【Interview】秋山信樹(DYGL)Vol.1 ”パンデミック前夜に感じていたバンドへの想い。コロナ禍でのそれぞれの変化”

Photo : ERINA UEMURA

今年7月に3rdアルバム「A Daze In A Haze」をリリースし、10月から11月にかけて、全19本の全国ツアーを完走した、ギターロックバンドDYGL(デイグロー)。12月25日に、ツアーのAfter Partyと題して、ミュージックタウン音市場(沖縄市)で、沖縄のアーティスト、naz.とTOSHをゲストにライブを行う。
沖縄にルーツを持つという、フロントマンの秋山信樹に、コロナ禍を経て現在に至る音楽活動や、その時々の想い、これからのビジョン、そして沖縄でのライブについて話をしてもらった。
インタビューを5回のシリーズでお届けする。第一回は、パンデミックの直前の状況から、コロナ禍で過ごした沖縄での時間について。

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那覇のLive House Outputの上江洲修さんに、秋山信樹さんを紹介してもらったのは、2019年の夏ごろのことだ。3人で平和通りの韓国料理屋で昼食をとりながら色々な話をした。彼らが国内にとどまらず、海外でも積極的に活動をしていること、また秋山さんのルーツが沖縄にあることを知って、気持ちの上では少し近づけたように思えた。

同じ年の11月、バンコクの友人が主催する音楽カンファレンス「Bangkok Music City」に参加したとき、2ndアルバムをフィーチャーしたワールドツアーの真っ最中のDYGLは、同じタイミングでバンコク公演がスケジュールされていた。なんとか時間をやりくりして会場に足を運ぼうと思ったものの、それは叶わなかった。
この2019年のツアーは、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと、実に海外50カ所以上を回るという画期的なものだった。北京やニューヨークでのショーはソールドアウトになるという、ある意味本気の世界戦だ。

今回のインタビューは、日本にとどまらない活動をする中で、コロナ禍が訪れる前に、その先にどういうビジョンを描いていたのかということから聞いてみた。

 

「2ndアルバムのツアーが落ち着いたら、個人的にはロンドンに戻りたいと思っていました。創作活動のインプットという意味でもやはりとても刺激的な街でしたし、バンド自体もコミュニケーションの問題とか、バンドがこの先どういうビジョンでやっていくかというのが、結構バラバラで行き詰まっている感じがあったので、それぞれがより独立したミュージシャンとして成長するためにも、一回、距離を置いたほうがいいと思ったんです」

 

DYGLは2018年〜2019年にかけてロンドンを拠点にして制作を行なっていた。2ndアルバム「Songs of Innocence & Experience」は、ローリー・アトウェルをプロデューサーに制作された。秋山がロンドンに戻ることを考えていた背景にあったのは、メンバーそれぞれが自立的に活動できるようにするということ。結果的にコロナ禍は、自然とそうした流れを作り出すことになった。

 「それこそロンドン時代はシェアハウスに暮らしていて、生活も、活動も、全部が一緒だったんです。大学も一緒で、趣味も近くて。共有するものが多いというのはある種の強さにもなり得ますが、一旦風通しが悪くなると脆さにもなってしまう。

 何となく4人で一緒にいるよりも、一人ひとりが独立したミュージシャンとして、より強い当事者意識を持ってDYGLをやっていくようにしたかったんです。当然、自分も含めて。

 僕らの中でもよく話題に上がっていたのですが、”幾何学模様”というバンドの活動がとても自由で魅力的で。それぞれの場所にいながら、決めた期間に集まってツアーをしたり、制作したりするということを僕らも試してみようと話しました。だから、ベーシックな生活はみんなそれぞれの場所や環境で過ごしながら、決めた期間に集中してDYGLとして活動してみようという方向になったんです。

 そもそもそうやって今までの流れを変えようとしていたので、コロナ禍になったときに、すぐに対応できたのかもしれません。2月のライブ後僕は沖縄に残り、リードギターの下中(洋介)も丁度コロナ前から京都に生活を移していて、一旦そのまま活動を続けられた。海外行けなくなったのは残念でしたけど、活動の流れ的には自然に対応できたと思います。

 当然考えないといけないことはいっぱいあったので、それほど安心して1年間を過ごせたとは思えませんけど。でも、逆に開き直って新しい考え方を試せたという意味では、良いきっかけでもあったかもしれません」

 

