今年7月に3rdアルバム「A Daze In A Haze」をリリースし、10月から11月にかけて、全19本の全国ツアーを完走した、ギターロックバンドDYGL(デイグロー)。12月25日に、ツアーのAfter Partyと題して、ミュージックタウン音市場(沖縄市)で、沖縄のアーティスト、naz.とTOSHをゲストにライブを行う。
沖縄にルーツを持つという、フロントマンの秋山信樹に、コロナ禍を経て現在に至る音楽活動や、その時々の想い、これからのビジョン、そして沖縄でのライブについて話をしてもらった。
インタビューを5回のシリーズでお届けする。第三回は、2ndアルバムの困難さを克服して辿り着いた、3rdアルバム「A Daze In A Haze」の制作について。
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2019年7月、2ndアルバム「Songs of Innocence & Experience」がリリースされた。プロデューサーは、前年のシングル「Bad Kicks」以来のパートナー、ロリー・アットウェル。その後、日本国内、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界を股にかけたツアーが続いた。しかし、このインタビュー・シリーズの第一回でも触れたように、バンドは疲弊してバラバラな状況だったという。
「2ndアルバムの制作を乗り越えるのは、本当に大変だった。バンドの状況は行き詰まっていて、混乱していました。
その後、コロナになって海外に行けなかったり、ライブがなかなかできないというある種の制約が生まれたことで、もう曲を作る以外にないと思えたというか。世の中のスピードが遅くなって、選択肢が狭められたことで、肩に力が入り過ぎないような状態でとにかく音を作ってみようっていうポジティブな気持ちになれました。
いろんな経験を経た上で、2ndアルバムのツアーから少し時間が空いたので、前よりも少し冷静に、フラットにDYGLを見ることができたのもあるかもしれません」
3rdアルバムの制作準備が始まったのは、2020年の夏。最初に行われたのは、直接顔を合わせてのミーティング。そこで出た前向きな答えが、ニューアルバムの誕生に向けた動きを加速させることになった。
「僕が7月まで沖縄にいた後に、チーム内でいろいろと変遷があって、事務所と自分たちの環境も見直さないといけない状況になったりしました。コロナの状況が大変なのは変わらないけど、自分たちがただ待っていても状況は変わらないから、自分たちは今できることを考えようということで、一度、全員で集まったんです。
そこで、今までの振り返りをしました。2ndアルバムが、どうしてあんなに大変だったのか、ここから何ができて、どんなことが試せるのか。音楽的な面でも、人間関係的な面でも、もう少し見直せるところがあるんじゃないかっていう話をしました。
それを形にするために、何ができるかというと、もうアルバムを作ることしかなかった。それは、やっぱり自分たちは音楽家として、音楽でしか前進できない。アルバムを作ることで、自分たちが何を考えているのか、一番理解できるだろうと。
なので、7月、8月頃から年末にかけて徐々に、曲を書いたり、構想を考え始めたりして、それを今年、2021年が明けてから録り始めました」
3rdアルバム制作に向けてのテーマは2つ。そこには、バンドとしての変化を恐れず、むしろ変化を前向きなこととして受け入れていくという、ポジティブなムードがあった。音楽に関しての濃密なやりとりが、現場のムードを高めて、大きな手応えへと繋がっていく。
「アルバムを作る上で、音楽的な縛りは決めませんでした。でも、テーマとしては、二つありました。
今まで自分たちのDYGLというイメージに対して縛られていたような面もあったので、逆に開放的に、できるだけ自由に思い付いたことをやる。これまでのDYGLのイメージと合わなくてもまずはやってみるというのが一つ。
もう一つは、コロナ以前からですが、どんどん閉塞的な、シリアスなムードになってきたので、逆に青空と芝生を感じるような、そういうポジティブさみたいなものをあえて表現してみようと。2ndアルバムは、ちょっと内省的な調子だったので。青空と芝生っていうキーワードはよく話していました。
90〜2000年代のMVに、よく出てくるアレです(笑)自分たちが10代のときに聴いてたblink 182や、Green Day、Weezerとか。そういうアーティストのサウンドについて、もう一度考え直そうという話をしたりして。あと、Fountains Of Wayneというバンドは、かなり大きなきっかけになりました。これまで僕らがあんまりDYGLとしてやってこなかったようなサウンドに魅力を再発見して。彼らを聴いたきっかけは大きかったですね。1周回って、こういう音もありだなと。
出来上がりの手応えはかなりありましたね。今まで頑なだった自分たち自身からちょっと開放された気持ちもあったし。みんな結構、すがすがしい気持ちで、作り切ったんじゃないかな。ポジティブな気持ちになれるアルバムだったので、手応えはありました。
でも今、一通りアルバムを作り切って、ツアー終えて見直すと、もう既に次はもっとやれそうだなって気持ちもある。本当に新しいチャプターの、新しい章の第一歩かなっていう。全然まだ納得し切ってはないけど、すごくいいきっかけになったアルバムであるのは間違いないですね」
(続く)
秋山信樹(DYGL)インタビュー Vol.1 "パンデミック前夜に感じていたバンドへの想い。コロナ禍でのそれぞれの変化" https://musiclaneokinawa.com/archives/51792 Vol.2 "アーティストとしての意識を持って示す態度。 社会の一員として、最良の選択をするという意識" https://musiclaneokinawa.com/archives/51796 Vol.3 "2ndアルバムの教訓を糧に、バンドとしての変化を前向きに受け入れて辿り着いた、 新たな音楽の高み" https://musiclaneokinawa.com/archives/51810 Vol.4 "メンバー全員参加の曲作りで、作品の振れ幅はさらに大きく。 より自分たちが納得できるサウンドに" https://musiclaneokinawa.com/archives/51815 Vol.5 "大きな手応えを得た全国ツアー。その締めくくりは、クリスマスのコザで" https://musiclaneokinawa.com/archives/51823
取材・文:野田隆司 / Ryuji Noda(Music Lane Okinawa)
<イベント・インフォメーション>
▶︎Live At Home from Koza City
DYGL
A DAZE IN A HAZE TOUR
ゲスト:naz. / TOSH
2021/12/25(土)ミュージックタウン音市場(沖縄市)
*ライブ配信あり
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「Music Lane Open Lecture Vol.5」
“アーティストが、国境を越えるべき理由”
講師:秋山信樹 / Nobuki Akiyama
アーティスト / DYGL(デイグロー)ヴォーカル・ギター
2021/12/22(水)Live house Output(那覇市)