも、自国語ではなく、英語詞の作品を発表している。音楽を通した世界戦に挑む時に、英語詞が必須というわけではないが、大きなアドバンテージになることは間違いない。
 DYGLの英詞の作法とはどういうものなのか、また今後の日本語詞作品の発表の可能性は?

 

「歌詞について、パターンとして最初から英語で考えるものと、日本語のアイディアを英語詩にするものどちらもあります。曲を作っているときに仮歌を歌いながら作ると、その時点で音も、意味もはまる言葉や単語が出てくることもあるので、それはそのまま残します。でも、曲ができてくると、今度は自分が書いた曲から新たなイメージが与えられたりするので、自分でデモを聴き直して思い浮かんだ景色や感情、ストーリーを書き出して。それをまた最後、歌詞に落とし込むとき、最初は日本語で考えることもあるし。どちらもありますね。

 日本語歌詞で曲を書くことについては、個人的には結構やりたくて。音楽用ではないんですけど、日本語の詩自体は読み物として、何年か前からよく書いています。それも含めて、日本語を曲に落とし込むというのは、本当はずっとやりたいことの一つです。

 10代のとき、DYGLの前から英語詞のバンドをやっていて、聴く音楽も英語のバンドばっかり聴いていたので、むしろそっちのほうが自然で。逆に日本語でカッコいい歌詞というのを当時はあまり想像できなくて。そとはいえ、いつか絶対、日本語に興味を持つだろうとも当時から思っていました。

 高校生の頃の自分の計画では、20代中盤ぐらいまでに英語のバンドでしっかり形を作って、20代後半には、日本語のプロジェクトもやってたいと思ってはいたんですけど、まだやれてませんね。(笑)何とかやりたいです。日本語が好きではないとか、そういうことでは全くないので。中国語やスペイン語を勉強して歌ってみたい気持ちもあります。やってみたいことばかりですね」

(続く)

秋山信樹(DYGL)インタビュー
Vol.1 "パンデミック前夜に感じていたバンドへの想い。コロナ禍でのそれぞれの変化"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51792

Vol.2 "アーティストとしての意識を持って示す態度。 
社会の一員として、最良の選択をするという意識"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51796

Vol.3 "2ndアルバムの教訓を糧に、バンドとしての変化を前向きに受け入れて辿り着いた、 
新たな音楽の高み"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51810

Vol.4 "メンバー全員参加の曲作りで、作品の振れ幅はさらに大きく。 
より自分たちが納得できるサウンドに"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51815

Vol.5 "大きな手応えを得た全国ツアー。その締めくくりは、クリスマスのコザで" 
https://musiclaneokinawa.com/archives/51823

取材・文:野田隆司 / Ryuji Noda(Music Lane Okinawa)


<イベント・インフォメーション>

▶︎Live At Home from Koza City
DYGL
A DAZE IN A HAZE TOUR
ゲスト:naz. / TOSH
2021/12/25(土)ミュージックタウン音市場(沖縄市)
*ライブ配信あり

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「Music Lane Open Lecture Vol.5」
“アーティストが、国境を越えるべき理由”
講師:秋山信樹 / Nobuki Akiyama
アーティスト / DYGL(デイグロー)ヴォーカル・ギター
2021/12/22(水)Live house Output(那覇市)

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