2020年、世界中が新型コロナウィルスに震撼した。日本のエンタメ業界も、ほぼすべての動きが止まってしまう。世界が一時停止を余儀なくされていた期間、秋山が沖縄に滞在して続けていたのは、自分自身のインプット作業だった。

 

 「コロナが本格的にやってくる直前の2月の末から7月の頭ぐらいまで、4カ月強、沖縄にいました。最初のひと月ぐらいは、沖縄の状況はまだ落ち着いていたので、積極的に、色んな人と会ってみたり。

 コザの”NEO POGOTOWN”の人たちや知り合いの音楽やってる子達にすごく助けてもらって、彼らと行動をともにすることで、いろんな人を紹介してもらいました。そのあと、確か4月ごろから、沖縄でもかなりコロナの影響を感じ始めたので、家からほぼ出ることなく、外出してもコンビニだけみたいな生活が続いて。

 この間の制作に関していうと、色々勉強はできたと思うんですけど、正直、アウトプットにはそれほどつながらなかったですね。例えば、トラックメイクの勉強で、YouTubeの動画をいろいろ見たりとか。少しは勉強にはなったけど、作り手としてのモチベーションはどうしても保てなくて。勉強のモチベーションはなぜかすごく高かったので、それは楽しかったですけどね」

 

“日本的“ロックダウン期間、DYGLのメンバーは、それぞれのサイド・プロジェクトをスタートさせた。新たなユニットや、サポートなど、個々の活動の枠を広げることで、副産物がもたらされることになった。

 

 「それぞれコロナ時期から始めたわけでは無いのですが、コロナ禍においてDYGLとは別の活動にも取り組むメンバーもいました。

 僕は、”Deadbeat Painters (デッドビート・ペインターズ)”というバンドをコロナ前夜に始めていて。 “TAWINGS”という同世代の女性3人組のバンドのボーカルの子がCony Plankton (コニー・プランクトン)というのですが、コニーとなら音楽的な面でDYGLとは違うことを試せそうだなと思って。曲を作ってフロントをやる人と一緒に音楽作ることは僕にとってはとても新鮮でした。

 ドラムの嘉本(康平)は、”jiga”という別プロジェクトにも取り組んでいました。メインは”yahyel”というバンドのボーカルと嘉本の2人で活動していて。彼の場合は、”never young beach”の安部君ソロのサポートギターをやったり、SugarhouseやLightersと言ったバンドのプロデュースに関わっていたタイミングもありました。リードギターの下中(洋介)は、京都のアーティスト”NTsKi”のサポートをやったりしています。

 これまでは、絶対に自分のバンドで演奏したいと思っていたサウンドが、DYGLで合わなかった時に、何か救われない気持ちというか、すごくフラストレーションを感じていました。でもDYGLで合わないものは無理に持ち込むより、他でやってみたらどうかなと。他の表現場所を見つけたことで、個人的にはDYGLに対して心の余裕が生まれたというか。この4人だからこそ作れる、作りたいサウンドって何かなと考えるきっかけになりました。

 DYGLに対してこうじゃないといけないという風にあった固定観念が、少しフリーになったというか。色々話し合ったからそうなれたのもあるし、時間を置いて考えたから自然とリラックスして考えられるようになったのかもしれませんね」

(続く)

取材・文:野田隆司 / Ryuji Noda(Music Lane Okinawa)

秋山信樹(DYGL)インタビュー
Vol.1 "パンデミック前夜に感じていたバンドへの想い。コロナ禍でのそれぞれの変化"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51792

Vol.2 “アーティストとしての意識を持って示す態度。 
社会の一員として、最良の選択をするという意識”
https://musiclaneokinawa.com/archives/51796

Vol.3 “2ndアルバムの教訓を糧に、バンドとしての変化を前向きに受け入れて辿り着いた、
新たな音楽の高み”
https://musiclaneokinawa.com/archives/51810

Vol.4  "メンバー全員参加の曲作りで、作品の振れ幅はさらに大きく。
より自分たちが納得できるサウンドに"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51815

Vol.5  "大きな手応えを得た全国ツアー。その締めくくりは、クリスマスのコザで"
https://musiclaneokinawa.com/archives/51823

<イベント・インフォメーション>

▶︎Live At Home from Koza City
DYGL
A DAZE IN A HAZE TOUR
ゲスト:naz. / TOSH
2021/12/25(土)ミュージックタウン音市場(沖縄市)
*ライブ配信あり

DYGL “A DAZE IN A HAZE TOUR” ゲスト:naz. / TOSH ”▶︎Live At Home from Koza City”

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